「教育は、自分が知らないことさえ知らなかった知識を学ぶことだ。」
アメリカの学者ダニエル・ブーアスティンが残した言葉です。 これは、海と地球全体における環境問題にも、当てはまることです。

環境における問題は、必ずしも明白ではありません。 確かにプラスチックごみは、今私たちが抱えるメジャーな課題のひとつでしょう。 しかし、それの事実を、どのようにコミュニティに伝えるべきでしょうか。 いまだ多くの人が、プラスチック汚染がもたらす悪影響を目にしたことがありません。

ゴミだらけのビーチを見たことはあるかもしれませんが、それがローカル規模の問題ではなく、グローバル規模の問題だと認識させるにはどうしたらよいでしょうか。

データドリブンの気温と気候グラフから分かるように、地球の平均気温は上昇を続けています。 その速度は空前のものであり、測定開始以来、気温上昇は止まるところを知りません。 しかしそれが緊急且つ現実的な問題であることを、コミュニティに認識させるためには、どうしたらよいでしょうか。 同様に、私たちはリサイクルの利点や、路上のガソリン投棄が害に繋がると知っていますが、どうやって知ったのでしょうか。

現実的に言うと、全てのグローバル規模の問題と、その解決策を把握するのは難しいことです。 理由は、問題が大きすぎるからです。 私たちが持っている知識を統合・交流することで、人々に今何が起こっているかを見せることができます。 問題を認識し、スケールを知り、そして解決策を見出します。

グローバル規模の課題は、教育が環境保護と回復に必要な社会変化をもたらすことにおいて、「重要」でなく、「不可欠」であることを意味します。 教えてもらわなければ、認識することすらできず、解決に役立てません。

幸運なことに、教育はその効果を発揮しています。 先日のブログで、PADIプロダイバーによる、次世代に海の危機について教え、海洋保護を優先させる意識教育について話しました。 結局のところ、海を救うことは、私たち自身を救うことと同じなのです。 また、研究によると、幼少より環境保護の価値観を育てることは、非常に有効であると分かっています。

2015年、ユネスコが発行した『Global Education Monitoring Report』によると、知識を深め、価値観を共有し、信念を育み、態度を正すことで、教育は個人が環境に有害なライフスタイルや行動に対し再考することに、大きな力を発揮します。 伝統的に環境問題を心配する必要のない文化圏においては、年齢層を問わない教育がとても重要になります。 幸いなことに、私たちは今環境問題を重視すべきであると認識しており、より多くの国が環境教育を必要とし、効果を発揮しています。

その中でも、インドでは就学前から成人までを対象とした環境教育プログラムを実施しています。 2003年より、3億人に及ぶ学生がこのプログラムを受講したと推定されています。 これらのプログラムがもたらした結果はさまざまですが、全般的に良い変化をもたらしています。これらのプログラムは、個人の行動、選択、そして持続可能についての考え方を形成しています。

確かに、思春期以降の価値観を再構築することに疑問を呈した人もいました。 しかし2017年北京の中央民族大学287名の学生を対象に行われた調査によると、環境に関する教育は、対象者の環境に対する考え方に、顕著的なプラス効果が表れたことが分かりました。 その他に、政府の支持と政策の後押しにより、教育の有効性が中国で実証されています。 非営利団体Wild Aidの報告書によると、中国はフカヒレ消費最大国家でしたが、2011年よりその量は8割の激減を示しています(フカヒレスープの需要から7300万頭のサメが殺害されています)。

報告書によると、中国におけるフカヒレの需要の減少は、意識向上施策(教育)がもたらした結果であり、政府は公式行事においてフカヒレの消費を禁止し、その制止を促しています。

また、元プロバスケットボール選手であるヤオ・ミンは、祖国の中国で幅広い教育啓発活動を通して人々の意識強化を図り、高い効果を得ています。 中国に住む多くの人々は、フカヒレの実態を知りませんでした。 しかし調査結果によると、現在9割以上の人が、フカヒレの禁止を支持しています。

これはサメにとって朗報ですが、Wild Aidの報告によると、他の国々のフカヒレ消費量は依然として高く、増加の傾向を見せています。 理由に関しては、半数の消費者または潜在的消費者が、フカヒレ(サメ)の消費が動物たちの命と健康を危機に晒していることを知らないからです。解決策の答えは「教育」です。 フカヒレ高消費量の国々で、中国と同様の活動を実行することは、良いスタートになるかもしれません。

ここで今一度強調したいことがあります。 確かに、全ての人がスクーバ・インストラクター、大学教授、教師であるわけではありません。 しかし私たちは皆、教育者です。 友人との食事、SNSにおける誤情報の指摘など、今ある問題を人々に提議し、持続可能な世界のためにより良い選択をすることが、海の代弁者である私たちの責務です。

決してあなたの行動の影響力を過小評価しないでください。 ダイバーであるあなたは、水中世界の素晴らしさと脆さ、そして今面している危機を目の当りにしています。 あなたが発する言葉には説得力があります。 あなたがするべきことは、持続可能な世界の必要性を、次世代の教育者に伝えることです。

南アフリカ共和国元大統領でノーベル平和賞受賞者であるネルソン・マンデラは、次のように述べています。
「教育は世界を変える最も強力な武器です。」

Dr. Drew Richardson
PADI President & CEO

 

Share This