周知のように、地球、特に海は今、危機にさらされています。 気候変化、サンゴの白化、過度の漁獲、プラスチック問題―すでに多くの問題を抱えていますが、日々の研究によってより多くの問題が浮き彫りになっています。 悪いニュースが続いているように思えますが、私たちはそれらと建設的な態度で向き合うべきです。人々が望まない未来を事前に予測し、それを阻止すべきです。

そのため、海洋と環境問題に携わる研究者は、今ある問題を研究すると同時に、これから起こりうる問題を予測しようとしています。 例えば、2018年8月、トロント大学とカルフォルニア大学の海洋科学者Wortman, Paytan と Yaoは、二酸化炭素の上昇は地球温暖化を招くだけでなく、海の酸素を減少させ、より深い深度の海を有毒に至らしめると発表しています。 結果、食物連鎖に影響が及び、漁業に支障をきたすでしょう。 これは悪いニュースですが、前述の海洋科学者のおかげで、それが現実になる前に予期し、対策を打つことができます。

研究者たちが世界をより良くする2つ目の理由は、問題を予測するだけでなく、解決策を見つけ、それを世界と共有することにあります。以前の投稿記事で、Vaughan博士のサンゴ修復研究について言及しました。 博士の研究は、世界規模の大きな課題に取り組んでおり、ダイバーにとって非常に重要な課題でもあります。 キューバのグアナハカビベ海洋公園では、生物学者のDorka Cobián Rojas博士が、サンゴの減少とミノカサゴによる被害の原因究明と解決策を見出すため、世界の科学者と「市民科学者」であるダイバーたちとチームを組んでいます。 また、Osmani Borrego博士も同様にプラスチック汚染問題の研究に取り組んでいます。これらが極めて重要な研究成果である理由は、グアナハカビベのサンゴが実質とても健康であるからです。 これらのサンゴ礁は、世界のサンゴと漁業の保護、保全と修復のために不可欠な問題・解決策の究明に必要とされる生物学的資源のオアシスとなっています。

同時に、「市民科学者」の活動を見落としてはなりません。これらの活動は至極重要であるからです。 科学者であるRojásとBorregoは、すべてのデータ収集と検証を行なう時間とリソースがありません。 しかし、世界規模の大問題を解決に導くには、世界規模の参加が必要です。 海の問題においては、ダイバーである私たちの参加が不可欠です。 「あなたのダイブを無駄にしないでください」とProject AWAREは提唱しています。 すべてのダイビングを、研究に活かすことができます。 例えば、海洋ゴミ回収 (Dive Against Debris) は、水中のゴミを拾うだけの活動ではなく、それが問題の解決策を探る一歩となります。

もうひとつお話したい取り組みは、Graham Edgar博士が考案したリーフ・ライフ・サーベイです。 海洋生物を調査するボランティア・ダイバーは、予め研修を受けます。 すでに200人以上のダイバーが、44か国の2,000を超えるダイブサイトにおいて調査を行なっています。 これは現存する世界最大の生物学データベースのひとつとなっています。 これらのデータを用いて、研究者は海が暖かくなるにつれて、魚や無脊椎動物の分布が変化すると予想しています。 これは「市民科学者」のダイバーなくしては、得られなかった研究成果です。 India.mongbay.comによると、インドでは科学者が、漁師とボランティアが「市民科学者」としてさまざまなイニシアチブに参加できるよう、ダイビングを教えています。 そしてそれにはもうひとつの利点があります―世論の支持です。 「一般の人々が参加すれば、コミュニティ全体が研究をサポートしてくれます」―これは報告書で引用された、ケラーラ大学海洋生物学部学部長のA. Biju Kumaの言葉です。 インターネットで検索すると分かるように、環境問題の解決策を見つけるために、多くの科学者たちがダイバーと手を取り合っています。

私たちにできることはたくさんあります。 毎回のダイビングを有意義なものにしましょう。 海洋ゴミ回収(Dive Against Debris)、または他の「市民科学者」の活動にご参加ください。 写真撮影、水中探検、ダイビングで他のいかなることをしているときも「研究者」になれます。 健全なグローバル環境の再構築、活性化、改造を学んで「修復家」になりましょう。 そしてダイビングを通してダイバーの取り組みを世に広め、次世代へ継承する「指導者」になりましょう。

現状がどうであれ、未来の到来は回避できません。 2,500万人のPADIプロフェッショナルとダイバーが先頭に立ち、活気に溢れた健全的な世界環境の未来へと舵を取っています。 未来予測というと、作家兼教育家のPeter Druckerの言葉を思い出します:

未来を予想するベストの方法は、
未来を創ることです。

Dr. Drew Richardson
PADI President & CEO

drew blog

Share This