多くのダイバーにとって、夢の地であるアイスランドの「シルフラ」。まさに「クリスタル・クリア」という表現がぴったりな、世界最高峰の透明度を誇る水域です。その類を見ない透明度とユニークな景観から、PADI再発行限定カードのデザインにも選ばれています。今回はそんなシルフラでの撮影エピソードを紹介します。

撮影者Alex Mustardについて

イギリス出身のAlex Mustard博士は、数々の賞を受賞している水中写真家であると同時に、海洋生物学者、そして作家としてマルチに活躍しています。彼がプロの水中写真家として活動を開始したのは2004年ですが、初めて水中写真を撮ったのはわずか9歳のとき。

Alex「私はかつて海洋生物学者Mustard博士として生活していました。しかし水中撮影に魅了され、20代後半のときにプロの水中写真家になることを決意しました。生計を立てるのは決して容易ではありませんでしたが、毎日が楽しくてなりませんでした。この仕事に就いてから“生涯に一度しかできない経験”が毎週のように訪れています。」

 Driving to Silfra

「シルフラ」という場所

世界中の水中写真家がこぞって訪れる「シルフラ」とは、一体どのような場所なのでしょうか?

世界遺産「シンクヴェトリル国立公園」の中にあるシルフラは、北米プレートとユーラシアプレートの狭間にある「地球の割れ目」。両プレートが互いの方向から引っ張りあって生まれた亀裂です。その割れ目には氷河の雪解け水が流れ込み、天然の湖となっています。ミネラルが豊富でとてもきれいな水なので、潜りながら水を飲むことも可能。年間を通して水温が2~3度に安定しているため、水中生物の活発活動を許さず、水中は常にクリアです。透明度100mを超えるともいわれる水中世界でのダイビングは圧巻です。

Alex「シルフラの透明度は計り知れません。あまりにも澄み切っているので、途中でキャニオンが現れても、その距離が推測できません。しかしそれこそ、まさに私が捉えたいシルフラです。 素晴らしい透明度の中、ふたつの大陸プレートの狭間を潜る瞬間です。」

寒い天候の中、雪道を辿ったシルフラへの道のりは、決して簡単ではありませんでした。

Alex「夏になると緑色の糸状藻類が現れるので、水が一番きれいなうちにシルフラを写真に収めたいと思いました。となると、藻類が繁殖し始める前の春に行かなければなりません。春のアイスランドはまだ寒く、ダイブサイトまでの道では雪が降っていました。」

A diver in Silfra Canyon. Iceland
ダイバーがシルフラ・キャニオンを探索する写真。シルフラ・キャニオンは、アイスランドのシンクヴェトリル国立公園で北米プレートとユーラシアプレートの狭間にある澄み切った淡水で満たされた深い断層。この写真の左側に位置するのが北米プレート、右側がユーラシアプレートとなります。

「シルフラ」の撮影エピソード

Alexによると、成功の鍵は「事前計画」だったそうです。

Alex「シルフラの水は透明度が非常に高いですが、とても暗い場所でもあります。そのため、写真撮影は技術的に難しいものでした。」

しかし最新の低照度撮影技術を使用することで、自然光を使って撮影することに成功しました。

Alex「このシーンは大きすぎて、ストロボではうまく光を当てられません。そのため、自然光に頼らざる得ませんでした。太陽光がキャニオンの両側を照らすタイミングを狙うというものです。それがちょうど昼食の時間帯だったので、他のダイバーはランチをとっていて、幸運なことにシルフラを独占することができました。」

Walking To Silfra, Iceland
2人のダイバーがシルフラ・キャニオンの入り口に向かっている写真。

撮影中に訪れた試練

水温が低いと透明度が上昇するメリットがありますが、問題を招くこともあります。

Alexによると、水中撮影には時間がかかるため、長時間のダイビングを覚悟する必要があります。

Alex「シルフラでの平均潜水時間は90分でした。水温は零度より少し高いくらいなので、そのような低水温の環境の中、長時間のダイビングをするには優れた断熱材が必要になります。」

コールドウォーターダイビングがもたらす問題のひとつは「指」にあります。

Alex「指の防寒が大変でした。厚手のグローブを着用するとカメラの操作が難しくなります。しかし薄いグローブでは寒さで手がマヒし、感覚を失ってしまいます。」

Diving Between Continental Plates. Iceland
ダイバーがシルフラ・キャニオンを探索する写真。こちらの写真では左側に位置するのが北米プレート、右側がユーラシアプレートとなります。

Alexから水中フォトグラファー・ダイバーへのアドバイス

Alex「水中でカメラを持つ前に、まずはダイビングのスキルアップを目指しましょう。それが水中撮影上達の近道です。上手く潜れるダイバーは、経験が浅いダイバーより、遥かに速く、優れた水中フォトグラファーへと成長するでしょう。

カメラは注意散漫の大きな原因になりかねません。まだ準備が不十分なうちにカメラを持って潜ると、自分だけでなく他のダイバー、そして海の生き物を危険にさらす可能性があります。

そして最も重要なのは、好きなものを被写体にすること。あなたが思うダイビングの魅力を写真に収めてください。情熱を持ってシャッターを押したワンショットは、きっと素晴らしい作品になります。」

 

「シルフラ」の撮影秘話、いかがでしたか?

Alexが捉えたシルフラの写真は、再発行カードで入手することが可能です。申請はこちらから。

また、シルフラの他にも下記のデザインカードが選択可能です。各デザインカードの詳細はこちらをご覧ください。

2018RC

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