フィジーのグレート・シー・リーフ(GSR)は、オーストラリアのグレート・バリア・リーフ、中央アメリカのメソアメリカン・リーフに次ぐ世界第3位のバリア・リーフとして知られています。現地語で北の守り神や大きな珊瑚礁を意味する「バイニヴアリク(Bainivualiku)」または「カカウレヴ(Cakaulevu)」とも呼ばれ、GSRは、ビチレブ島の西海岸(ヤサワ諸島の先端)からバヌアレブ島の北東部(ウドゥ・ポイント)まで、全長450km(280マイル)以上にわたって広がっています。あまり知られていませんが、このサンゴ礁はフィジーの生態系の重要な一部であり、現在は、保護と保全が求められています。
グレート・シー・リーフの生物多様性の豊かさ
GSRには多様な海洋生物が生息しており、全サンゴ種の74%、全サンゴ礁に生息する魚類の55%(実際には80%に達すると予測されている)、全海洋植物の40%、フィジー固有種のサンゴ礁魚類の44%を支えていると推定されています。このサンゴ礁には、マングローブの生態系や海草藻場も広がっています。さらに、グレート・シー・リーフには、ナポレオンフィッシュ、マンタ、ハタ類、サメ類など、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストに掲載されている12の絶滅危惧種が生息しています。このサンゴ礁の調査はまだ十分に行われていないため、上記の数字は生息種の概算に過ぎず、多くの科学者は、このサンゴ礁にはさらに多くの生物多様性が生息しているのではないかと考えています。
グレート・シー・リーフの文化的重要性
何世紀もの間、サンゴ礁はフィジーの文化に欠かせないものであり、サンゴ礁を囲む沿岸地域のアイデンティティとなってきたと言っても過言ではありません。サンゴ礁は、漁業と観光業を発展させる一方で、人々の生計、食料、安全を提供しています。サンゴ礁は、主要な収入源としてフィジーの人口の少なくとも10分の1を支えています。実際、この生態系は過去10年間で、フィジー経済に4,750万フィジー・ドル(2,150万米ドル)をもたらしたと推定されています。
GSRと深い関わりを持つフィジーの沿岸コミュニティは、伝統的な漁業技術、ボートの航行、天候パターンの理解、潮汐や波の動きなど、生活に不可欠なスキルをサンゴ礁から学んできました。一方、地元の船乗りは、GSRの範囲内にとどまることで、悪天候や高波などの潜在的な危険から安全を確保できるということを深く理解しているのです。
グレート・シー・リーフは、危機に瀕している
グレート・シー・リーフの海は、地球温暖化には強いものの、製造業による汚染、持続不可能な農業、都市の拡大、未処理の廃水、乱獲などの脅威にさらされています。人為的な気候変動の結果、グレート・シー・リーフでは最近、強烈なサイクロンや白化現象が頻発しています。これらの脅威や現象は、サンゴ礁のデリケートな生態系にダメージを与え、特に海洋生物の数や大きさの減少につながっています。
GSRを保護するための取り組み
非政府組織(NGO)の中には、保護活動を通して GSR をサポートしているものもいくつかあります。世界自然保護基金(WWF)は、フィジー政府、現地の自治体、企業、その他のステークホルダーと協力し、より健全なサンゴ礁のために、持続可能なコミュニティ・マネジメントの実施に向けた政策強化に取り組んでいます。コミュニティは、漁業者と生物の両方への負担を減らし、漁業以外の持続可能な経済機会を育成するために、別の生計手段を模索することも奨励されています。
一方、PADIリゾートであり、GSRにアクセスできる唯一のダイブセンターであるGreat Sea Reef Divers(グレート・シー・リーフ・ダイバーズ)は、地元のNGOと緊密に協力し、現地プロジェクトでリソースを提供し、援助しています。
Great Sea Reef Diversは、人々の 関心を高め、保護活動に積極的に参加を促すことを目的として活動しています。ソーシャルメディア・プラットフォームや地元の青少年プログラムを活用し、サンゴ礁の意義や直面している脅威について地域社会に啓蒙しており、Duavata Sustainable Tourism Collectiveなどの組織と提携することで、サンゴ礁の相互関連生態系や持続可能な活動に関する青少年向け教育プログラムを開催しています。
このダイブショップの狙いは、将来の世代にGSRへの感謝の気持ちを育み、商業的な成功よりも地域社会への影響を第一に考え、宿泊やダイビング体験を通して地域社会を支援し、環境を保全することの重要性をゲストに伝えることにあります。
フィジーのグレート・シー・リーフは、世界でも最後の手つかずの海域のひとつであり、未だ完全には解明されていないことが数多く残されています。その保護に向けた取り組みの協力体制を見られることは素晴らしいことですが、一方で、フィジー最大の自然資産を保護するためには、さらに多くの人々にフィジーの美しさを知ってもらい、認識を広めてもらう必要があります。生物多様性を保全するために行動を起こすことは、サンゴ礁を守るだけでなく、サンゴ礁に依存している地域社会へのケアにもつながります。私たちの力を合わせれば、サンゴ礁の持続可能な未来に大きな変化をもたらすことができるのです。
取材協力:Great Sea Reef Diversと世界自然保護基金(WWF)