周囲を海に囲まれた日本には、個性豊かなダイビングエリアがいっぱい。訪れるダイバーを感動させる、見どころ満載の海がたくさんあります。第4回は小笠原諸島のダイビングエリアを紹介します。

東京・竹芝桟橋から「おがさわら丸」に乗って約24時間。大小30あまりの島々から成る小笠原諸島は、いまだかつて大陸と陸続きになったことがなく、独自の生態系が残っているため、“東洋のガラパゴス”とも呼ばれるネイチャーアイランズで、2011年6月24日には世界自然遺産に登録されています。そんな小笠原の自然を語るうえで、外せないのがダイナミックな海の魅力。魚影の濃さ、種類の豊富さ、透明度のよさ……。あらゆるダイバーを満足させる極上の水中世界がそこには広がっています。マンタやジンベエザメといった大物が次々に登場するかと思えば、ウメイロモドキやホウセキキントキなど色鮮やかな魚の群れが目の前を覆い、じっくりと目を凝らせばニラミハナダイやミズタマヤッコなどの珍しい生物も数多く見られたりと、まさに「何でもありの海」。イルカやクジラなどの海獣類との出会いも期待でき、ダイバーなら一生に一度は行きたい海となっています。


父島

荒々しい断崖絶壁と白砂のビーチに囲まれた父島。島内は豊かな緑に包まれ、小笠原ならではの生物を豊富に観察することができます。ビーチや展望台などの景勝地も多く、各所で南の島らしい雰囲気を感じられるのも魅力。ダイビングはもちろん、レンタカーやレンタバイクを利用して、美しい景色を楽しむのもおすすめです。ダイビングで潜るのは、父島や兄島、弟島の周囲のダイビングポイントがメイン。大物スポットからマクロスポット、地形スポットまでバリエーション豊富にそろっており、初心者からベテランまで楽しむことができます。周辺の海域ではイルカやクジラがウオッチングできることも。

人気ダイビングポイント:ドブ磯

「タコ岩」と並ぶ、父島周辺の2大大物スポットのひとつ。エントリーすると水底50mから巨大な柱状の根がそそり立っており、切り立った岩礁沿いに泳いでいくと、イソマグロやギンガメアジ、カマス、ウメイロモドキの群れ、ホワイトチップといった人気生物が次々に登場します。ときには水面近くでマンタやイルカが現れることもあり、安全停止中も油断は禁物。流れの強いことも多いため、上級者向けのポイントとなっています。

アクセス

東京港・竹芝客船ターミナルと父島の二見港を結ぶ「おがさわら丸」を利用。往路は竹芝桟橋 11:00発で父島には翌日の11:00着、復路は父島15:00発で竹芝桟橋には翌日の15:00着というスケジュールになっています(2025年4月現在)。そのほか、時期によっては「にっぽん丸」「ぱしふぃっくびぃなす」「飛鳥Ⅱ」などのクルーズ船も寄港しており、船上生活を楽しみながら向かうこともできます。


母島

父島よりもさらにナチュラルな雰囲気を味わえるのが、人口わずか450人ほどの母島。ダイビングサービスは1軒のみで、豊かな自然の中でのんびりとダイビングを楽しむことができます。エリアは5つに区分され、最南端の南エリアのほか、北エリアは砂地、東エリアはサンゴ礁、西エリアは地形や回遊魚、向島・平島エリアはイルカ・クジラが見どころとなっています。アフターダイブはのんびりと過ごすのが定番のスタイルで、おすすめは島の西側にありサンセットスポットとして有名な新夕日ヶ丘。美しい夕日を眺めることができます。また、白砂が広がる蓬莱根のビーチや、貨幣石と呼ばれる化石がある御幸之浜、磯釣りのポイントとして知られる北港など、さまざまな見どころがあります。

人気ダイビングポイント:蓬莱根・沈船

水深20mほどの海底に、全長約50m、幅約8.5mの船「第二西海丸」が沈んでおり、その周囲を潜ります。魚礁と化した沈船はアザハタやヨスジフエダイ、ユウゼンなど、さまざまな生物の恰好の住み家となっており、周辺の砂地ではガーデンイールやヤシャハゼなどのマクロ生物も豊富。初心者から楽しめるポイントとなっており、早朝ダイビングやナイトダイビングでも利用されます。

アクセス

父島~母島間を「ははじま丸」が運航。通常、おがさわら丸が到着した二見港から1時間後に出発しており、所要時間は約2時間。乗船券は当日販売となっており、父島の「ははじま丸船客待合所」で購入することができます(現金のみなので注意)。


ケータ列島

父島からボートで約1時間半~2時間かけてアクセスするケータ列島は、北之島、聟島、針之岩、媒島、嫁島などの島々から成るエリア。コンディション次第では通年潜ることができますが、海況の安定する5~9月頃がベストシーズン。すべて無人島なので、手つかずのダイナミックな海を楽しめることが人気の理由となっています。迫力たっぷりのマグロの群れが見られたり、ウメイロモドキやクマササハナムロなどのものすごい群れに囲まれたり、大型のシロワニが見られたりと見どころが豊富。豪快な地形が楽しめるポイントもあります。サービスによってはボートで宿泊する「お泊りケータ」で遠方のエリアに足を延ばすところもあります。

人気ダイビングポイント:嫁島・マグロ穴

ケータ列島の中でも南に位置し、父島からアクセスしやすい嫁島の人気ポイント。奥行き50m、幅20mほどの吹き抜けのホールに、多いときには100尾ほどのイソマグロが回遊。ときには2m近い個体が目の前を通り過ぎることもあり迫力たっぷり。水深10mほどなので、じっくりと楽しむことができます。ウメイロモドキ、クマササハナムロの群れが見られたり、水中でイルカに出会うことも。潮の流れが強いこともあるので、中級者~上級者向けのポイントです。

アクセス

無人島のため定期航路はなく、ダイビングサービスによるツアーに参加してアクセス。嫁島は二見港からボートで約1時間30分、媒島や聟島は約2時間。最も北に位置する北之島やその先に位置する一ノ岩~五ノ岩は2時間半~4時間ほどかかるため、ボートで泊りで行くことも。


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