みなさん、こんにちは。PADI AmbassaDiverのクマです。三陸エリアを中心に海中の環境保護活動を行っています。その中でも近年、全国的に活動が広がってきている藻場再生活動を私達の事例を通してご紹介します。

藻場再生活動の成功と課題

藻場再生活動を始めたのは2015年頃。2011年の津波被害の瓦礫撤去や海中清掃がひと段落してきた時期でした。そんな折り、漁師から「最近ガンガラ(巻貝)やウニが多くみられ、昆布やアマモなどの磯場の海藻・海草が食べられて激減しているようだから調べてもらえないだろうか」と言われスタートしました。

活動の一番最初はカメラを持って潜り、現状を把握するために記録を取ることから始まりました。潜ってみると思った以上に海藻が少なく岩肌が露出しておりウニがびっしりと水底を覆っている所謂、「磯焼け現象」が進んできている状態でした。以前のように海藻に集まる魚たちや生き物たちの息吹は感じられず、ただひたすらウニしかいないモノトーンな寂しい景色が広がっていました。

このまま生き物が減っていくのをただじっと見つめているだけで良いのだろうか? 私達ダイバーにできることは何かないのか?

そこから私達の藻場再生活動が始まりました。

当時、周囲には「人間の手を加えずとも自然の力で戻るだろう」との意見が根強く、協力してくれるダイバーも漁業者も少なかったのを覚えています。海はいつも豊かなものであり、そこから恵みを享受してくるだけでしたが、これからは海を豊かなものにしていかなければならないのです。

近年予想を遥かに超えて水温の乱高下が激しく起こっており、更なる磯焼け現象が進んできています。

この10年で理解が進み、ダイバーも漁業者もノンダイバーも参加する活動の輪が広がってきています。

課題でもある次世代のダイバーの育成や活動資金についても町ぐるみで行う自治体も現れてきており、その流れが大きくなることに期待しています。

私達は全国の藻場再生活動を行っているダイバーや団体の元を訪れ視察をしたり勉強会に参加したりして、今までの事例や研究、様々なノウハウを学びました。その中から三陸で再生させられる可能性のあるものを数種類選びました。

手に入れた移植や種苗生産の手法を元に、季節ごとの活動を開始。

アマモの種、ペットボトルのキャップ一杯で350個ほど
種一粒の大きさは3㎜ほどです
アマモの種が入った花穂(かすい)が船のように浮いていき遠くまで流れて拡散します

春はアカモク、夏はワカメ、秋はアマモ、冬はマコンブです。

活動を開始してから約10年、ホームグラウンドの大船渡市の浪板ビーチには現在1ha程の新たなアマモ林を造成することができました。またそこからボートで5分の場所には絶滅危惧Ⅱ類であるタチアマモ(背の高さが5m)の1ヘクタールの林も造成できました。その名もアマモラビリンス、是非みなさんにアマモの森で迷っていただきたい。

未来への挑戦

自分の手で植えた種から芽吹き、それが海の森となり、そこに生まれてくる様々な生き物たちを観察しているととても感慨深いものがあります。

ウニ砂漠から生命溢れる海の森へ。これを味わうとダイビングはやめられないものとなります。

またアマモをはじめ、海藻や海草が二酸化炭素を吸収固定するブルーカーボンや生物多様性の創出につながり、社会的にも地元の産業である漁業にも、子供達の教育のためにも意義を持つものになっています。

アマモの他にもどんどん海の森が広がってきていますが、それはまた次の機会に。

この活動を通して感じたことがあります。

「私たちダイバーは海の環境を守る先頭に立っている」ということです。

海に潜り、現状を目の当たりにするのがダイバーだからです。

そしてダイバーは行動を起こせるからです。

これからも社会とつながるダイビングで皆さんと一緒に種を蒔いていきたいと思います。

最後に私達の活動で重要なスキルをお伝えします。

場所によっては気を抜いて着底するとウニの棘が刺さってしまうほどウニの密度が高いので、中性浮力は必須です。ドライスーツに棘が刺さって穴が空いてしまうと水没してしまいます。

冷たい水がスーツの中に入ってくるのを想像してみてください。

なので、参加するダイバー達と必要なスキルを身につけるために講習会を開きました。以下の3つは強くお勧めします。

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