1975年に公開された映画『ジョーズ』のインパクトがあまりにも大きく、すっかり「危険な生き物」というイメージが定着してしまったサメですが、ダイバーにとっては憧れの存在。海の中を悠然と泳ぐサメの姿はとても素敵で、サメとの遭遇が期待できる海にはいつも多くのダイバーが集まっています。「サメに会いたい!」というダイバーの皆さんに、サメに会えるおすすめの日本の海を紹介します。
神子元島(ハンマーヘッドシャーク)
日本のダイバーのみならず、海外のダイバーからも高い注目を集めているのが、伊豆半島南端の沖合に浮かぶ神子元島。外洋にあるため魚影が濃く、ハンマーヘッドシャークの群れが狙える海として人気を集めています。島の周囲に「カメ根」、「ジャブ根」「カド根」「白根」「三ツ根」などのスポットが開拓されていますが、ハンマーヘッドシャークが特に期待できるのが、「カメ根」周辺。初夏から秋にかけて遭遇率が高く、運が良ければまるで川のようにハンマーヘッドシャークの群れが泳ぐ「ハンマーリバー」が見られることも! 100%ボートダイビングで、ドリフトスタイルで潜るため、素早い潜降や中性浮力などのスキルは必須。現地ダイビングサービスにより潜る条件などが決められているので、きちんとルール&マナーを守って潜ることが求められます。
与那国島(ハンマーヘッドシャーク)
日本最西端に位置する与那国島は、ロマン溢れる海底遺跡を楽しめる海として人気ですが、ハンマーヘッドシャークに高確率で出会える海としても国内外から注目されています。ベストシーズンは冬から春にかけて。島の最西端に位置する「西崎(いりざき)」周辺でハンマーヘッドシャークとの遭遇率が上がり、運が良ければ「ハンマーリバー」が見られることも。最近では西崎近くの「九部良」でもハンマーヘッドシャークが見られており、白砂の海底の上を群れが泳ぐ幻想的なシーンも人気となっています。ダイビングスタイルはボートダイブで、ドリフトダイビングで潜るのが一般的。潮の流れが速いことも多いので、しっかりとスキルアップしてから潜りに行きたい海です。
伊豆大島(ハンマーヘッドシャーク)
都心からの気軽に行ける離島として人気の伊豆大島。島の周囲に数多くのダイビングスポットが開拓されており、ビギナーからベテランまで幅広く楽しめる海ですが、実はハンマーヘッドシャークを狙える海としても注目されています。狙えるスポットは、島の北西部にある「ケイカイ」。夏から秋にかけてがシーズンで、運がよければ100尾近くの群れを目撃できることも。早朝の時間帯が確率が高く、日の出から1時間くらいがハンマーヘッドシャークの見られる時間帯といわれています。ビーチエントリーで潜ることができ、水深も比較的浅いので、じっくりと観察できるのもうれしいところ。ただし、潮の流れが速いときもあり、「経験本数30本以上」などの条件が大島ダイビング連絡協議会によって決められているので、スキルアップして潜りに行くようにしましょう。
伊戸(ドチザメ)
東京からわずか2時間ほどで“サメまみれ”の海に潜れると世界中のダイバーから注目されているのが、房総半島の南部に位置する伊戸。もともとは伊戸漁協の仕掛けた定置網にかかるドチザメを、網に入らないようにするために誘導したところ、数百尾ものサメが集まるようになり、その混雑ぶりが渋谷のスクランブル交差点をイメージさせることから「シャークスクランブル」と呼ばれるようになったとか。周囲360度をドチザメに囲まれるシーンは圧巻。ドチザメだけでなく、アカエイやクエ、コブダイなども見られ、迫力たっぷりです。港からボートで3分ほどと近く、1ダイブごとに港に戻るスタイルなので、手軽にエキサイティングなダイビングを楽しめるのが魅力です。
甲浦(シロボシテンジク)
徳島県と高知県の県境に位置する甲浦は、黒潮の支流が流れ込むため、海の中がとても賑やか。美しいソフトコーラルや多種多様な生物が観察できますが、注目すべきは毎年4~6月頃に交尾・産卵のために浅場に上がってくるシロボシテンジクとの遭遇が狙えること。普段は水深300mほどに生息しているシロボシテンジクが浅場で観察できる場所としては日本唯一ともいわれており、生態の多くがまだ謎に包まれているサメの貴重な姿を観察することができます。見られるスポットは甲浦湾内にある「大浦」というスポット。水深5~10mほどのサンゴや岩の隙間に身を潜めていることが多いため、脅かさないようにそっと観察したいところです。産卵後の卵や、卵の中で小さなシロボシテンジクが動いている姿もぜひ見てみたいですね。
小笠原諸島(シロワニ)
国際自然保護連合(IUCN)に絶滅危惧種として登録されている稀少なサメ、シロワニ(サンドタイガーシャーク)との遭遇が期待できるのが小笠原諸島の海。父島の北約50km、ボートで1時間半~2時間のケータ列島で見られることで知られていますが、父島や母島周辺でも見ることができます。日本では小笠原諸島周辺でしか見ることができないといわれており、ボニンブルーの海を悠然と泳ぐ姿はダイバーならぜひ見たいところ。鋭い歯があり、見た目はとても厳ついサメですが、とてもおとなしい性格なので、じっくりと観察することができます。父島周辺で観察するなら冬が狙い目。湾内のスポットでも見ることができ、洞窟内を泳ぐ迫力たっぷりの姿や、沈船とのコラボなど、この海ならではのシーンが期待できます。
ドチザメやネコザメ、カスザメには近場の海でも会える!
上記で紹介したサメに高確率で出会える海以外にも、ダイビングでサメと出会えるチャンスはたくさんあります。週末気軽に行ける伊豆半島や湘南・三浦、房総半島、紀伊半島などのダイビングエリアでも、ドチザメやネコザメ、カスザメなどのサメ類が見られることはたくさんあります。AWARE サメの保護スペシャルティ・コースでサメについて詳しく学びながら、サメとのダイビングを楽しむのもおすすめですよ。
サメと一緒に泳ぐならフィンにもこだわろう!
サメと一緒に泳ぐなら、こだわりたいのが「フィン」。特にハンマーヘッドシャークと泳ぐ場合、ドリフトダイビングのスタイルで中層を移動し、潮の流れがあることも多いため、しっかりと水を捉えて進むことができるフィンを使うことがおすすめです。せっかくサメを見つけたのに、全然近くで見られなかったというようなことがないよう、瞬発力や推進力が得られるフィンを選ぶようにしましょう(もちろん、それを実現する脚力やキックのスキルなどを身につけておくことも大切です)。ほかのサメを観察する際にも、水底を巻き上げないようにしたり、サメを脅かさないように近づくことが必要になります。また、サメを探すために広範囲を移動することも。脚力に自信がない人は少ない力でも楽にキックができるフィンを選ぶなど、それぞれのシーンに適したフィンを選ぶことをおすすめします。
ジェットホールでキック力に応じ水流の勢いをつけ、乱流を抑制することで、強い推進力が得られることが特徴のフィンです。また、先端を突起させる形状により、強く蹴り込んだ際もしっかりと水を捉えます。
膝下だけで行う小刻みなフィンワークでも、最も効率良く推進力を発生させることができ、脚力に自信がない人でも楽にキックができます。