もしスクーバ・ダイビングが大好きなら、PADI®インストラクターになることはとてもやりがいのある選択です。自分のダイビングへの情熱をほかの人と分かち合えるだけでなく、IDCで学ぶスキルは人生のさまざまな場面で役立つでしょう。
PADIのIDC(インストラクター・ディベロップメント・コース)は、世界で最も認知されているスクーバダイビング・インストラクター養成コースです。世界中の多くの成功したスクーバインストラクターは、このPADI IDCを通じて、教えるために必要な知識・スキル・自信を身につけてきました。
スクーバダイビング・インストラクターコースを選ぶ際に考えるべき4つのこと
#1 PADIインストラクターになるにはすべて含めていくらかかるのか?
インストラクターになるための費用は、ショップによって異なります。「IDCはいくらかかるのか?」を考えるときに確認すべき項目を整理してみましたので、確認してみましょう。
① コース受講料
PADI IDCは、AI(アシスタント・インストラクター)コースとOWSI(オープン・ウォーター・スクーバ・インストラクター)プログラムの二つのパートによって構成されています。「IDC」として案内されている場合、通常はこの両方が含まれていますが、ショップによっては AIとOWSIを別々に提供し、個別に料金を設定しているケース もあります。そのため、見積もりや料金表を見る際には、AI・OWSIの両方を受けた場合の合計金額はいくらになるのかを必ず確認しておくことが大切です。
② 教材費
IDCに必要な教材には、eラーニングだけでなく、コースを進める上で必須となるスレートやマニュアル類も含まれます。これらは「IDCクルーパック」として一式で販売されることが多く、IDC受講にあたって必ず必要になります。ショップによってはコース受講料に教材費が含まれている場合もこともありますが、多くの場合、コース受講料とは別に購入が必要となります。
③ インストラクター試験受験料
IDCを修了した後、インストラクターとして認定されるためには IE(Instructor Examination:インストラクター試験) を受験する必要があります。このIEには 受験料が設定されており、IDCコース受講料とは別途で支払うのが一般的です。2025年現在、日本での IE受験料は131,780円(税込) です。
④ IDC登録料
IDC修了後、IEに合格したら PADIインストラクター資格申請料をPADIに支払います。PADIインストラクターとして認定・登録され、Cカードを発行できるようになります。
⑤ ダイビング実費
IDCのカリキュラムには、限定水域(プール)や海洋実習でのトレーニングが含まれます。その際に必要となるのが、ダイビング実費です。ボート代・施設利用料・シリンダー代などが該当します。
⑥ 生活関連費(リゾートや遠征地で受講する場合)
IDCを自宅から通える場所で受講する場合はあまり意識しなくてよいですが、沖縄や離島、海外といったリゾートエリアで受講する場合には、宿泊費や食費、現地までの交通費といった生活関連費が大きな割合を占めます。滞在が長期にわたるため、どのような宿泊施設を利用するかや、自炊が可能かどうかで総費用は大きく変わります。
そのほかにも、長期滞在では洗濯や日用品の購入といった細かな出費が重なり、さらに海外で受講する場合にはビザの申請費用や海外旅行保険も必要になります。受講中に体調を崩したり、予定外の事情で延泊が必要になったりすることも考えられるため、余裕を持った予算を準備しておくことが安心につながります。
#2 IDCを受ける場所
これまで通ってきた馴染みのショップが5スターIDセンター・5スターIDダイブリゾート・5スターCDCのいずれかであれば、そのまま受講するのは自然な選択です。信頼できるスタッフや顔なじみのコースディレクターがいて、安心して学べるでしょう。
一方で、もし普段利用しているショップがPADIインストラクター・レベルのトレーニングが提供できない場合は、改めて「どこでIDCを受けるか」を考える必要があります。将来インストラクターとして働きたい環境がすでにイメージできているなら、その環境に近い場所でIDCを受けるのがおすすめです。例えば、リゾート地で働きたいのであればリゾート地のショップ、関東近郊の都市型ショップで活動したいのであれば同じようなエリアのショップを選ぶと、実際の就職後に役立つ経験が積めます。

#3 IDCはどのくらいの期間かかるのか?
IDCの受講期間は、選ぶスタイルや開催するショップによって異なります。最も短いケースでは、すべての条件を満たしていれば10日〜2週間ほどの連続日程で修了することが可能です。この場合は毎日朝から夕方までみっちり学ぶスケジュールになります。ただし、すべてのIDCセンターが「連続日程」で実施しているわけではないので、事前に確認しておくことが大切です。
一方で、週末や休暇を利用して、 数週間に分けて少しずつ進めるIDCもあります。こちらは仕事や学業との両立がしやすく、自分のペースで学べる点がメリットです。学習スタイルや生活リズムに合わせて、どちらの形式が自分に合っているかを考えましょう。
また、IDCに臨む前の準備も忘れてはいけません。多くのIDCセンターでは、初日の授業前にeラーニングなどで知識開発を終えておくことが求められます。さらに、ダイブマスター・コースを受講した後から時間が空いている方は、デモンストレーション用のスキル練習を事前に見直しておくと安心です。
#4 コースディレクターと指導スタッフ
IDCをどこで受けるかを考える上で、最も大きな要素のひとつがコースディレクターと指導スタッフの質や雰囲気です。PADIのIDCは世界共通の基準に沿って行われますが、指導する人によって授業の雰囲気や学びやすさは大きく変わります。
馴染みのあるショップがIDCセンターであれば、スタッフの雰囲気や指導スタイルを知っているので安心して選べます。けれど、新しく通うショップを探すとなると、外から見て判断できる情報が限られているので迷いやすいですよね。
その場合には、説明会やオンライン相談で直接話をしてみて、人柄や相性を見ることが大切です。過去に自分が「この先生から学びやすかった」と感じたタイプを思い出すと良いでしょう。厳しくきっちり指導してくれるタイプを好むのか、フレンドリーで励ましながら伸ばしてくれるタイプが合っているのかは人によって違います。
説明会やオンライン相談で聞いてみたい質問例
- IDCの平均受講者数はどのくらいですか?
- 1日の開始時間と終了時間はおおよそ何時ですか?
- スタッフと受講生の比率はどれくらいですか?
- プールはどのくらい離れていますか?
- 海洋実習はどこで行いますか?
- 最寄りの高圧酸素治療施設(減圧チャンバー)までの移動時間は?
- 近くに医療施設はありますか?
- どのスペシャルティ・インストラクター資格を取得できますか?
- フリーダイビング、テックダイビング、マーメイドなど、ニッチマーケットへの理解を広げる経験を積むことはできますか?
また、ダイブセンターやコースディレクターが あなたのメッセージにどれくらい迅速に返信してくれるかにも注目しましょう。
最後に、PADIのコースディレクターには プラチナ/ゴールド/シルバーといったランクがあります。これは単なる称号ではなく、過去1年間にどれだけ多くのダイバーを認定してきたかを示す指標です。必ずしもランクの高さが「自分にとってベスト」とは限りませんが、経験や実績を客観的に知る目安にはなるでしょう。
PADI IDCとCDCの違いは?
PADI IDCセンターまたはリゾートには、PADIコースディレクターが常駐しており、インストラクターレベルのトレーニングを提供しています。
一方、キャリア・ディベロップメント・センター(CDC)は、より充実した、またはより頻繁なプロフェッショナルトレーニングの機会を提供するダイブセンターです。多くのCDCには少なくとも2名のPADIコースディレクターが在籍しており、専用の施設を持ち、プログラム修了生への就職支援を行っています。

インストラクターになったら、次のステップへ
PADI IDCを修了し、インストラクター試験に合格すると、あなたはPADI OWSI(オープン・ウォーター・スクーバ・インストラクター)になります。この資格を取得すると、PADIの主要コースといくつかのスペシャルティを教えることができます。
活躍の場を広げるために、次のような経験に挑戦する人もいます:
- タンクの充填方法を学ぶ
- 販売やショップ運営での経験を積む
- ボートクルーとして働く
- 追加のスペシャルティ・インストラクター資格を取得する(=MSDT準備)
MSDT準備とは?
MSDTとはMaster Scuba Diver™ Trainer の略で、少なくとも5つのスペシャルティ・コースを教えることができるインストラクターを指します。MSDT準備では、コースディレクターからスペシャルティ・インストラクター資格を取得することが含まれます。どのスペシャルティを選ぶかは自分で決められますが、多くの新米インストラクターは、人気の高いPADIスペシャルティ(エンリッチド・エア・ダイバー、ディープ・ダイバー、ドライスーツ・ダイバーなど)を選ぶ傾向があります。
インストラクターとして成長していくためのさまざまなチャンスは、IDCを受講することから始まります。自分のペースで学び、理想のキャリアを築くために、まずはIDCセンターを探してみましょう。