フリーダイバーのトレーニングを受ける前にも、受けた後に、多くの人が持っている一番のギモンは、水中で息を長く止めるにはどうしたらいいかということだと思います。このブログでは、息止めを長くするためのヒントとコツを紹介します。
陸上で息を止めるトレーニング
陸上で息を止めるトレーニングには、いくつかの方法があります。最も一般的な練習方法は、じっとしたまま呼吸を止める練習と、ウォーキングなどの動作をしながら呼吸を止める練習です。
どちらのやり方を試すにしても、各トレーニングセッションでは、上昇した二酸化炭素への耐性と低下した酸素に対する身体の順応性を考える必要があります。何を目標にすべきかを決定するためには、息止めの際の自分の限界の要因を把握する必要があります。
- もし、すぐに呼吸がしたくなったり、不快で続けられなくなったりするようなら、二酸化炭素に対する耐性を鍛えることに集中したほうがよいでしょう。
- もし、息止めのほとんどの時間、深いリラクゼーションを保つことができ、呼吸への切迫感は強くないが、低酸素状態(酸素が少なすぎる状態)になり始め、息止めが終わってしまうようなら、低下した酸素に対する身体の順応性を高めるトレーニングに集中したほうがよいでしょう。
フリーダイビングを始めたばかりのほとんどのダイバーは、二酸化炭素に対する耐性をトレーニングすることに集中したいと思うかもしれませんが、息止めが続かない原因が二酸化炭素に対する耐性がないだけと決めつけてしまうのは要注意。
ぜひ、息止め前の準備にこだわってください。息止めの前には、適切な完全呼吸法に切り替え、自身の精神状態をチェックしましょう。
ダイビングの前に深いリラックス状態を作る
フリーダイビングコースを受講する時、フリーダイビングのための呼吸法の ” 秘訣 ” を学ぶことを期待している初心者にとって、拍子抜けしてしまうかもしれませんが、ダイビング前にできる最善のことは、「呼吸のことを考えないこと」です。そうです、いまこのブログを読んでいる時のように吸気と呼気の間にほとんど意識的な操作がない、リラックスした状態の呼吸を行えるようにしたいのです。私たちはこれを潮汐呼吸(タイダル・ブリージング)と呼んでいます。
フリーダイビングに有益な呼吸コントロールのための様々な練習法がありますが、実際にフリーダイビングをする時には使いません。その理由としては、呼吸について考えていると、より多くの酸素を使ってしまうからです。私たちが達成したいこととは真逆のことをしてしまっていることになります。
ダイビングの前に必ずやっておきたいのが”ボディスキャン”です。そのためには、まずは完全にリラックスできる姿勢をを取ってください。そして、目を閉じて、息を吸い込むたびに体の一部に意識を集中し、炎の暖かい光をイメージします。息を吐きながら、その部分から炎が弱まり、筋肉の緊張が取れていくのを感じましょう。そして次の息を吸うときに、次の体の部位に移動し、体の緊張がすべてなくなるまで繰り返します。
体の緊張がすべてほぐれると、自分の心に集中することができるようになります。とは言え、「自分の心に集中する」というのは、なかなか難しいのです。そこで筆者は、個人的にマインドフルネスというテクニックをよく使います。マインドフルネスとは瞑想の一種で、その瞬間に何を感じているかを、解釈や判断せずにありのままの自分であることに集中します。つまり、瞑想中に浮かび上がってきた思考はすべてすぐに頭から手放し、今に集中するということです。
例えば、風、波、鼓動、音楽など、環境に応じてノイズを選び出し、ただ耳を傾けます。もし頭に何か別の雑念が浮かんで来たら、その雑念から離れ、元のノイズに意識を集中させます。最初は集中できるかもしれませんが、ある程度の時間が経過すると、心は必ず彷徨ってくると思います。しかし、少し練習すれば、この集中しているマインドフルな状態に長くとどまることができるようになります。
ダイビングの前に完全呼吸法を取り入れる
体内の空気が多ければ多いほど、息を止めていられる時間が長くなることは誰もが想像できると思います。実際にその通りです。しかし、それ以上に重要なのは、心身ともにリラックスした状態を保つことです。そこで取り入れたいのが、完全呼吸法です。
完全呼吸法とは、肺全体を使って効率的に呼吸を行う技術で、心身のリラックスや集中力の向上、ストレス解消に役立ちます。また、フリーダイビングやヨガなど、呼吸を重視する他のスポーツにおいても非常に有益です。
完全呼吸法のやり方
1. 姿勢を整える
椅子に座るか、仰向けに横になってリラックスした状態で行います。背筋を伸ばし、肩をリラックスさせます。
2. 呼吸を意識する
鼻からゆっくりと息を吸い込み、深呼吸をして、さらに余分な力を抜きます。
3. 段階的に息を吸う
最初にお腹を膨らませ、その後、胸を広げるようにして息を吸います。最後に鎖骨のあたりまで息を満たします。
- 腹式呼吸: お腹が膨らむのを感じながら、横隔膜を下げるようにして息を吸い込みます。
- 胸式呼吸: 次に胸郭が広がるのを感じながら、息をさらに吸い込みます。
- 鎖骨呼吸: 最後に鎖骨の周りまで息を吸い込み、肺の最上部を満たします。
4. 息を止める
2~3秒間、息を止めて肺が完全に満たされていることを感じます。
5. 息を吐く
口を使って、息を吸った時と逆の順序でゆっくりと息を吐きます。まず、鎖骨のあたりから息を吐き始め、次に胸、最後にお腹を引っ込めるようにして息を吐き出します。
6. 繰り返す
上記のプロセスを数回繰り返します。リラックスし、無理のない範囲で行うことが大切です。
初心者がいきなり上記のプロセスをすべてスムーズに行うことは難しいですから、腹式呼吸、胸式呼吸、鎖骨呼吸をひとつずつ分けて練習することをおすすめします。
完全呼吸法に慣れたら、大げさなくらいゆっくりと完全呼吸を繰り返すことも試してみてください。息を吸いきってから吐ききるまでの1サイクルに30秒かかることもあれば、1分以上かかることもあります。絶えず同じペースを維持し、息苦しさを感じることがないようにしてください。
横隔膜と胸腔のコントロール力と可動性が高ければ高いほど、より多くの空気を体内に取り込むことができます。
ダイビング・テクニックを磨く
フリーダイビングでは、酸素を無駄にせず、効率よく潜るために身につけなければならない技術がたくさんあります。スタート時、水面で水平になっている状態から水中で垂直になるまでの移行を極力スムーズにできるようにしたいものです。多くの人はこれをダックダイブやドルフィンダイブと呼びますが、これを完璧にすることで、水中でどれだけ長く息を止められるかが大きく変わってきます。
完全に水中に潜ったら、次のような流線型のポジションも取とれるようになりましょう。
- 頭部はニュートラルポジションにする
- 肩と胴体は進行方向に向かせる
- 片方の手を横に添え、耳抜きができるようにもう片方の手は鼻に近くに添える(肘を内側に入れ、水の抵抗にならないように注意)
- 骨盤と腰は前方に固定する
- 足首はつま先まで伸ばす
さらに、効率的なキックが必要なことも忘れてはなりません。効率の良いキックとは、ダイバーによって大きく異なります。しかし、基本的なことは以下の通りです:
- 最初は、力強く、多くの回数でキックを行い、フリーフォールの深度に達するまで、ゆっくりとキックの回数を減らす
- 戻るときは、力強く、キックの回数を増やし、徐々に回数を減らしていく。水面から5メートル(15フィート)近くまで来たら、浮力を利用して浮上する
- 前方へのキックと後方へのキックの力を同じに保つ
- 膝を少し曲げて腰から脚を動かす
- しなやかにつま先まで使って、脚全体でキックする
これらは、水中でより長く息を止められるようになるためのヒントのほんの一部でしかありません。そして、何と言っても重要なのは、毎日トレーニングを続けることです。すでにPADIフリーダイバーであれば、今すぐアドバンスド・フリーダイバー・コースに参加して、フリーダイビングのスキルを磨きましょう!
執筆者プロフィール – Brad Stephens
この記事は、Brad Stephens氏(PADIフリーダイビングインストラクタートレーナー)の協力のもと、制作されています。
Stephens氏はPADIフリーダイビングインストラクタートレーナーで、コスタリカでフリーダイビングスクール「Rica Freedivers」を運営しています。彼は海とフリーダイビングについての知識を共有し、よく教育され、安全で自信をもってダイビングができるフリーダイバーを育てることに情熱を注いでいます。