気になるけどちょっと質問しにくいダイビング中でのトイレ事情。体全体が水中に浸かっていると、人体はより多くの尿液を作り出す傾向にあります。そのため、水中で尿意を感じた経験のあるダイバーも多いのではないでしょうか。今回は、水中でウェットスーツを着たままのおしっこに対してよくある誤った認識と、予防法・対策法をご紹介します!


Wetsuits drying over a wall after they've been rinsed in fresh water after a scuba dive

「水分を控えれば、トイレに行きたくならない」は間違い?

ダイビング前に「トイレが心配だから水分を控えよう」これはよく聞かれる意見ですが、実は水分不足はダイビングのタブーのひとつ。体の水分が不足すると、血流の流れが悪くなり、「減圧症」になりやすくなります。

そもそも人の体は“水に入ると尿を作りやすくなる”仕組みになっています。これには「浸水利尿」という生理現象が関係しています。

暖かい空気の中から、より冷たい水中へ入ると、体は熱を逃がさないよう血管を収縮させます。すると血液が体の中心部に集まり、体は「水分が多すぎる」と勘違い。その結果、腎臓へ“尿を作れ”という指令が送られ、「トイレ行きたい!」となるわけです。

だからこそ、「水分を我慢する」よりも、“寒さ対策”をするほうが効果的です。

自分に合ったウェットスーツを着る、、フードやグローブを追加する、ラッシュガードをインナーとして着るなどで、体の冷えを減らしてみましょう。ちなみに、ダイビング前のカフェインを含む飲み物には要注意。カフェインには利尿作用があるため、コーヒーや紅茶を飲むと、さらにトイレが近くなることがあります。

そしてもうひとつ大事なしっかりと水分補給をしておくべき理由として、脱水状態だと、尿の色やニオイが強くなります。つまり――しっかり水分補給をしておくことは、自分のためでもあり、同じボートに乗る仲間のためでもあるのです。

A diver making a giant stride entry into the ocean, where submersion in colder water will make them want to pee more often

「我慢すればいい」は危険かも?

「ちょっとくらいなら我慢しよう」と思うかもしれませんが、強く尿意を我慢し続けることは、尿路感染症や膀胱炎の原因になることがあります。特に女性は注意が必要です。これらはかなり痛みを伴う症状で、せっかくのダイビング旅行中に発症すると本当に大変。しかも、旅先によっては必要な抗生物質がすぐ手に入らないこともあります。

我慢して潜り続けることはストレスになり、ダイビングが楽しめないだけでなく、注意力が散漫になるなどしてトラブルにもつながりかねません。どうしても我慢できなくなったら、勇気を出して水中でしてしまいましょう。

尿でウェットスーツは傷む?

結論から言うと、通常の尿であれば、現代のウェットスーツのシール部分や接着剤を傷めることは基本的にありません。ただし、裏地付きのウェットスーツなどは、汚れたまま放置するとニオイが残りやすくなるため、しっかり洗浄することが大切です。

問題なのは“尿そのもの”よりも、洗わずに放置すること。汚れたままのウェットスーツは強烈なニオイの原因になるだけでなく、オムツかぶれのような皮膚トラブルを引き起こす可能性があります。

Shortie wetsuits hanging to dry on a boat after being rinsed following a scuba dive

「ウェットスーツの中でおしっこすると暖かい」は本当?

体内から出たばかりのおしっこは暖かいため、ダイビング中の冷えた体を温める効果があるという考えがありますが、実際はその効果はかなり短時間で、むしろその真逆。

暖かい尿液は脳に「暖かい場所にいる」という錯覚をさせます。そのため、冷たい海水がウェットスーツに入ってきたとき、体の準備ができておらず、通常よりも多くのエネルギーを使ってウェットスーツ内の海水を温めることが必要になります。

一方で、水の出入りが少ない高性能なウェットスーツの場合はどうなるかというと……単純に、自分の尿の中に浸かる時間が長くなるだけ。それはちょっと嫌かもしれませんね。

「サメが寄ってくる」は本当?

「ウェットスーツでおしっこするとサメが寄ってくる」という都市伝説もありますが、これは複数の研究者によって否定されています。つまり
海の中でしてしまっても、サメを呼び寄せる心配は基本的にありません。なので、その点については安心して大丈夫です。

A tiger shark approaching the camera in the Bahamas, but peeing yourself in your wetsuit won't attract them

予防法:なるべく水中でのおしっこを避けるためには?

トイレに行くのは、海に入る直前に!

ダイビング前にトイレに行っておくことはもちろんですが、大切なのはそのタイミング。せっかくトイレに行っても、その後でブリーフィングや器材のセッティングなどに時間がかかると、ダイビング中にトイレに行きたくなりがちです。すべての準備を整え、あとはスーツを着るだけという状態になってからトイレに行き、その後すぐに海へエントリーすることがおすすめです。

保温対策をして、体を冷やさない!

トイレが近くなる原因のひとつに「体の冷え」があるので、しっかりと寒さへの対策をしておくことが大切です。特に、体の末端が冷えることによってトイレに行きやすくなるとも言われていますので、寒い時期は厚手のブーツをはく、フードやグローブで体の熱を奪われやすいところをカバーするなど、万全の準備をしておきましょう。

ダイビング前の食べ物や飲み物にも注意!

さらに注意したいのが、ダイビング前の食べ物や飲み物。体を冷やしたり、利尿作用のあるものを摂取すると、トイレが近くなります。代表的なものとして、利尿作用があるのはコーヒーや栄養ドリンクなどカフェインを含むもの、柑橘類のフレッシュジュース、酸味・辛みの強いもの、塩分の多いものなど。また、スイカやキュウリ、たまねぎのほか、砂糖をたっぷり使ったものなどは体の冷えの原因となるそうなので注意しましょう。


ウェットスーツで“する”なら、せめて正しい方法で

ここまで都市伝説や誤解、対策について紹介してきましたが、ここからは“水中マナー”のお話。もしウェットスーツの中でしてしまったなら――
大事なのは、そのあとです。

用をたした後は、必ず「流す」のが基本!

首や腕、足首の隙間から水を入れ替えるなどして、なるべくスーツ内に留めておかないようにしましょう。排尿後の水中滞在時間が長いほど、海水で自然に洗い流されやすくなります。水を入れ替える際は、胸元を少し開いて水を循環させるのも効果的。ただし、体勢を変えることで浮力バランスが変わることもあるため、必ず中性浮力をしっかり保った状態で行いましょう。慌てて浮上・沈降してしまっては本末転倒です。

また、“ベテランダイバー流”のマナーとしては、ダイビング終盤まで無理に我慢せず、できれば早めに済ませるのがおすすめ。その後のダイビング中に海水で流れやすくなるためです。さらに、アスパラガスやニンニク、芽キャベツ、サーモンなど、ニオイが強くなりやすい食べ物には少し注意したほうがいいかもしれません。

そして意外と大事なのが、“その瞬間”は少し周囲と距離を取ること。急に止まり、不自然な姿勢になり、なんとも言えない表情になるダイバーは、意外とバレています。

もちろん、レンタルウェットスーツでやるのはNG。後で洗うスタッフの気持ちも考えましょうね。


いかがでしたか?

ダイバーだって普通の人間。どんなに事前に対策していても、長くダイビングを続ける中で、どうしても我慢できなくなることはあります。

もちろん、水中でのおしっこを避けるためには、エントリー前にしっかりトイレへ行くなど、準備をしておくことが大切です。でも、もし万が一水中で尿意を感じたなら、無理に我慢し続ける必要はありません。

そのときは、勇気を出して(?)早めに済ませてしまいましょう。ダイビング後はウェットスーツ用シャンプーなどを使い、しっかり洗浄・乾燥することも忘れずに。

そして何より大切なのは、自分に合ったウェットスーツを選ぶこと。サイズが合っていないウェットスーツは、水が入りやすく体が冷えやすくなるため、尿意にもつながりやすくなります。逆に、自分にフィットしたスーツを選び、必要に応じてフードやグローブ、インナーなどの防寒対策を取り入れることで、より快適にダイビングを楽しむことができます。

「寒いから仕方ない」で終わらせず、器材選びから快適性を見直してみるのも、ダイビングをもっと楽しむための大切なステップかもしれません。

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