ストレス社会を生きる私たちに、フリーダイビングがもたらす“禅”の癒しとは?答えは「ブルーヘルス」にあるかもしれません。いま世界中で注目されているこの考え方は、「水辺にいること」が心と体に良い影響を与えるというもの。実際、水の中やその周囲で過ごす時間が、心の安定や幸福感の向上につながると、多くの人が実感し始めています。
なかでもフリーダイビングは、特別な体験をもたらしてくれるマリンアクティビティです。装備に縛られることなく、ありのままの自分で“青い地球”と一体となる。水の中で感じる静けさと、心の避難所のような感覚は、他に代えがたいものがあります。
しかもフリーダイビングは、年齢や体型を問わず、誰でも楽しめる低負荷なアクティビティ。ダイビング経験がなくても、肺活量がそれほどなくても、自分の呼吸と向き合いながら水中に身を沈めるだけで、多くの恩恵を感じられるのです。
日々の生活にストレスを抱えている方、あるいは“もっと心穏やかに過ごしたい”と願う方にとって、フリーダイビングは心をリセットし、自分自身と再びつながるきっかけになるかもしれません。ここでは、その理由をいくつかご紹介します。
心が鎮まる
水や海の映像を見るだけでも、人は「青」の持つ鎮静効果を感じるといわれています。中でも、水辺の風景は心の健康にとってもっとも良いとされる視覚刺激です。フリーダイビングでは、そんな“青の世界”に身を置く時間が必要不可欠。その穏やかな空気が、自然と自分の気持ちにも影響し、心のざわめきが落ち着いていくのを感じるでしょう。
回復する力を養う
フリーダイビングでは、まず「呼吸のコントロール」を学びます。これは水中だけでなく、日常生活でも自分を落ち着かせる力となる“自己鎮静(セルフ・スージング)”の技術。マインドフルネスの要素も取り入れながら、フリーダイビングは「今この瞬間に集中する力」や「スローダウンする感覚」を身につけるのに最適です。

癒しの力
「タラソテラピー(海水療法)」という言葉をご存知でしょうか?これは古代ギリシャ、ローマ、エジプトなどでも使われていた、海水を利用した治療法のこと。神経を鎮め、心身を回復させる効果があるとして、古くから多くの人に親しまれてきました。
現代ではスパなどでも海由来のトリートメントが提供され、美肌効果やリラクゼーション、ケガの回復を目的に活用されています。ですが、フリーダイビングを日常的に行えば、こうした“海の恵み”をもっと自然に、しかも費用をかけずに得ることができるのです。
自然とのつながりを思い出す
広い海を見つめて、言葉を失ったことはありませんか?クジラの群れが目の前を通り過ぎる瞬間に、ただただ圧倒された経験は?海は、私たちの心に“謙虚さ”を思い出させてくれる存在です。
水という自然の力を通して、人は「強くあるべきときには強く、優しくあるべきときには優しく」いられることを学びます。そして同時に、「どんなに波が荒れていても、穏やかな海はいつもすぐそこにある」と教えてくれるのです。それは、人生にもきっと通じるヒントとなるでしょう。
さあ、あなたも一歩踏み出してみませんか?
波の音に耳を澄まし、深く呼吸しながら水中に身をゆだねる──そんな“青の静寂”が、心と体を静かに整えてくれるはずです。きっと、これまでにない自分と出会えることでしょう。
著者プロフィール
S.J
2017年、ホンジュラスのウティラでフリーダイビングに出会って以来、カナダ、ダハブ、テネリフェ、イギリスなど、世界各地の海でフリーダイビングを実践。動的・深度のあらゆる種目に取り組みながら、日々“水とともにある暮らし”を体現している。