ウミガメ類は世界中の暖海に生息する爬虫類で、現在では7種が生息しています。日本には、アカウミガメ、アオウミガメ、タイマイ、ヒメウミガメ、オサガメが生息し、そのうち前の3種は日本の砂浜で産卵します。特にアカウミガメにとっては、日本は北太平洋で唯一の産卵地であり、その存続に大きな責任を負う立場にあります。ウミガメは7種のうち6種が国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストや環境省のレッドデータブックにも掲載され、絶滅が危惧されています。
ダイバーとしても、初心者からベテランまで、その存在に惹かれ、観察や撮影のために近づくことが多いでしょう。ウミガメとの遭遇を望み、ウミガメを守り、彼らを邪魔しないように、どのように接したらよいのでしょうか。
ウミガメと泳ぐ・潜る
ウミガメの甲羅、胸部、頭はとてもデリケートです。そのため、ウミガメには決して触れないようにしましょう。
触ると怖がり、無呼吸状態が長くなり、最悪の場合、肺に重大な損傷を与える可能性があります。ウミガメとは距離をとり、泳ぐのを邪魔しないようにしましょう。
ウミガメの巣作り
特に産卵の前の段階では、メスにライトやカメラのフラッシュを向けないでください。光を当てるとカメは産卵をやめて帰ってしまうことがあります。もし幸運にもこの行動を観察することができたら、距離を置いて、できるだけ静かにしてください。
万が一、自分ひとりがこの現象を目撃してしまったら、その巣を管轄の役所に報告するのを忘れないようにしましょう。そうすれば、ウミガメの卵を保護することができます。
卵のふ化
卵がふ化し、生まれたばかりの赤ちゃんが砂の中から顔を出すとき、卵に触らず、海へ向かう道を塞がないように見守ります。子ガメが早く海に入り、浜辺にいる捕食者に邪魔されないようにすることが大切です。
ウミガメの撮影
ウミガメを撮影する際は、過度のフラッシュ撮影は避けてください。フラッシュを直接顔や目にあてないようにしましょう。
ウミガメの個体識別
ウミガメの個体識別は、研究者にとって世界中のウミガメの個体数を把握するためにとても重要なことです。
海のアンバサダーとして、ダイビングやスノーケリングでウミガメに近づいたら、頭の両側と全身の写真を撮りましょう。ウミガメの頭は黒い鱗(顔面鱗)で覆われていて、指紋と同じように個体ごとに違うのです。
メスかオスかを調べるには、全身の写真が必要です。オスは尾が長く、メスや幼魚は尾が短く、見えないことが多いです。
各地域で個体識別を行なっている団体もあります。ウミガメを見た地元地域の団体を探して調査に協力するのもいいかもしれません。
ウミガメと捕食者
ウミガメの天敵はたくさんいます。ウミガメがまだ卵の中にいるときでも、カニが爪で穴を掘ってきます。子ガメの一生のうちで最も危険なのは、巣から海へと飛び出すときでしょう。このとき、カニや鳥、犬、キツネなどの動物に食べられてしまうことがあります。また、海に入ってからは、魚も捕食者になります。ウミガメの赤ちゃんが成体になるのは、1,000匹に1匹と言われています。
あなたがウミガメの赤ちゃんがいそうなビーチでペットを連れて散歩するような機会があれば、ぜひ注意してください。ペットには常にリードをつけ、ペットが遊んでいるものから目を離さないようにしましょう。
成体になってから、捕食者の数は劇的に減少します。この段階では、ウミガメにとって危険な海洋生物は、サメとシャチだけです。
ウミガメへの脅威
ウミガメにとって最大の脅威は、人間(とその活動)です。その活動には、次のようなものがあります。
- 漁具の絡まり:漁網はウミガメにとって致命的な罠となります。漁具に絡まったウミガメは呼吸ができなくなり、溺れて死んでしまいます。釣り針もウミガメを傷つけ、死に至らしめることがあります。
- 密漁や卵・肉・甲羅の違法取引:これらの行為は、成体や新生児の数を減らし、新しい世代の育成を妨げています。
- 海洋汚染、プラスチック、水中のごみ:これらのごみはウミガメの体内に入り込み、死に至らしめる可能性があります。さらに、汚染はウミガメの餌となる生き物を殺したり、傷つけたりする可能性があります。
- 沿岸の開発:海岸での新しい建設は、自然の営巣地を破壊または縮小し、卵の着床を妨げる可能性があります。
- 地球温暖化:地球温暖化は、海洋生態系を変化させ、数百万年前から存在する自然のバランスを崩しています。
これらの活動はすべて、ウミガメを絶滅に近づけています。
ウミガメの救世主
幸いなことに、ウミガメの研究、教育、訓練、生息地の保護に取り組む専門家のグループや協会があります。
詳しくは、以下をご覧ください。Sea Turtle Conservancy、Olive Ridley Project、See Turtles、Sea Turtle Inc.、Sea Turtle Preservation Society、The Leatherback Trustなど。
Credits
Special thanks to Mario Passoni for writing this article, as well as to Agnese Mancini from HEPCA, Christian Díaz Chuquisengo from The Leatherback Trust, Alessandra Sulis and contributing editor Sarah Wormald.