ダイビングを楽しむうえでの障害となりがちなのが船酔いや波酔い。「船に酔いやすいのでボートダイビングが苦手」という人もいるほど、船酔いや波酔いに悩んでいるダイバーは多いようです。船酔いや波酔いがどうして起こるのか、防ぐにはどうすればよいのかなど、詳しく解説します。

船酔い、波酔いの原因

船酔いや波酔いは、「三半規管の刺激」や「視覚と体の感覚の不一致」などが原因で起こると言われています。船の揺れによって、内耳にある三半規管が平衡感覚を失い、脳に誤った情報が送られたり、船は揺れていないのに波が動いているのを見るなど目から入る情報と体の感覚が一致しない場合に脳が混乱し、酔いを感じることになります。また、「自律神経の乱れ」も船酔いや波酔いをしやすくなる原因となり、空腹や満腹、睡眠不足、ストレスは要注意。そのほか、以前に船酔いや波酔いをした経験があると、脳がその記憶を思い出し、再び酔いやすくなるとも言われています。三半規管の感受性や自律神経のバランスは人によって異なり、船酔いや波酔いのなりやすさに個人差があるのはそのためです。

seasickness while diving

船酔いの対策

十分な睡眠と体調管理

前述のとおり、自律神経の乱れは酔いやすさに大きな影響を与えるため、ダイビング前は万全の体調に整えておきたいもの。ダイビングの前日は早めに就寝し、十分な睡眠時間を確保しましょう。前日のお酒の飲みすぎも厳禁。二日酔いも船酔いや波酔いしやすくなる原因となります。風邪などで体調が悪い場合も酔いやすくなりますので、当日、体調が悪い場合は、無理にダイビングに参加しないことをおすすめします。

空腹や満腹を避ける

空腹や満腹も酔いやすさにつながるため、適度にお腹に入れておくことがおすすめです。胃に負担のかかる消化の悪いもの、脂っこい食べ物(ラーメン、天ぷら、ステーキなど)を食べていると、気持ち悪くなりがち。リンゴ、ヨーグルト、ゼリー、パンなど、消化にいいものを食べておくといいでしょう。生姜は乗り物酔いに効果があると言われており、生姜のはちみつ漬けやジンジャーティーなどもおすすめです。逆に、梅干しや柑橘類など生唾が出るようなものは、胃を刺激して酔いを促進してしまうのでNG。酔ってしまってからは特に摂取しないようにしましょう。

酔い止め薬やツボ押しバンドを使用

どうしても船酔い、波酔いが心配な人は、酔い止め薬やツボ押しバンドを利用するのも手。薬の種類にもよりますが、乗船する30分~1時間くらい前に服用しておくといいでしょう。一般的に酔い止め薬に使われている抗ヒスタミン薬は、眠気や判断力・注意力の低下といった副作用もあるので、早めに服用しておくことがおすすめです。手首にあるツボを押して酔いを軽減させるツボ押しバンドは副作用がないため、酔い止め薬の副作用が心配な人は、こちらも使用も検討してみましょう。

船内の位置取り

船の揺れが最も少ない場所を選びましょう。一般的には、船の中央部の少し後ろの辺り。船の一番後ろにはエンジンがあることが多く、風向きなどによっては排気ガスの臭いなどで酔いやすくなってしまうため、避けたほうが無難。ボートによっては船室(キャビン)のあるものもありますが、室内は換気が悪く酔いやすいため、おすすめできません。船の左右についても、波によって揺れることがあるため、なるべく中央部に位置するといいでしょう。

風通しの良い場所で遠くの景色を見る

乗船中は風通しの良い場所で、遠くの景色を見るようにしましょう。遠くの景色を見つめることで、視覚と体の感覚の不一致が少なくなり、船酔いの改善が期待できます。また、風通しの良い場所で景色を見れば、気分転換にもより、自律神経にも良い影響が。冷たい水を飲んだりするのも効果的と言われています。

器材の準備

揺れている船の上で器材のセッティングをしようとすると酔ってしまいやすいので、船が出発する前にできることは済ませておくことがおすすめです。特に下を向いての作業は酔いやすいため、カメラのセッティングなどもできるだけ乗船前に済ませておきましょう。港からダイビングスポットまで近い場合は、タンクを背負った状態で乗船すれば、揺れる船上での作業時間をさらに減らすことができます。

リラックスする

なにより乗船中はリラックスすることが大切。好きな音楽を聴くなどして、緊張をほぐしましょう。スーツによる体の締め付けも酔いやすくなる原因となるため、ファスナーを開けておくなどして、楽に過ごせる状態にしておくこと。船の揺れに対しても、無理に踏ん張るのではなく、身を任せるぐらいの感じでいるといいでしょう。

female diver just gets out of water and tries to get on the boat

波酔いの対策

水面での時間を減らす

エントリーやエキジットの際に波のある水面で待機していたり、うねりの強い場所でダイビングをしていると、酔ってしまうことがあります。水面は波の影響を受けやすく、浮かんでいるだけでも波酔いを起こす恐れがあるため、波酔いが心配な人はなるべくエントリーの順番を後ろにするなど、水面にいる時間を少なくすること。また、エントリー後は速やかに潜水して、波の影響を受けない水深まで潜りましょう。エキジットの際も、水面で待つのではなく、なるべく水中にいるようにし、順番が来たら素早くボートに近づいてエキジットすることがおすすめ。事前にインストラクターやガイドに相談して、準備しておくといいでしょう。

ゆっくり大きく呼吸する

浅くて速い呼吸は自律神経のバランスを悪くするため、酔いやすくなる原因に。ストレスや不安があると、浅くて速い呼吸になりがちなので、大きくゆっくりと呼吸してリラックスすることを心がけましょう。

海草/海藻などの動くものを見ない

特に春先など、海草/海藻が繁茂する季節には、揺れる海草/海藻を見つめていると酔ってしまうことがあります。陸上と同じく、遠くにある動かないもの(大きな岩など)を見るようにしましょう。揺れるのが目に入ってしまう場合は、目に入らない場所(中層など)に位置取りするのも手です。

水中での動きを控える

水中での余計な動きは、三半規管を刺激し、酔いを悪化させる可能性があります。ゆっくりとリラックスして泳ぐようにしましょう。

three divers near boat are descending into the water.
もしも水中で酔ってしまったら?
ダイビング中に水中で酔ってしまった場合、大きくゆっくりと呼吸するなどして解消すればいいのですが、気持ち悪さが続くようであれば、ダイビングは中止してエキジットするようにしましょう。吐くのを我慢していると余計気持ち悪くなってしまうので、吐いてスッキリしてしまうのも手。少し余裕があれば、息を吸ってレギュレーターを外し、吐いたらまたレギュレーターをくわえればOKです。海水でうがいをすれば、口の中の気持ち悪さを取ることもできます。もしも余裕がなければ、レギュレーターをくわえたまま吐いてしまっても大丈夫。手でしっかりとレギュレーターを押さえたまま吐き、吐き終わったらパージボタンを押して、ガスと一緒に嘔吐物をレギュレーターの内部から排出しましょう。レギュレーターは水中でよく洗っておくことがおすすめです。

船酔いや波酔いや精神的なものも大きいので、「酔ってしまわないか不安」と考えすぎると、余計酔いやすくなってしまいます。今回紹介したような船酔い・波酔い対策をしっかりとし、インストラクターやガイドに事前に相談しておくなどして、少しでも不安を減らしておきましょう。また、慣れもあるので、どんどんボートダイビングに参加するなどして、体を揺れに慣らすこともおすすめです。船酔い・波酔いしやすかったのに、ダイビングを続けているうちに酔わなくなったという人もたくさんいます。ぜひ皆さんも船酔い・波酔いを克服して、快適にダイビングを楽しんでくださいね。

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