「夏のレジャー」というイメージが強いダイビング。これからダイビングを始めようとしている人からも「ダイビングって夏以外でもできるんですか?」といった質問をよく聞きますが、ダイビングは夏だけでなく1年中楽しむことができます。日本は陸上に四季があるように、海の中にも四季があり、季節によって様々な水中世界を楽しむことができるのです。皆さんもぜひ1年を通してダイビングを楽しんでくださいね。


のダイビング

Squid spawning

新年度がスタートし、気持ちも盛り上がってくる春。本州エリアでは「春濁り」で海の中の透視度が下がりますが、これは海の中の栄養分が豊富になったことの表れ。水温の上昇と共に植物プランクトンが増殖し、動物プランクトンも増え、それらをエサとする小魚が増え、さらには小魚をエサとする大型の魚が増える、といったように、海の豊かな生態系の源となっています。生き物たちの繁殖シーンを観察するのにも絶好のチャンスで、求愛・交尾・産卵・ふ化など、さまざまな生態シーンを見ることができます。

【見どころはココ!】

多種多様なウミウシが見られる

ダイビングで通年観察することができるウミウシですが、春の時期は特に様々なウミウシを観察することができます。春濁りで遠くが見えにくい海でも、目の前の岩場や砂地をじっくりと探せばたくさんのウミウシを見つけることができるでしょう。花のような形をしたきれいな卵塊を産卵しているシーンなども見ることができます。

Nudibranch with bright orange horns

生き物たちの様々な生態シーンを観察できる

栄養分の豊富な春の海は、生きものたちにとって恰好の繁殖シーズンで、求愛・交尾・産卵・ふ化など、さまざまな生態シーンをじっくりと観察するのにもおすすめです。ダイビングエリアによっては産卵床が沈められ、メスを取り合うオスの戦いや産卵、ふ化などのアオリイカの繁殖シーンが見られるところもあります。

かわいい稚魚・幼魚を観察するチャンス

春はふ化のシーズンでもあるため、かわいい赤ちゃんを観察する絶好のチャンス。様々な稚魚・幼魚のかわいらしさに目を奪われますが、なんといっても人気なのが、ダンゴウオの幼魚です。体長5mm程度と小さく、目のまわりから頭にかけて「天使の輪」と呼ばれる模様があり、とてもキュート。見られるのはこの時期だけなので、ぜひ見たいところです。


のダイビング

気温・水温が上がり、気持ちも「海へ行きたい!」と盛り上がってくる夏は、多くのダイバーが活動するシーズン。ダイビングエリアもたくさんのダイバーで活気づきます。海の中も同様で、春に生まれた生き物たちが成長し、とても賑やかに。透視度も徐々に上がりはじめ、水面から強い太陽の光が差し込む、夏らしい気持ちのよい水中景観を楽しむことができます。伊豆半島では川奈「赤根」や富戸「ソウリ島」、田子「田子島」など、紀伊半島では串本「サメのヒレ」、白崎「シャクシの浜」など、夏期限定で開放されるスポットもあるので、ぜひ狙いたいところです。ただし、旅行や海水浴を目的とした人で海への道が渋滞したり、潜りに行きたい日に予約が埋まっていることもあるので注意しましょう。

【見どころはココ!】

ウエットスーツで気持ちよく潜ることができる

水温が上がる夏場は、伊豆半島などの近場の海でもウエットスーツで潜るチャンス。体全体を水に包まれる感覚は、なんともいえず気持ちのいいものです。陸上の気温も高いため、海から上がってきても快適に過ごすことができます。休憩中に水着で過ごす際などは日焼け止め対策をしっかりとしておきましょう。

魚たちの姿で海の中が賑やかに

春の時期にはまだ小さかった生き物たちが成長し、海の中が賑やかになってきます。小さかった稚魚・幼魚も大きくなってきて、群れなども期待できるように。回遊魚の群れが太陽の光に体を煌めかせながら泳ぐシーンは迫力たっぷりです。水温が高いため、じっくりとフィッシュウオッチングを楽しめるのも魅力です。

地形スポットでは光による幻想的なシーンも

太陽の位置が高く、光の強さも強い夏は、洞窟などの地形スポットを楽しむのにも絶好のシーズン。岩の隙間から光がカーテンのように差し込み、とても幻想的です。自然がつくり出す芸術を思う存分堪能しましょう。また、ナイトダイビングも水温が高い夏がおすすめ。夜光虫がキラキラと輝く神秘的なシーンも期待できます。

The scenic bioluminescent beach at night

のダイビング

陸上は涼しくなってくる秋ですが、海の中はまだまだ絶好調。「ダイビングのベストシーズンは秋」というダイバーもたくさんいます。その理由は、海の透視度が上がり、生物相もさらに豊富になるから。海の水温の変化は陸上の2 か月遅れと言われており、最も水温が高くなるのは9~10 月にかけてなので、伊豆半島や紀伊半島など近場の海でもまだまだウエットスーツで快適に楽しむことができますし、夏に比べて陸上の気温も過ごしやすくなります。ダイビング後のおいしい秋の味覚や温泉なども魅力です。

【見どころはココ!】

海の透視度が上がり、生物相はさらに豊富に

秋になると、黒潮の接岸や台風の接近で水がかき混ぜられ、海の中の透視度が上がってきます。さらに、この黒潮と台風は、ミクロネシアや沖縄など南方の海にすむ生物(季節来遊魚)を運んでくるため、水中が非常ににぎやかに。伊豆半島や紀伊半島などの近場の海にも色鮮やかな生物が増え、華やかな水中シーンを楽しむことができます。

夏に比べて混雑が少なくなる

夏はダイビングを始めようとする人が増え、C カードを取得するための講習に参加者が集中しがちですが、秋になると落ち着き、予約でいっぱいということも少なくなるので、ダイビングの予定が入れやすくなります。講習も少人数で受けられる可能性が高くなるため、より快適に受講することができるはず。海の中もすいてくるため、じっくりと水中撮影を楽しみたいフォト派ダイバーにもおすすめです。

秋はアフターダイブの楽しみもいっぱい

“食欲の秋”や“行楽の秋”とも呼ばれるように、秋は楽しみが多いシーズン。ダイビングのおもしろさももちろんですが、アフターダイブの楽しみも盛りだくさんです。ランチやディナーにおいしい秋の味覚を楽しむのもいいですし、帰り道に紅葉を見たり、温泉でのんびりとくつろぐのもいいでしょう。ダイビング旅行がより充実したものになることは間違いありません。


のダイビング

冬になると、海藻やプランクトンによる影響が減るため海の透視度が上がり、ダイナミックな地形など楽しむのに最適なほか、水温が下がると深海から生物が浅場に上がってくるため、キアンコウやミズウオなどの珍しい生物との遭遇も期待できます。しかも、夏に比べて海への道が渋滞することもなく、時間を効率的に楽しめるというメリットもあり、実はダイビングにおすすめのシーズンなのです。ドライスーツやフードなどでしっかりと防寒対策をして、冬ならではの海の魅力を堪能しましょう。

【見どころはココ!】

海の透視度がグーンとアップ

冬は水温が下がると共に、海中のプランクトンが減少するため、透視度が上昇。伊豆半島などの近場エリアでも、透視度が20m以上になることもあります。どこまでも青い海の中を漂っているのは最高の気持ちよさ。また、奥行きのある水中景観も楽しみやすくなるため、トンネルやアーチなどの豪快な地形を楽しむのもおすすめのシーズンといえます。

珍しい深海性の生物に出会うチャンス

伊豆半島など水深の深い湾に面したダイビングエリアでは、水温の下がる冬の時期に、普段は深海に生息する生物がダイビングで観察できる水深にまで上がってくることがあります。キアンコウ(写真)やミズウオ、サギフエ、マトウダイといった深海性の生物が見られるほか、ホンフサアンコウやシギウナギ、リュウグウノツカイ、チョウチンアンコウといった超レアな深海生物がダイビングで目撃されたことも。何が出るかわからない可能性を秘めた海の世界が楽しめるのも、この時期のダイビングの大きな魅力です。

冬期限定スポットにも要注目

冬のダイビングの楽しみのひとつが、限られた期間のみ潜ることができる「冬期限定スポット」です。伊豆半島では、ダイナミックな地形が魅力の「小曽我洞窟」(熱海)やソフトコーラルの群生が見事な「ピラミッド」(富戸)、房総半島では大型回遊魚の群れが期待できる「ウマノセ」(勝浦)、紀伊半島では人気生物が数多く見られる「内浦ビーチ」(須江)などが有名。この時期にしかできないスペシャルな体験をしに行ってみませんか?

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