みなさんこんにちは、PADI AmbassaDiverの佐藤寛志(クマ)です。私は岩手県の三陸沿岸で藻場再生を行っています。今回は三陸ではどのような藻場再生ダイビングが行われているかご紹介させていただきます。


はじめに

なぜ藻場再生が必要なのか?というところからですが、もともと10年ほど前までは殆どの磯場が海藻に覆われていて生物も沢山みられ、正に健康的な海そのものでした。しかしながら現在は磯場から海藻が消え、真っ白な岩の表面が露出し、生き物もまばらになってしまいました。それを磯焼け現象と呼んでいます。

我々、ダイバーにとっても生物の少ない海は寂しいものですし、地元漁業者にとっても漁獲が下がることはそのまま生活に直結してしまいます。ということで、何か私たちにできることはないだろうか?とスタートさせました。


三陸の海の中で一体何が起こっているのか?

近年の海水温の上昇による影響がここ三陸ではかなり顕著に現れています。過去30年間の平均水温は13.9℃だったのに対し、昨年1年間は17.6℃と、世界の中でも最も海水温上昇が起こっていると言われています。

見えてきた三陸での磯焼けの仕組み

水温上昇の影響が一番大きい原因ではありますが、まずは一つ目は、直接的に海藻の生存可能な夏の水温の限界を超えてしまい、溶けて無くなってしまう現象が観られています。昆布等は秋・冬に成熟して子孫を残しますが、夏の時点で消えてしまい、翌年には昆布が生えてこなくなります。

二つ目は、冬の水温上昇が大きな影響を与えています。元々冬の水温は3℃程まで下がり、海藻を食べる生き物たちは冬眠したり死滅したりしていました。海藻達もそのタイミングを狙うように子孫を残そうとしますが、近年は最低水温が7℃程までしか下がらず冬でも活発に動きまわるウニや越冬した魚達により、春以降海藻が見られなくなってしまう現象が観られています。

結果的には真っ白い岩肌に黒いウニが星の数ほど広がっている状態になり、慢性的な餌不足に陥ってしまっています。

健康な磯場ではキタムラサキウニの平均生息密度は1㎡あたり2、3個体と言われていますが、多いところは30個体程の場所もあります。30人に対して2、3人分のご飯しかない状態です。ウニは餌が殆どなくても10年以上生きられるとはいえ、中身がすっからかんになります。

凄まじい勢いで変わっていく環境ですが、そこに棲む私たちはそれ対応して生きていく手段をこうじていかなくてはなりません。元の環境に戻すのは難しいかもしれませんが、新しい環境に合わせて生きる方法を考えたいと思います。


藻場再生活動

様々、調査をした結果、私たちが行っている藻場再生活動は、昆布、ワカメ、アマモ、ホンダワラを増やす活動を行っています。

年間を通して海藻の移植や種苗生産の時期が異なるので四季を通して様々な活動を行っています。

ウニに関しては地元の自治体や漁協、漁業者と共に密度管理を行っています。ただ単にウニを潰すだけでは環境にどのような影響を与えるのかわかりませんし、漁業者にとっても資源であるウニを潰してしまうのは勿体無いので、現在はウニの蓄養に協力しています。

海藻が増えると生き物が増える

これが私達、藻場再生ダイバーにとって一番幸せな時間です。育った昆布の上にダンゴウオがのっていたり、アマモ林の中に魚の群れが泳いでいたりと豊な海が広がっていくのは感動ものです。

環境の変化を捉える

私たちダイバーにできることとして、写真や動画を撮影、記録することで大事なデータを残すことができます。

例えば、ここ三陸では今までは見られなかった生き物、グルクンや、キンギョハナダイ、アイゴ、イセエビ、ガンガゼなど南方種の確認が相次いでいます。

移ろい行く環境を自分自身の目で見て捉えることができます。それが私たちが生きていくこれからの時代に何らかのヒントを与えてくれるかもしれません。

今回、ご紹介させていただいのはあくまでも三陸のやり方です。みなさんの地元の海、ホームにしている海でも変化や課題を捉え様々なアクションを起こしてみてはいかがでしょうか? 全国でもサンゴや藻場の保全が行われています。PADIのスペシャルティ・コースでも開催されているので是非参加してみてください。

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