早いもので年末の足音が聞こえてくる時期となりました。
もうすぐクリスマス、ホリデーシーズンを迎え、気分を盛り上げてくれる特別な海の生物がいます。地上に住む私たちにとってこんな冬のホリデーは年に一度しか訪れませんが、世界の熱帯海域では、この色鮮やかな生物たちがサンゴ礁の群生地を飾り、一年中お祝いしているのです。
学名「Spirobranchus giganteus」と呼ばれる生物は、多毛類(ゴカイ類)の生物。その見た目から英名はクリスマスツリーワーム、日本ではイバラカンザシという名前が付いています。
クリスマスに飾られるモミの木のミニチュア版のようなカラフルな海虫です。目に見える部分の高さは3センチほどしかないですが、その特徴的な形と複雑な美しさによって、ダイバーは簡単に見つけることができます。熱帯のサンゴ礁でダイビング中にクリスマスツリーワームを見たことがある人も、まだ見たことがない人も、この魅力的で華やかな生物について学んでみましょう。
これらのクリスマスツリーワームは、生息するハードコーラルの表面で見ることができる2本の立派な木のような羽を持っています。このカラフルな渦巻き状の羽毛は、実はワームの付属器官で、摂食と呼吸に使われています。らせん状の「ツリー」はそれぞれ羽毛のような放射状体でできており、ワームの中央の背骨から扇状に伸びています。クリスマスツリーワームは、海水を汲み上げ「ツリー」を越えることで、水柱のプランクトンを濾過・摂食することができます。この特殊な「木」は、ワームが呼吸するためにも使われます。
クリスマスツリーワームの人目を引く部分は、通常高さ数センチにも満たないですが、実は生物全体の一部分に過ぎません。カンザシゴカイ科に属するクリスマスツリーワームは、管棲ワームであり、体の大部分がサンゴの炭酸カルシウムの管の中に隠れています。幼虫のクリスマスツリーワームは、まず硬いサンゴに定着し、時間が経つにつれてサンゴはワームとそのワームが作る管の住処を取り囲むように成長します。管の中のワームの部分は、上から見える「ツリー」の2倍以上の長さがあるのが普通です。これにより、ワームは保護が必要なときに中に完全に引っ込むことができるのです。
クリスマスツリーワームは大型のサンゴに生息することが多く、ポーライト(Porites)のような石サンゴやブレーンコーラルなどがその例です。クリスマスツリー型ワームは、管の中に引っ込むと、オペルキュラムと呼ばれるトラップドアのような構造を使って管を閉じ、さらに鋭い棘で保護することができます。外乱に非常に敏感なこのお祭り海虫は、ちょっとでも触れたり、すれ違う影があったりすると、すぐに巣穴に引っ込んでしまいます。このため、間近で見たり、クリスマスツリーワームを写真に撮ったりしたいダイバーには、かなりの忍耐力と浮力が必要となるでしょう。通常、このミニチュア「クリスマスツリー」は、1分ほどしたらゆっくりと姿を現してきます。
クリスマスツリーワームがサンゴ礁の生態系に果たす重要な役割について、多くの人は知らないかもしれません。クリスマスツリーワームはサンゴ群集の一員として、サンゴの宿主を守る役割を果たしています。クリスマスツリーワームはオニヒトデの管足を押しのけ、オニヒトデから身を守っているのが観察されています。さらに、ストレスのかかる出来事の後、クリスマスツリーワームの近くにサンゴ組織があると、回復が早いという研究結果もあります。クリスマスツリーワームの有無は、サンゴ礁全体の健康状態を反映します。
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