水中で見る光景は、言葉では伝えきれないほどの感動があります。その瞬間を「動画」で記録し、家族や友人、そしてまだ海を知らない人に届けることで、あなた自身が“海のアンバサダー”になることができます。
写真ももちろん美しいですが、ダイビングで見ている世界の魅力は、一枚の写真では伝えきれないもの。魚の群れが動く瞬間、光が差し込むゆらめき、泡の音——そうした“生きている海”の感動を伝えるには、動画がぴったりです。
最近では、SNSでも写真より動画が主流になっています。デジカメの動画機能に加えて、Insta360やGoProなどのアクションカメラも手軽で高性能になり、誰でも簡単に水中映像を撮れるようになりました。その映像の印象やクオリティを大きく左右するのは――ビデオライトです。
なぜ水中の映像は青っぽくなるのか
PADIコースでも習いますが、水中では、光の減衰によって色が変化します。空気中では太陽光がすべての色を届けてくれますが、水の中ではそうはいきません。
特に赤色は非常に吸収されやすく、わずか5メートルほど潜っただけでもその色は薄れ、10メートル前後ではほとんど黒っぽく見えてしまうほどです。
そのため、浅場では真っ赤に輝いていたハナダイやイソバナも、深く潜るにつれてカメラではその鮮やかさをうまく再現できず、全体が青や緑に偏って見える――これがいわゆる「青被り」と呼ばれる現象です。
つまり、映像が青っぽくなるのはカメラの設定ミスではなく、水というフィルターが色を奪ってしまう自然現象なのです。
水中の色を取り戻す「ビデオライト」
水中で失われた赤や黄色の光を取り戻すために欠かせないのが、ビデオライトです。ライトの光を当てることで、カメラが被写体の本来の色合いを正確に捉えられるようになります。魚やサンゴの本当の色が自然に浮かび上がり、見たままの印象に近い映像を残すことができます。
また、ビデオライトの光は、単に明るく照らすためだけのものではありません。光を“描く”道具でもあります。光の角度や距離を変えることで、被写体の立体感や陰影、背景とのコントラストが大きく変わります。同じシーンでもより自然で印象的な映像を撮ることができます。
ビデオライト選びのポイント
ビデオライトは、水中で撮影をするすべてのダイバーにとって欠かせないツールです。アクションカメラ、ミラーレス一眼、コンパクトデジカメ――どんな機材でも、「光の質」を意識するだけで映像の印象は驚くほど変わります。ライトを選ぶ際は、「明るさ」「照射角」「色温度」の3つのポイントを基準に考えると良いでしょう。
水中ライトの中には、明るさ(ルーメン)や照射角を複数段階で切り替えられるようになってるものがあり、その日の海況や撮影スタイルに合わせて、ワンタッチで光を調整することができます。
ライトによって色温度(光の色味)が異なり、暖色系の光は魚やサンゴの赤を自然に見せ、寒色系の光は海の青さや透明感を引き立てます。
どちらが正しいというわけではなく、自分がどんな雰囲気の映像を撮りたいかによって選ぶのがポイントです。
また、水中では操作性も重要。ボタンが押しやすい、グローブでも扱いやすい、バッテリー残量が見やすい――といった使い勝手の良さもチェックポイントです。
Bigblue VTL-2900P
ワイド照射とスポット照射を切り替えられるハイブリッドタイプ。
最大2,900ルーメンの明るさがあり、マクロからワイドまでバランス良く対応します。
色温度は自然な5,000Kで、赤いライトモードも搭載しているため、夜行性生物の撮影やナイトダイブでも生き物を驚かせにくいのが特徴です。


Fisheye LX-1200SW FS
コンパクトながら、ワイド(100°)とスポット(30°)をワンタッチで切り替え可能。最大1,200ルーメンの明るさで、安定した照射と高い操作性を兼ね備えています。また、ストロボ撮影にも対応した「フラッシュセンサー機能」を搭載。軽量なので携行性にも優れています。
ビデオライトは、単に映像を明るくするためのでは機材ありません。水中で失われてしまう色や陰影を取り戻し、あなたが感じた“海の美しさ”をそのまま伝えるための道具です。光を味方につければ、記録は作品に、そして体験はストーリーに変わります。
あなたの映像が、誰かの「海を見てみたい」という気持ちを灯すかもしれません。光を携えて、次の冒険へ出かけましょう。