アウトドアを愛する人たちの間には、こんな有名な言葉があります。「この世界を、出会ったときよりも少し良い状態にして去ろう。」

これは通常、スカウティングを創設した人物の言葉とされていますが、アウトドア好きな人なら誰もが共感できる言葉です。

では、自然を愛する気持ちを活かして環境に関わる仕事をするには、どんな方法があるのでしょうか?

もしこの「海の惑星」を、出会ったときより少し良い状態にして残したいと思うなら、ここで紹介する環境保全の仕事はきっと役に立ちます。経験豊富なプロフェッショナルが「もっと意義あるキャリア」を探している場合でも、これから進路を考える若い世代でも、海を守りながら生計を立てる道はいくつもあります。

この記事で紹介する環境関連の仕事の中には、スキューバ・ダイビングを伴うものもあれば、そうでないものもあります。ただし、ここでは「どれだけ潜れるか」ではなく「どれだけ海に貢献できるか」に焦点を当てています。もし「ダイビングを仕事にしたい」と思っている方は、ぜひこちらの記事もチェックしてみてください。

また、多くの海洋保全の仕事は大学の学位を必要とします。ただし、それがすべての人にとって現実的とは限りません。そのため、以下のリストでは「学位がなくてもできる環境に貢献できる仕事」を2つ紹介します。大学の学位がなくてもできるスキューバ関連の仕事に関しては、上記の記事もぜひチェックしてください。


保全生物学者

学位要件:必要あり

保全生物学者(野生生物学者や水産生物学者を含む)は、データ収集、生息地の健康状態のモニタリング、そして意思決定者や関係者への提言を行います。環境事故が裁判に発展した場合には、専門証人として出廷することもあります。

この職種には通常、生物学の学位(保全生物学や海洋生物学に特化したもの)が必要です。場合によっては、環境科学や自然資源管理の学位でも応募可能です。野生生物や生息地保全の実務経験は必須です。


ダイブマスター

学位要件:不要

海の世界のエキスパートになるのに、大学の学位は必要ありません。PADI ダイブマスターは、地元のダイビングポイントを誰よりもよく知っています。

PADI ダイブマスター・コースでは、水中環境や生態系に関する基礎知識を学び、インストラクターから地域特有の情報やダイブのリード方法を教わります。認定を受ければ、他のダイバーにとってお手本となり、水中世界のアンバサダーとして活動できます。

さらに、ダイブマスター認定は数多くのダイビング業界におけるキャリアへの入り口でもあります。たとえば、多くのプロの水中フォトグラファーやビデオグラファーは、ダイブマスターからキャリアをスタートさせています。水中地形を熟知し、中性浮力が優れていれば、魅力的な一枚を撮影するのも簡単になります。リゾートエリアで働けば、撮影した写真をシェアしたがるダイバーが途切れることなく訪れ、あなたの評判も広がっていくでしょう。

An scuba diver films a shark underwater

洋資源エコノミスト

学位要件:必要

このリストにある環境関連の仕事の中でも、最も幅広い知識と経験を必要とするキャリアです。バイオエコノミクス(生物経済学)は経済学と生態学が交差する分野であり、海洋資源エコノミストになるには経済学の学士号に加え、海洋保全に直接関わった経験が求められます。

海洋資源エコノミストは、ビジネスの世界と水中世界をつなぐ橋渡し役です。経済政策や環境被害の影響をデータ収集を通じて評価し、科学的かつ統計的な分析をもとに、ビジネスリーダーや政府に重要な提言を行います。


水文学者

学位要件:あり

職名からも想像できるように、水文学者は「水」を研究します。彼らの仕事には、水質に関する調査が含まれる場合があります。たとえば、
「この水は飲料水として安全か?」、「どのような汚染物質が存在し、それはどこから来たのか?」といった問いを明らかにすることです。

また、水の供給状況を評価し、水資源保全に関する難しい意思決定に関わることもあります。

この仕事ではフィールドワークが多く、デスクに縛られることはありませんが、研究室でかなりの時間を費やすこともあります。水文学者になるためには、物理科学や自然科学、環境科学、または水文学・水科学に焦点を当てた工学分野の学士号が必要です。


a coral restoration diver hangs coral on an underwater tree

海洋生物学者

学位要件:あり

ダイバーにとって、海洋生物学者は最も魅力的な環境系の職業のひとつです。海洋生物を対象とした研究や観察を通じて収入を得ることは、まさに夢のようなキャリアパスといえます。

海洋生物学者になるには、海洋生物学、海洋生態学、または水生生物学に焦点を当てた動物学の学位が必要です。さらに、多くの海洋生物学者は大学院の学位や追加の専門資格も取得しています。


海洋生態学者

学位要件:あり

海洋生物学者が特定の生物種の研究に焦点を当てるのに対し、海洋生態学者は生物種同士やその環境との関係性を調査します。両者の違いについての詳しい解説はこちらをご参照ください。

海洋生態学者になるには、生物学または環境科学の学位が必要です。卒業後は研究を行い、環境保全に関する政策を立案する意思決定者を支援する役割を担います。


Aerial view of Scuba diving boat in the ocean at famous dive site for tiger shark in Fuvahmulah island, South Maldives. Marine Tourism and Nautical vessel industry

海洋学者

学位要件:あり

海洋学は、その名の通り「海のあらゆること」を研究する幅広い分野です。ある海洋学者は深海の海洋生態系を研究し、別の研究者は海岸浸食を調査します。工学のバックグラウンドを持つ海洋学者であれば、新しい水中探査機の開発に携わることもあります。

海洋学者になるには、生物学、地球科学、環境科学、または工学の学位が必要です。さらに、化学や物理学の知識も大いに役立ちます。

海洋学の分野について詳しくはこちら


ダイビング・インストラクター

学位要件:不要

ダイビング・インストラクターになることに関してよくある誤解は、「ただ人に潜り方を教えるだけ」と思われがちな点です。それは小学校の先生が「ただ子どもに読み書きを教えるだけ」と言われるようなものです。

実際には、ダイビング・インストラクターは環境教育者でもあり、生徒に水中世界への情熱を植え付けます。また、人々が恐怖心を克服するのを助け、人生にポジティブな変化をもたらします。環境に関わる仕事の中でも、最もやりがいのある職業のひとつです。

PADIインストラクター開発コース(IDC)は、世界で最もよく知られ、最も高く評価されているダイビング・インストラクター・コースです。PADIインストラクターになれば、世界中を旅しながら、この「海の惑星」での時間を最大限に活用することができます。PADIインストラクターは、世界各地で需要があります。

水中世界を人々に紹介することに興味があるけれど、スキューバ・ダイビングを教えるのは自分には合わないかもしれない…という方は、フリーダイバー・インストラクターになることを検討してみてください。


a school of fish in the ocean

漁業オブザーバー

学位要件:あり

世界的に見ても、水産業は多くの雇用を支え、また30億人もの人々の食生活に欠かせない存在です。 しかし同時に、乱獲は今日、海洋が直面している最大の脅威のひとつとして認識されています。漁業オブザーバーは、持続可能な漁業を実現するうえで重要な役割を果たします。主な仕事は、漁獲量や混獲に関するデータを収集し、持続可能な管理に役立てることです。また、漁業の順守状況を監視し、規制の執行をサポートすることもあります。

漁業オブザーバーは通常、生物学、地質学、化学など自然科学系の分野で学士号を取得しています。

漁業オブザーバーの仕事についてもっと知りたい方はこちらをご覧ください。


海洋政策スペシャリスト

学位要件:ほぼ必須

海のために行動を起こすなら、今ほど重要な時はありません。海洋政策スペシャリストは意思決定の最前線に立ち、保護対象種、漁業、海洋保護区、海上での産業開発などに影響を与える政策に積極的に関わります。彼らは大体、ステークホルダーや政府機関、NGOと国内外で協働します。

海洋政策に関連する職種には、環境法、海洋科学、環境政策などの分野での学士号、または修士号や博士号といった上級学位が求められることが一般的です。さらに、海洋分野での実務経験は、この職を目指す人にとって大きな強みとなります。


すべてのダイバーは海を守る力を持っている

今どんなキャリアを歩んでいても、あるいは仕事とダイビングを分けて楽しんでいても、すべてのスキューバダイバーは「オーシャン・トーチベアラー」なのです。例えば、プラスチック汚染を防ぐために博士号が必要なわけではありません(もちろん持っていれば素晴らしいですが)。海にやさしい選択を日常で心がけたり、その大切さを周りの人に伝えることでも、立派に貢献できるのです。

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