首都圏から日帰り圏内で、東日本のダイビングのメッカとなっている伊豆半島。講習で利用されることも多く、初心者から楽しむことができますが、伊豆半島でのダイビングの魅力をトコトン楽しむなら、ぜひスキルアップして中・上級者向けのダイビングスポットにもチャレンジしたいところ。心躍るダイナミックな水中シーンを楽しみにいきましょう!


神子元島「カメ根」

神子元島のダイビングスポット「カメ根」は、神子元島の南側に位置する、水面に飛び出た丸い岩が目印のスポットです。ハンマーヘッドシャークとの遭遇率が高い場所として知られており、100尾以上の群れが見られることも。ほかにもメジロザメ、ウミガメ、ワラサやカンパチなどの回遊魚、ときにはジンベエザメやニタリといった超大物が姿を現すこともあり、ダイバー憧れの海となっています。地形は複雑で入り組んでおり、そこに海流が当たることで複雑な流れに。主にドリフトダイビングで行われるため、浮力コントロールなどのスキルをしっかりと身につけておくことが必要です。神子元ダイバーズ協議会が「ダイビング経験本数30本以上をログで証明できる方。さらに1年以上のブランクがない方」と参加条件を定めているほか、各ダイビングサービスによっても独自の基準を設けているので、事前に確認しておきましょう。

A school of hammerhead sharks at Mikomoto in Japan
PADIフォトコンテスト2022 受賞作品 @sametohoshi (Instagaram)

エリア情報-神子元島

観光地としても有名な石廊崎や弓ヶ浜、下田などがある伊豆半島南部。その弓ヶ浜、手石港から南に沖合約9キロに位置するのが神子元島です。島のシンボルである灯台は、明治初期に建造された日本でもっとも古い洋式灯台として知られ、面積がわずか0.1平方キロの小さな島の周囲がダイビングスポットになっています。伊豆半島屈指のダイナミックな海であり、ハンマーヘッドシャークをはじめとする大物に会える確率が高いことで人気。「カメ根」、「青根」は地形が複雑に入り組んでいて男性的な雰囲気がある一方、「白根」は地形が比較的平らで砂地もあり、女性的な雰囲気があるなど、各スポットそれぞれに特徴があり、魅力的な水中シーンを楽しむことができます。


雲見「沖の根」

雲見といえば「牛着岩」や「三競」といった地形スポットが有名ですが、またひと味異なる迫力の水中シーンを体験できるのが、ボートで10分ほどの外洋にある「沖の根」。魚影の濃さが特徴で、カンパチやツムブリ、イサキなどの回遊魚のほか、大小さまざまな魚がぎっしりと群れており、ときにウミガメやクエ、サメなどが見られることも(ジンベエザメが登場したことも!)。地形もダイナミックで、豪快なダイビングを楽しむことができます。潮の流れが速く、深度も深めなため、ダイビングサービスによって参加条件が決められていることも。しっかりとスキルアップしてから潜りに行きましょう。

school of Grunt fish in Okinone Kumomi Japan
画像提供:コリンズDC

エリア情報-雲見

昔から漁師町として栄え、温泉地としても知られる雲見。沖に浮かぶ「牛着岩」は、その昔、飼っていた牛が海に流されたどり着いたことから名づけられたといわれており、牛着岩ごしに望む富士山は一度見たら忘れられない印象を与えてくれます。その牛着岩を中心に大きな根が点在しており、ユニークな地形を楽しめるのが雲見の大きな特徴。岩の隙間から差し込む光がつくり出す幻想的なシーンは多くのダイバーから人気を集めています。魚影も濃く、回遊魚からマクロな生物まで様々で、地形と生物の両方を楽しむことができます。


熱海「沈船」

伊豆半島のみならず国内屈指の沈船スポットとして有名なのが熱海の「沈船」。全長80mを超える巨大な船「旭16号」が水深30mほどの砂地に横たわっており、ロマン溢れるダイビングを楽しむことができます。老朽化しているため船内に入ることはできませんが、中を覗くとネンブツダイやクロホシイシモチがびっしりと群れており、船体についたソフトコーラルの周囲にはサクラダイやキンギョハナダイが群れていてとても華やか。中層ではカンパチやイナダ、タカベなどの回遊魚を見ることもできます。沈船のトップで水深18mを超えるため、PADIアドヴァンスド・オープン・ウォーター・ダイバー以上であることが必須。ディープ・ダイバーSPやエンリッチド・エア・ダイバーSPがあれば、より安全に楽しめるはずです。

four divers posing infront of shipwreck

エリア情報-熱海

古くから温泉地として有名な熱海は、車でも電車でもアクセスしやすく、首都圏から気軽にダイビングに行けるのが魅力。国内最大級の「沈船」をはじめ、ダイナミックなドロップオフが楽しめる「ソウダイ根」、ビルのようにそそり立つ「ビタガ根」、冬季限定(11月~3月末)スポット「小曽我洞窟」など、バリエーションに富んだスポットがそろっており、多くのダイバーが訪れています。ビーチスポットはなく、ダイビングスタイルは100%ボートダイビング。どのスポットも港から5〜10分ほどと近く、初心者からベテランダイバーまで幅広く楽しめる海となっています。


田子「フト根」

魚影の濃さで人気の田子の外洋スポット「フト根」。巨大な根が聳え立っており、その周りでキンギョハナダイやサクラダイのほか、カンパチやブリ、イワシ、タカベ、イサキといった回遊魚を見ることができます。より上級者向けとして注目されているのが、西側の深場にある隠れ根で見られるサクラダイの群れ。秋になると産卵のために上がってきたサクラダイが乱舞するシーンを見ることができます。視界を埋め尽くすサクラダイの群れは圧巻。ナンヨウキサンゴとのコラボレーションも見事です。水深が深く、潮の流れが速いことも多いため、限られたダイバーしかいけない上級者スポットですが、スキルを磨き、海況のいいタイミングを狙って、ぜひ潜りに行きたいスポットです。

bright red cherry bass swimming above the reef in Tago Japan
PADIフォトコンテスト2023受賞作品 @chishimamurakami (Instagram)

エリア情報-田子

伊豆半島西側の中央からやや下のあたりに位置する田子は、古くから漁師の町として栄え、「日本の夕日100選」にも選出されるほどの夕日の美しさでも知られるエリア。ボートダイビングがメインで、豪快な外洋スポットと穏やかな湾内スポットがあります。外洋スポットは複雑な地形と回遊魚が魅力。潮通しがいいためソフトコーラルも生き生きとしています。一方、湾内スポットは、サンゴが群生しているなどバラエティに富んでおり、西風に強く年間を通して海況が穏やかなため、初心者から楽しむことができます。


平沢「淡島・根の端」

講習エリアとしても人気の平沢ですが、そのイメージをくつがえす壮大な水中シーンが広がっているのが、ボートで約10分のところにある淡島周辺の海です。「淡島・根の端」は、水深4mほどの根のトップから急激に落ち込むダイナミックな地形とソフトコーラルの多さが見どころ。ダイバーの背丈よりも大きなトゲトサカや、伊豆半島ではめずらしいオオミナベトサカがニョキニョキと生えており、幻想的な水中景観をつくり出しています。周囲にはサクラダイやハナダイの仲間が群れており、奥駿河特有のマクロ生物も豊富に観察できるため、フォト派ダイバーからフィッシュウオッチング好きなダイバーまで満足できること間違いなし。全体的に水深が深めなので、スキルアップして潜りにいくことがおすすめです。

Sea goldies swimming among softcoral in Awashima, Japan
PADIフォトコンテスト鍵井賞受賞作品 @miwa.diving_photo (Instagram)

エリア情報-平沢

駿河湾の北東奥深くに位置し、アクセスの良さでも人気の平沢。潜りやすいビーチスポットや快適に利用できる施設で、講習からファンダイビングまで幅広いダイバーに利用されています。ビーチは施設の目の前で、エントリー/エキジットポイントは3カ所(毎年7〜8月は2カ所)。全体的に深度は浅く、風に左右されない安定した穏やかさで、初心者から安心して楽しむことができます。ボートダイビングを楽しむこともでき、ボートの発着も施設前の浮桟橋からなのでラクチン。穏やかなビーチとは対照的に、ダイナミックな地形や魚群を楽しむことができます。


中・上級者向けダイビングスポットを潜るなら受けておきたいPADIスペシャルティ・コース

伊豆半島の中・上級者向けダイビングスポットはボートダイビングがメインで、潮の流れが速かったり、水深が深いことも多いので、以下のようなスペシャルティ・コースを受講しておくことがおすすめです。

ボート・ダイバー

ダイナミックな地形や魚群が狙える中・上級者向けダイビングスポットは外洋にあることが多く、ボートダイビングが一般的です。ひと口にボートといっても、和船やクルーザー、ゴムボートなど、タイプはさまざま。どんな状況でも慌てずにボートダイビングが楽しめるよう、ボートからのエントリー&エキジット法や器材のまとめ方、船酔いの防止法などをこのコースで学んでおきましょう。ボートでの移動時間が長いツアーでも、安心して参加することができるようになるはずです。

DSMB(ディレイドサーフェスマーカーブイ)ダイバー

DSMB は一般的にダイブ中の水面下から使用されるマーカーブイのこと。膨らませたDSMB を水面に打ち上げ、ボートなどに自分の居場所を知らせるほか、ラインを指標にして安全停止を行なうこともできます。このコースでは、DSMB を携帯/使用することの価値を理解し、使用するときのリスクの可能性、リスク・マネージメントのテクニック、正しいトレーニングの必要性などを知り、DSMB を使用するテクニックを学ぶことができます。

ディープ・ダイバー

中・上級者向けダイビングスポットの中には、水深18 m以深に見どころがあるところも多く、まるでお花畑のようなソフトコーラルの群生や、太陽の光の届かないグランブルーの世界、沈船、ケーブ(洞窟)など、ダイバーの好奇心を刺激する光景が広がっています。このコースでは、深く潜ることで増えるリスクをきちんと認識し、潜水計画の立て方をはじめ、より安全にディープ・ダイビングを楽しむための方法を学びます。未知なる海の世界を探検しにいきましょう!

●ドリフト・ダイバー

ドリフトダイビングとは、潮の流れに乗って移動するダイビングのこと。潮の流れがあるダイビングスポットでのドリフトダイビングは、流れに乗ってラクに移動できるうえ、大型回遊魚の群れなどとの遭遇のチャンスもあり、とてもエキサイティングです。ただし、油断をしていると事故につながる可能性もあるので、このコースでドリフトダイビングの注意点やエントリー&エキジット方法、セーフティグッズの使い方などをしっかりマスターしておきましょう。

●エンリッチド・エア・ダイバー

エンリッチド・エア・ダイビングでは、空気に比べて窒素の割合が少ないガスを利用するため、空気でのダイビングに比べて時間的に余裕を持つことができます。特に、水深が15~30mのダイビングに向いているといわれており、じっくりと水中生物を観察したり、水中写真を撮りたいダイバーにはうってつけのコースです。また、エンリッチド・エア用のダイブテーブルの使用方法なども身につきますので、減圧理論に興味のあるダイバーにもおすすめです。

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