周囲を海に囲まれた日本には、個性豊かなダイビングエリアがいっぱい。日帰りで気軽に行ける場所にも、見どころ満載の海があるのです。第2回は房総半島のダイビングエリアを紹介します。
都心から2 時間程度でアクセスできる房総半島。東京湾を横断するアクアラインを利用すればより簡単に潜りに行けるとあって、首都圏のダイバーからも人気があります。ダイビングエリアは半島の南側に集中しており、太平洋側(外房)と東京湾側(内房)で異なる個性の水中シーンを楽しめるのが魅力。外洋に面し、黒潮の影響を直接受ける太平洋側では、回遊魚の群れや豪快な地形など迫力のシーンが。一方、東京湾側は穏やかなコンディションで、潮当たりのよさから季節来遊魚も多く訪れ、生物相の濃さが見どころとなっています。

房総半島のおすすめダイビングエリア
行川
東京から電車で2時間足らずでアクセスできる行川は、多様な水中シーンを楽しむことができる魅力的なダイビングエリア。外洋の影響を受けやすく、透明度が高い日が多いのが特徴。黒潮と親潮の影響で、伊豆半島とは異なる生物相が楽しめ、ウミウシなどのマクロ生物から、回遊魚の群れ、時にはマグロやイルカなどの大物に出会えることもあります。また、ドロップオフやオーバーハングなどのダイナミックな地形もあるなど、初心者からベテランまで満足できるバリエーションの豊富さが魅力です。
人気ダイビングポイント:マグロ根
行川を代表する外洋ポイントで、豪快なドロップオフや大きな根が点在するダイナミックな地形が魅力。潮当たりがよいため、大型の回遊魚が集まり、ワラサやカンパチの群れに遭遇することも。ドチザメやネコザメなどのサメもよく見られ、運が良ければウミガメも見られます。特に秋から冬にかけての透明度の高さと魚影の濃さは圧巻。流れが強いことが多いため、上級者向けのポイントです。
アクセス
車:東京から約2時間。京葉道路・館山自動車道経由、大多喜・勝浦方面へ
電車:東京駅から特急わかしおで約1時間30分、行川アイランド駅下車



勝浦
房総半島南東部に位置する勝浦は、豊かな自然と漁業が盛んな歴史ある港町。都心から約2時間とアクセスも良く、外洋の恵みを受けたダイナミックな地形と豊富な魚影が魅力のダイビングエリアとなっています。ボートダイビングとビーチダイビングの両方が楽しめ、特に冬季限定のボートスポット(ウマノセ)が人気。複数の現地ショップがあり、快適なダイビング体験を提供しています。周辺には、日本三大朝市のひとつである勝浦朝市や、勝浦温泉、海の博物館など、アフターダイビングも楽しめるスポットが充実しています。
人気ダイビングポイント:イソムラ
勝浦を代表するダイビングポイントで、豪快な地形と魚影の濃さが魅力。真っ白な砂地に巨大な根が聳え立っており、1ダイブではすべてを回り切れないほど。そこにワラサやブリ、ヒラマサ、カンパチといった大型回遊魚が姿を現し、迫力たっぷりの水中シーンが展開されます。運が良ければウミガメやトビエイなどが見られることも。根に開いた穴にはネコザメやクロアナゴの姿も見られ、何度潜っても楽しいポイントとなっています。
アクセス
車:東京から約2時間。京葉道路・館山自動車道経由、大多喜・勝浦方面へ
電車:東京駅から特急わかしおで約1時間30分、勝浦駅下車



西川名
東京から約2時間、房総半島先端の洲崎灯台を回り込んだところに位置する西川名は、黒潮の影響で年間を通して魚影が濃く、多様な生物に出会えるダイビングエリア。ダイナミックな岩場、砂地、ソフトコーラルなど、変化に富んだ水中景観が楽しめます。潮通しがよく、透明度の高さと魚影の濃さが魅力。特に、ずらりと並んだヒゲダイや、5~6月頃から現れるトビエイの大群は圧巻です。トビエイは、多い時には100~200尾が根の周囲を回遊していることも。そのほか、ヒゲダイ、モロコ、アナゴなどが四季を通じて見られ、黒潮の影響から南方系の魚も見ることができます。
人気ダイビングポイント:Aブイ
「大根(オオネ)」と呼ばれる広大な岩群にAブイからエントリー。ガイドロープ沿いに進むと通称「V字谷」に到達し、ヒゲダイ、モロコ、イシダイ、カサゴ、メバル等を年間通して見ることができます。また、Aブイを基点にドチザメの群れや、5~6月頃からはトビエイの群れを見ることもでき、迫力たっぷりの水中シーンに圧倒されること間違いなしです。潮の流れが速いことも多いので、中~上級者向けのポイントとなっています。
アクセス
車:東京から約2時間半、アクアライン経由で館山自動車道を利用。館山方面で降り、国道127号を進む
電車:東京駅から特急さざなみで館山駅まで約1時間45分。館山駅からバスで約20分


伊戸
房総半島の南端、館山市に位置し、黒潮の恩恵を受けた豊かな海が広がっている伊戸。2010年にオープンした、房総半島の中でも新しいエリアでありながら、何百というサメやエイの群れに出会える海として世界中のダイバーから注目されています。元々は定置網にかかるサメを回避するために漁協が始めた餌付けが、数百尾ものサメが集まる圧巻の光景を生み出しました。ドチザメだけでなく、クエ、アカエイ、コブダイといった大物にも高確率で出会うことができ、大迫力の水中シーンを楽しめるのが魅力。港からポイントまで近く、ダイビング後には館山の新鮮な海の幸を堪能できるのもダイバーに人気の理由です。
人気ダイビングポイント:沖前根
港から約3分に位置するボートポイントで、ブイが2つ設置されており、東の方が「シャークシティ」と呼ばれています。水底に張られたロープの周辺で何百というドチザメが縦横無尽に泳ぎ回る大迫力のシーンを見ることができ、周囲すべてをドチザメに囲まれることも。ほかにもアカエイやクエ、コブダイなどが見られるほか、1~3月頃には海鳥のウミウが捕食のために水面から水深20m付近まで潜ってくる珍しいシーンが見られることも。水深20~24mと深めなので、中~上級者向けのポイントとなっています。
アクセス
車:東京から約2時間15分。館山自動車道富浦ICから国道127号線、県道297号線経由
電車:東京駅から特急さざなみで館山駅まで約1時間45分。館山駅からバス、タクシー利用




見物
南房総の館山市街を抜け、房総フラワーライン沿いにある見物(けんぶつ)は、東京湾の出入り口に位置し、黒潮の影響を受けた豊かな生物相が魅力のダイビングエリア。ビーチとボートの両方のダイビングが可能で、休暇村や高速バスの停留所も近く、アクセスが便利なのも魅力です。穏やかな海は初心者やブランクダイバーにも最適で、カジメの林が広がる「トライアングル」、ハゼが豊富な「ゴビーズポイント」、講習に適した「ビーチ」など、多様な水中景観を楽しめます。夏から秋にかけては南方系の生物もいろいろと見ることができ、のんびりフィッシュウオッチングを楽しみたいダイバーにもおすすめです。
人気ダイビングポイント:トライアングル
港から近く、最大水深7mほどで、流れもほとんどないため、初めてのボートダイビングにもおすすめのポイント。砂地の沖に岩場が広がっており、何種類かのサンゴを見ることもできます。かわいらしい魚たちが多く、夏から秋にかけてはミツボシクロスズメダイやクマノミなどの姿も。ブランクダイバーのリフレッシュにも最適です。
アクセス
車:東京から約1時間45分。館山自動車道鋸南保田ICから国道127号線経由
電車:東京駅から特急さざなみで安房勝山駅まで約1時間50分。安房勝山駅からバス、タクシー利用
坂田
館山市の坂田(ばんだ)は、静かな入り江に面した港町で、映画『グラン・ブルー』のモデルとしても知られるフランス人海洋冒険家のジャック・マイヨール氏が愛した美しい自然と温かい人柄が魅力のダイビングエリア。黒潮の影響を受けた温暖な海は、豊かな生物層を育み、東京からの日帰りダイビングエリアとしても人気です。水深が浅く、流れも穏やかなため、初心者やブランクダイバーでも安心して楽しめるのが魅力。水中には、色鮮やかなソフトコーラルのお花畑や、カンパチ、ヒラマサなどの回遊魚が群れるダイナミックな景観が広がっており、ホウセキカサゴなどの珍しい生き物が登場することもあります。
人気ダイビングポイント:カロウ根
港からボートで5分ほどに位置する隠れ根を潜るポイント。根のトップはソフトコーラルやキンギョハナダイの群れでまるでお花畑のよう。魚影の濃さが特徴で、時期によってはスズキやカンパチの群れ、キビナゴのものすごい大群が見られ、迫力のある水中シーンを楽しむことができます。ホウセキカサゴが発見され、話題になったのもこのポイント。海底一面にウミエラが群生するユニークな水中景観も見ものです。
アクセス
車:東京から約1時間40分。館山自動車道鋸南保田ICから国道127号線経由
電車:東京駅から特急さざなみで館山駅まで約1時間45分。館山駅からバス、タクシー利用


波佐間
東京湾の出入り口に位置する波左間は、黒潮の影響を受ける豊かな海が楽しめるエリア。最大の特徴は「海底神社」があることで、海中に巨大な鳥居と洲崎神社分社の社があり、そこにコブダイの「頼子」が守り神のように現れることで世界的に有名な海となっています。そのほか、ソフトコーラルがびっしりついた漁礁があるポイントや、ボートで1~2分のところには「マンボウランド」があり、時期によってはマンボウなどの大物と泳ぐことも可能。東西と南を山や岬に囲まれているため、年間を通して海況が穏やかなのも魅力です。
人気ダイビングポイント:高根
世界唯一の海底神社があるダイビングポイント。高さ4mの大鳥居と洲崎神社の分社が鎮座し、ダイバーの安全を祈願する神聖な場所となっています。巨大なコブダイがまるで神の使いのようにダイバーの前に現れ、人懐っこい性格で周囲を泳ぎ回るのがユニーク。周辺ではイシダイやクエが見られたり、エビ、カニ、ウミウシ、ハゼなど、多種多様な生物を観察することもできます。また、砂地に広がるウミエラの群生もとても幻想的です。
アクセス
車:東京から約2時間。館山自動車道富浦ICから国道127号線経由
電車:東京駅から特急さざなみで館山駅まで約1時間45分。館山駅からバス、タクシー利用

写真提供:オーシャン館山

写真提供:オーシャン館山
勝山
都心からわずか1時間半、JR安房線勝山駅から徒歩10分に位置し、東京駅からのバスや東京湾フェリーなどでもアクセスできる勝山。東京湾の豊かな生態系と黒潮の影響を受け、多種多様な生物が生息しているダイビングエリアで、現地ダイビングサービスの名称から「かっちゃま」の通称でも親しまれています。湾の沖に浮かぶ浮島と、その西側の大小の岩島「大ボッケ」「小ボッケ」の周辺にダイビングポイントが開拓されており、風の影響を受けにくいポイントが多いため、年間を通して潜ることができるのが魅力。透明度の高い海中では、南方系の魚やサンゴ、回遊魚の群れなど、珍しい生き物との出会いも期待できます。
人気ダイビングポイント:千手ドロップ
勝山を代表するダイビングポイントのひとつ。港のすぐ沖に浮かぶ浮島の西にあり、根の岩肌に生えるムチヤギやムチカラマツがまるで千手観音の手のように見えることがポイント名の由来。壁沿いではウミウシなどのマクロ生物が豊富に見られ、ネコザメやエイなどの大物が見られることも。フィッシュウオッチングを楽しみたい人から、迫力の地形を楽しみたい人まで、幅広いダイバーが楽しめるポイントとなっています。
アクセス
車:東京から約1時間30分。館山自動車道鋸南保田ICから国道127号線経由
電車:東京駅から特急さざなみで安房勝山駅まで約1時間50分


