周囲を海に囲まれた日本には、個性豊かなダイビングエリアがいっぱい。日帰りで気軽に行ける場所にも、見どころ満載の海があるのです。第1回は北海道&東北のダイビングエリアを紹介します。
世界自然遺産に登録された知床半島をはじめ、広大な原野や山岳地帯、美しい湖、緑豊かな湿地帯など多様な環境を抱え、日本で最も豊かな自然が残っている北海道。ダイビングのスケールも大きく、冬にオホーツク海に押し寄せる流氷の下を潜るアイスダイビング、トドやアザラシといった海獣類とのふれあいなど、ユニークなダイビングが楽しめます。
一方、東北の太平洋側は、南から来る黒潮と、北から流れてくる親潮がぶつかる「海流の交差点」。そのため、ひとつの海で、北方系の生物と南方系の生物が共存する、不思議な海の世界が広がっています。日本海側は、荒波によってできた壮大な地形などが見どころ。それぞれのダイビングエリアでユニークな水中景観を楽しむことができます。

北海道のおすすめエリア
積丹半島・美国
積丹半島の東側に位置し、北海道で唯一の「海中公園地区」に指定されている積丹岬からビヤノ岬にかけてスポットが点在。「積丹ブルー」と呼ばれる抜群の透明度の海の中で、水中柱状摂理などのユニークな水中景観を楽しむことができます。季節によって様々な見どころがあり、夏にはスズメダイやイシダイの群れが見られたり、冬から春にかけてはトドやアザラシなどの海獣類の姿も。巨大なミズダコやゴッコ(ホテイウオ)、ホッケなど、北の海ならではの生き物も人気です。夏場の水温が高い時期にはウエットスーツで潜ることもできます。
人気ダイビングポイント:宝島
宝島は、積丹半島・美国の代表的なダイビングポイントで、透明度が高く、ダイナミックな地形で人気があります。冬場はトドとの出逢いも期待大。水中を悠然と泳ぐトドは迫力たっぷりです。東と西に分かれており、東は水深6mほどの岩場から水深22mの砂地までのかけあがり状の地形となっています。エゾメバルの群れやムラソイなどが見られ、トレーニングダイブや体験ダイビングも可能。一方、西は水深5mほどの湾状の地形で、沖に向かってなだらかに深くなっており、講習などでもよく利用されます。
アクセス
車: 札幌から約2時間(道央自動車道→小樽IC→国道5号→国道229号経由)
電車: 札幌駅からJR函館本線で小樽駅へ(約35分)、小樽駅からバスで美国(約1時間30分)

写真提供:アクアキャット 幌武意ダイビングキャンプ
知床
毎年2~3月にかけての1カ月間、オホーツク海を渡って流氷が流れ着く知床半島。北から押し寄せてきた流氷が接岸すると、流氷ダイビングのシーズンのスタートです。外気温マイナス15度、水温マイナス2度という過酷な条件下のダイビングですが、得られる感動はとても大きく、特に頭上を覆う流氷の隙間から光が差し込むシーンはなんとも幻想的です。水中ではさまざまな生き物に出会うことができますが、中でも外せないのが「流氷の天使」クリオネ。水中をひらひらと舞う様子はまさに天使のようです。そのほかにもクサウオやカジカ、ギンポの仲間などが見られ、流氷がもたらす海の豊かさを感じることができます。
人気ダイビングポイント:ウトロ沖
知床半島の西側に位置し、流氷ダイビングで人気のエリア。接岸した流氷に穴を開け、そこから入る氷の下の世界は、透明度が高く、他では味わえない神秘的な体験をすることができます。クリオネなどの人気の生き物のほか、水面近くでアザラシが姿を見せることも。ダイビング以外にも流氷ウォークや周辺の観光などいろいろと楽しめるのも魅力です。
アクセス
車: 女満別空港から約2時間(国道334号経由)
電車: JR釧網本線で知床斜里駅(網走駅から約50分)、知床斜里駅からバスでウトロ(約50分)


函館臼尻
函館市の南端に位置する臼尻は、市内中心部から北東に約40km離れた太平洋に面し、北海道でも珍しい温帯性と寒帯性の生物が混在するダイビングエリアとして知られています。季節ごとにさまざまな生き物を観察することができ、春はホテイウオの美しい卵塊やかわいらしい幼魚を見ることができます。夏にかけてはウミウシやダンゴウオが多く見られ、秋には南方系の季節来遊魚の姿も。多様な生き物を見ることができるため、フォト派ダイバーに人気の海となっていますが、地形的には穏やかな湾内が多く、初心者から上級者まで楽しめるのが特徴です。
人気ダイビングポイント:前浜
臼尻湾は波が穏やかで、初心者から楽しめるダイビングポイントが多いのが特徴です。人気の「前浜」はスロープが設置されており、エントリー&エキジットが楽なだけでなく、水深も浅く、最大でも15mほどなので、講習からフィッシュウオッチング、水中撮影まで、じっくりと楽しむことができます。水中は海草/海藻が繁茂し、自然の豊かさを存分に味わえるのが魅力。その隙間に魚たちが卵を産んでいたり、卵からハッチアウトしたりと、見どころが豊富な海になっています。
アクセス
車: 函館市内から約1時間(国道278号経由)
電車: JR函館本線で函館駅へ(札幌から約3時間30分)、函館駅からバスで臼尻(約1時間20分)

写真提供:グラントスカルピン
東北のおすすめエリア
大船渡
岩手県大船渡は、リアス式海岸の地形を活かしたダイビングが楽しめるエリア。北から寒流の親潮、南から暖流の黒潮がぶつかる地点にあり、栄養分が豊富な海は多種多様な生き物が棲むのに適した環境となっています。大船渡の海は四季折々の変化が豊かで、春には海藻が生い茂り、海中が鮮やかに。北の海の人気者のダンゴウオやホテイウオ、フサギンポ、アイナメなどいろいろな生き物を観察することができ、じっくりとフィッシュウオッチングを楽しむのにも最適です。秋は川でサーモンスイムを楽しむこともできます。
人気ダイビングポイント:波板海岸
岩手県大船渡市越喜来(おきらい)にある浪板ビーチは、40年ほど前から越喜来漁協のアワビ放流事業や北里大学の研究等の潜水の歴史があり、岩手のレジャーダイバーの聖地となっています。東日本大震災で大きなダメージを受けた海ですが、自然豊かな姿を取り戻し、砂地では群生するアマモの中を魚たちが泳ぎ回る、穏やかなシーンを見ることができます。ダンゴウオなど人気生物もいるので、フォト派ダイバーにもおすすめです。
アクセス
車: 仙台市から約2時間(東北自動車道→三陸自動車道経由)
電車: JR東北新幹線で一ノ関駅へ(仙台から約30分)、一ノ関駅からBRT(バス高速輸送システム)で大船渡(約1時間30分)。東北本線と三陸鉄道でアクセスすることもできる

女川町竹浦
宮城県の女川町竹浦は、三陸沖の豊富なプランクトンにより多種多様な海洋生物が生息するエリア。北方系と南方系の生き物が混ざり合い、じっくりとフィッシュウオッチングを楽しみたいダイバーにもおすすめです。かわいらしい見た目で人気のダンゴウオのほか、クチバシカジカやフサギンポなど北の海ならではの生き物を観察することができます。天然の真ボヤなど、この海ならではの見どころも。地形が楽しめるダイビングポイントもあり、ワイドからマクロまで、バリエーション豊富に楽しむことができます。
人気ダイビングポイント:アゴ島
港からボートで5~6分でアクセスできるポイントで、ダンゴウオやクチバシカジカ、フサギンポといった人気生物が観察できるほか、起伏のある地形や水路も見どころ。潮通しがよく、時に潮の流れがあることもありますが、そのぶん水が抜けやすく、クリアな水中景観を楽しむことができます。天然の真ボヤが群生しているため、その上にダンゴウオがちょこんと乗っているキュートなシーンが見られる可能性もあります。
アクセス
車: 仙台市から約1時間30分(三陸自動車道経由)
電車: JR仙石東北ラインで石巻駅へ(仙台から約1時間)、石巻駅からJR石巻線で女川駅へ(約30分)

写真提供:宮城ダイビングサービス ハイブリッジ
南三陸・志津川
南三陸金華山国定公園の中央にあり、南限・北限となる豊かな植生を持つ島々が浮かぶ志津川湾。黒潮と親潮が交差するこのエリアでは、多種多様な生物が見られ、四季を通じて異なる景観が楽しめます。日本屈指の海洋生態系が広がるダイビングエリアとしても知られ、北方系種・南方系種の両種が混在。季節によって多種多様な生き物が見られ、ダンゴウオやクチバシカジカ、ナメフウセンウオ、アツモリウオなどの人気生物の姿も。志津川湾は穏やかな入り江であり、初心者にも適したポイントが多いのが特徴です。
人気ダイビングポイント:椿島周辺
志津川湾に浮かぶ椿島周辺にダイビングポイントがあり、初心者から上級者までレベルに合わせて楽しむことができます。深度が浅めのポイントも多く、初心者やじっくりとフィッシュウオッチング/水中撮影を楽しみたいダイバーにもおすすめ。人気のクチバシカジカを観察することもでき、季節によっては岩の隙間などで抱卵するクチバシカジカの姿を見ることも。そのほか、オコゼカジカやダンゴウオなど、さまざまな生き物を観察することができます。
アクセス
車: 仙台市から約1時間30分(三陸自動車道経由)
電車: JR東北本線で小牛田駅へ(仙台から約50分)、小牛田駅からBRTで志津川(約1時間30分)

写真提供:グラントスカルピン

写真提供:グラントスカルピン
庄内・加茂
庄内・加茂エリアは、「日本海ブルー」と呼ばれる、日本海ならではの透視度の高い海が特徴。日本海を北上する対馬暖流の恩恵を受け、8月の水温は28度にまで上昇し、気持ちの良いダイビングを楽しむことができます。季節ごとに生物が入れ替わり、水中で四季を楽しめるのも魅力。春はホテイウオの抱卵や幼魚、ダンゴウオなどのかわいらしい生き物が見られ、夏から秋にかけては季節来遊魚の姿も。秋から冬にかけてはアイナメやクジメの抱卵などを観察できます。冬場は水温が下がるものの、透明度が上がり、クリアな視界でダイビングが楽しめるのが魅力です。
人気ダイビングポイント:加茂ビーチ
クラゲの展示で有名な加茂水族館のすぐそばに位置し、ビーチエントリーでのんびりと楽しむことができるポイント。最大水深12m、平均水深8~10mと浅く、コンディションも安定しているため、初心者から安心して潜ることができます。水中は岩場と砂地から成り、春は北から訪れる北方系、秋は南から訪れる南方系と、季節によって異なる生き物が現れ、産卵・ふ化などの生態シーンもじっくり観察することができるので、フィッシュウオッチングにおすすめです。
アクセス
車: 庄内空港から約30分(国道7号経由)
電車: JR羽越本線で鶴岡駅へ(新潟から約2時間、仙台から約2時間30分)、鶴岡駅からバスで加茂(約20分)

山形・四島
山形県鶴岡市の沖合に浮かぶ4つの島(四島)の周辺を潜ります。釣り場としても有名な場所だけに魚影が濃く、イナダなどの回遊魚が群れるワイドな水中景観が楽しめるほか、マクロ生物も豊富に観察できるため、フィッシュウオッチングを楽しみたいダイバーにおすすめ。水中はいくつもの根が交差して迷路のようになっており、アドベンチャラスな地形ダイビングを楽しむこともできます。ビーチでもボートでもない、島に設置された桟橋から潜る「ジェッティダイビング」というユニークなダイビングスタイルなのも特徴です。
人気ダイビングポイント:灯台
港から5分ほどに位置する、灯台のある島に渡り、そこに設置されたジェッティ(桟橋)からダイビング。潮当たりがいいため、イワシやアジ、それを狙うイナダなど、回遊魚の群れを観察することができます。中でも人気なのが、愛嬌たっぷりのコブダイとマダイ。この海のアイドルとなっており、訪れるダイバーを楽しませてくれます。島の北側には水中トンネルがあり、地形ダイビングを楽しむことも。夏期限定のスポットとなっています。
アクセス
車: 山形市内から約1時間30分(国道112号経由)
電車: JR奥羽本線で山形駅へ(仙台から約1時間)、山形駅からバスで四島(約1時間)
