周囲を海に囲まれた日本には、個性豊かなダイビングエリアがいっぱい。日帰りで気軽に行ける場所にも、見どころ満載の海があるのです。第3回は伊豆諸島のダイビングエリアを紹介します。

東京から南に連なる伊豆諸島。東京都に属しながら南の島の雰囲気たっぷりで、黒潮が流れ込む海の中は、回遊魚の群れからカラフルなトロピカルフィッシュまで、生物の宝庫となっています。ダイバーに人気のウミガメに高確率で出会えるほか、カンパチやイナダ、ヒラマサなどの大型回遊魚に出会えるチャンスも。ニタリ(オナガザメ)やハンマーヘッドシャーク、なんとマンタやジンベエザメ、イルカ、クジラといった超大物が見られたこともあり、その可能性は無限大です。また、フィリピン海プレートの東縁にある伊豆諸島の島々はいずれも火山、またはカルデラ式海底火山の外輪山が海面より高くなったものといわれており、溶岩などが作り出すダイナミックな地形を水中でも楽しむことができます。


伊豆諸島のおすすめダイビングエリア

伊豆大島

伊豆七島の中で最も身近な伊豆大島。熱海からのジェット船を利用すれば、わずか45分で到着し、アクセスの良さが魅力です。黒潮の恩恵を受けた海は、平均的に水温が高く、透明度も良く魚種も豊富。火山の島らしく、アーチやクレバスなどが入り組んだ海底景観を作り、そこにソフトコーラルが彩りを添える、バラエティ豊かな水中シーンが楽しめます。秋から冬にかけては季節来遊魚も豊富。「秋の浜」をはじめとして、ビーチでフィッシュウォッチングや水中写真に最適なスポットが多いのが特徴です。風の強いときや台風のときでも、島影を選べば潜れることも多く、講習地としても人気があります。

人気ダイビングポイント:秋の浜

ゴロタ・砂地・カケアガリ・カベ・深場と、ダイビングポイントとしてのすべての要素を持っています。その内容の濃さはボートスポットにひけを取らないばかりか、それ以上という声も。ポイント自体が広く、いくつものコース取りが可能で、何度潜っても飽きることがないのが魅力です。生物相が豊富で、マクロから大物まで、時には珍しい生物も登場。フォト派ダイバーから特に人気が高く、「伊豆大島に来たら秋の浜しか潜らない」というダイバーもいるほどです。ハシゴが設置されており、エントリー/エキジット共に楽にできるのもうれしいポイントです。

アクセス

東京・竹芝桟橋から《東海汽船》の大型客船が毎日1便運航されており、所要時間は約6時間。また、竹芝桟橋からは高速ジェット船も運航されており、こちらの所要時間は1時間45分ほど。そのほか熱海からは約45分、土曜・休日は久里浜からアクセスすることもできます。 


八丈島

東京から南へ約287kmに浮かぶ八丈島。伊豆諸島で2番目に大きい、周囲約51kmの島の中は、ハイビスカスやストレチアなどの色鮮やかな花々が咲き誇り、南の島らしい雰囲気が漂っています。島のランドマークとなっているのは、八丈富士と三原山。この2つの火山の噴火による溶岩の接合で島ができたため、水中も陸上もダイナミックな地形が特徴です。海の見どころは、なんといっても生物相の豊富さ。ユウゼンやトサヤッコなど八丈島ならではの生物に加え、伊豆半島の生物、沖縄などの南方の生物が入り混じり、魚だけでも700種以上が見られるといいます。カエルアンコウなどの人気のマクロ生物から、カンパチやイソマグロなどの大型回遊魚の群れ、ときにはニタリやハンマーヘッドなどの大物が現れることも。

人気ダイビングポイント:ナズマド

八丈島を代表する人気ビーチポイント。潮通しがよく、ときにかなり流れることもありますが、そのぶん魚影が非常に濃いのが特徴。イソマグロやカンパチ、ツムブリ、ヒラマサ、キハダやハガツオなどの回遊魚やハンマーヘッド、ニタリといったサメの仲間、さらにはユウゼン、スミレヤッコ、トサヤッコ、テングダイなどの八丈島の定番からフリソデエビ、ウミウシなどの小物まで、オールラウンドに見ることができます。

アクセス

東京・竹芝桟橋から《東海汽船》の大型客船が毎日1便運航。行きは東京・竹芝桟橋を夜10時半に出発するので、東京近郊に在住の人なら、会社が終わって一旦家に帰ってからでも間に合うのがうれしい。羽田空港から飛行機でアクセスする方法もあります。


神津島

その昔、伊豆の島々をつくるために神々が集まって話をしたという「神集島」が島名の由来となっている神津島。伊豆七島のほぼ中央に位置し、黒潮の影響を強く受けるため、ダイナミックなダイビングを楽しむことができます。好漁場として知られる島の周囲は魚影が濃く、ウミガメやカンパチ、ツムブリなどの回遊魚からテングダイの群れまで見どころがいっぱい。島の西側には白砂の海底が広がる穏やかなスポットもあり、初心者から上級者まで楽しめる海となっています。ダイビング以外にもサーフィンや釣りなどさまざまなマリンアクティビティを楽しめるのも魅力です。

人気ダイビングポイント:長浜作根

魚影の濃さが魅力のボートポイント。いくつかの根が点在し、根の周りにはスズメダイやイサキ、タカベなどが群れています。テングダイやミギマキが群れを作っていたり、モロコ(クエ)などの大物が姿を現すことも。神津島の海の豊かさを十分に感じることができるはずです。ミニアーチなどの地形を楽しむことも可能。流れのあることが多いので、中~上級者向けのポイントとなっています。

アクセス

東京・竹芝桟橋から《東海汽船》の大型客船が毎日1便運航されており、所要時間は約12時間。また、竹芝桟橋と熱海からは高速ジェット船も運航されており、竹芝桟橋からは3時間45分、熱海からは2時間ほど。そのほか、下田からフェリーでアクセスする方法もあります。


三宅島

東京から南に180キロ。伊豆七島のほぼ真ん中に位置する三宅島は、2000年の雄山噴火によりしばらく足を踏み入れることができなかったものの、2005年5月に観光が再開。以来、多くの観光客が再び島を訪れています。噴火によって海の中まで流れついた溶岩がアーチやドロップオフを造り出しており、ダイナミックな地形が特徴。また、テーブルサンゴの群生にトロピカルフィッシュが舞う、南の島らしいシーンも観察できます。ダイビングポイントは島をぐるりと囲むように点在し、ビーチとボート、どちらもバリエーション豊富に用意されているため、ビギナーからベテランまで幅広い層が楽しめるのが魅力。お隣の御蔵島まで船で移動して楽しむことができるドルフィンスイムも人気のアクティビティです。

人気ダイビングポイント:大久保浜

初心者から上級者まで楽しめる、三宅島の看板ビーチポイント。黒砂のビーチからエントリーすると、水中はゴロタ、砂地、岩地に分かれており、多種多様な生物が生息。クマノミやタツノオトシゴ、カエルアンコウなど人気のマクロ生物から大型回遊魚の群れまで、バリエーション豊かに観察することができます。珍しい生物が登場することも多く、フィッシュウオッチングや水中写真を楽しみたいダイバーにおすすめのポイントです。

アクセス

東京・竹芝桟橋から《東海汽船》の大型客船が毎日1便運航。行きは東京・竹芝桟橋を夜10時半に出発するので、東京近郊に在住の人なら、会社が終わって一旦家に帰ってからでも間に合うのがうれしい。調布から飛行機でアクセスする方法もあります。


式根島

新島の南西に位置し、外周およそ12キロの小さな島である式根島。複雑に入り組んだリアス式の海岸線に囲まれているため、風の影響を受けにくく、ダイビングに適した環境が広がっています。穏やかなビーチスポットは講習や体験ダイビングに最適。一方で、ボートスポットは回遊魚の群れやソフトコーラルの群生などを楽しむことができます。海底から泡が噴き出す神秘的な「海中温泉」では、ウミガメがのんびり休んでいることも。陸上では、樹齢900年ともいわれる巨木や、火山活動によるユニークな景観が見られ、島ならではの豊かな自然が見どころとなっています。天然の露天温泉・足付温泉と地鉈温泉にもぜひ入っておきたいところです。

人気ダイビングポイント:御釜湾(海中温泉)

初心者から潜ることができるボートポイント。白い砂にポコポコと温泉が湧き出ている、世界的にも珍しいポイントとなっています。砂の中に手を入れるとかなりの熱さ。砂地ではサカタザメや大型のエイなどが見られ、ウミガメにもかなり高い確率で遭遇できます。CO2シープと呼ばれる希少な場所で、海洋酸性化が進んだ未来の海の環境があるということから、生態系などの研究も進められており、世界中から注目されています。

アクセス

東京・竹芝桟橋から《東海汽船》の大型客船が毎日1便運航されており、所要時間は約10時間。また、竹芝桟橋からは高速ジェット船も運航されており、こちらの所要時間は3時間ほど。下田からフェリー、調布から飛行機で新島へ行きそこから船でアクセスする方法もあります。


利島

伊豆大島の南約25kmにある小さな島、利島。円錐形の成層火山からなる島で、全体が山のような地形をしており、手つかずの自然が多いことから、山歩きや星空観察などで訪れる人も多くいます。椿の島としても有名で、島全体におよそ20万本ものヤブツバキが自生しており、椿油の生産も盛ん。利島産の椿油は高品質で人気があります。黒潮の影響を色濃く受けた海の中では、アオウミガメやサメ、大型回遊魚などを見ることができ、ダイナミックなダイビングを楽しむことが可能。島周辺には野生のミナミハンドウイルカの群れが生息しており、ドルフィンスイムが楽しめる海としても注目を集めています。

人気ダイビングポイント:亀石

中級者~上級者向けのビッグポイント。ボートからエントリーし、ドリフトダイビングで楽しむのが一般的です。ポイント名のとおり、ウミガメとの遭遇率が高く、1ダイブで10匹近くのウミガメに出会えることも。カンパチ、ヒラマサ、シマアジなどの回遊魚や、ときにハンマーヘッドシャークなどの大物が見られることも。透明度の高い海で、壁のように魚が群れる様子は圧巻です。

アクセス

東京・竹芝桟橋から《東海汽船》の大型客船が毎日1便運航されており、所要時間は約9時間。また、竹芝桟橋からは高速ジェット船も運航されており、こちらの所要時間は2時間20分ほど。下田からフェリー、調布から飛行機で大島へ行きそこからヘリコプターでアクセスする方法もあります。

Two Dolphins in Toshima Island

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