夏本番。晴れた空、青い海、ダイビングのベストシーズンがやってきました。でも、そんな時こそ気をつけたいのが「脱水」と「熱中症」。

脱水状態は、熱中症を引き起こすだけでなく、血液が濃くなりガスの排出がスムーズにいかなくなることで、減圧症のリスクも高まるといわれています。つまり、ダイビングの安全性にも直結する、大切なコンディション管理です。ところがダイビングでは、“水の中にいるからこそ”喉の渇きに気づきにくいことや汗をかいていないように思えることから、対策が遅れてしまうことも少なくありません。

そこで今回は、ダイバーが脱水・熱中症になりやすい3つの理由とその対策を、わかりやすくご紹介します。楽しい夏のダイビングの前に、一度目を通してみてください。


ダイバーは脱水状態・熱中症になりやすい条件がそろっている!

1. 陸上での作業や休憩中、体は熱をためている

シリンダーや器材を運んだり、セッティングしたり──ダイビングは、実は陸上の準備や片付けもけっこうな重労働。 しかも、それらの作業はたいてい直射日光の下で行われます。そして、ダイビング間の休憩中も要注意。「ちょっとだから」と日陰に行かずに過ごしたり、スーツを着たまま座っていたりすると、体温が下がるどころか、どんどん熱がたまっていきます。

2. 体が冷えると、喉の渇きを感じにくくなる

一方で、水中にいると、ひんやりして気持ちいいですよね。でも実はその“冷え”が、脱水に気づきにくくなる要因のひとつでもあります。

寒さによって血管が収縮し、血液が体の中心に集まると、脳は「水分は足りている」と勘違いしてしまいます。その結果、本当は水分が不足していても、喉の渇きを感じにくくなるのです。実際、ある研究では、寒い環境で運動すると喉の渇きの感覚が最大40%も低下するという報告もあります。つまり、感じていないだけで、体は確実に水分を失っているんです。(参考文献)。

3. シリンダーの空気は“ふつうの空気”よりずっと乾いている

これはPADIオープン・ウォーター・ダイバー・コースでも習う基本知識ですが、改めて思い出してみましょう。ダイビング用のシリンダーに詰められているのは、非常に乾燥した空気です。なぜなら、高圧で充填する際に水分が混ざるとタンクの内部が腐食する恐れがあるため、空気中の湿気は専用のフィルターで徹底的に取り除かれているからです。この“乾いた空気”を呼吸するたびに、私たちの体の中から水分がじわじわと奪われていくことになります。

Diving instructor lifting tanks

ダイバーのための熱中症・脱水対策

  1. 喉が渇く“前”に飲む!
    水中では渇きを感じにくいため、喉が渇いていなくても定期的に水分補給をしましょう。
  2. 水分だけでなく、塩分も適度に補給
    汗とともに失われるのは水分だけではなく、ナトリウムやカリウムなどの電解質も失われています。熱中症対策には、水だけでなく経口補水液やスポーツドリンク、塩タブレットの併用も効果的です。
  3. ウェットスーツを着たまま休憩しない
    「脱ぐのが面倒」「日焼けしたくないから」といって、ウェットスーツを着たまま休憩していませんか?スーツ内に熱がこもり、体温の上昇と脱水を加速させてしまいます。上半身だけでも脱ぐ、日陰に移動するなど、体を冷ましやすくしましょう。エアコンのきいたドライエリアがあるなら、そこで休憩するようにしましょう。
  4. 体調不良を感じたら、無理して潜らない
    軽い頭痛・だるさ・めまいなどは、熱中症の初期サインかもしれません。 「1ダイブ休む勇気」が、命を守る選択になることも。
暑い日の女性の飲料水。

ダイビング後の「ビールが最高!」……ちょっと待った!

ダイビング後、器材を片づけて一息。「いや〜、この1杯のために潜ってる!」と、ビールを手にする方──きっと身近にもいるのではないでしょうか?

でも、ちょっと待ってください!アルコールには利尿作用があるため、「水分補給」ではなく、飲めば飲むほど体から水分が出ていきます。つまり、ダイビングで失った水分を補うどころか、さらに奪ってしまうのです。

ダイビング後は、まず真水やスポーツドリンクでしっかり水分補給を。
体が落ち着いてから、乾杯するのがベストです。「潜ったら、まず1杯の水。乾杯はそのあと。」このルールを忘れないでくださいね。

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