AWARE(日本)では、新しい取り組みとして「廃漁網の回収とリサイクルプロジェクト」をスタートしました。
このプロジェクトは三井物産ケミカル(株)協力のもと、2020年から構想を始め、その後地元漁師と地元PADIメンバーの協力を得て、トライアルを繰り返した結果の活動開始です。

ゴーストギア問題

皆さんも一度は耳にしたことがあると思われる「ゴーストギア」。世界の海に流出している漁具です。
これらの流出量は年間50万~115万トンとも言われており、多くがプラスチックでできています。これらの漁網は600 年間は生分解されません。

海洋プラスチックごみによって、多くの海洋哺乳類、海鳥、ウミガメなどの生物が被害を受けています。海洋プラスチック被害の中でも最も危険なものがこの「ゴーストギア」なのです。

海洋生物へのダメージだけでなく、漁網が覆い被さることによるサンゴや海藻群落などへの悪影響、プラスチックに含まれる化学物質による生物・水質の汚染などの海洋生態系へのダメージ、本来あるべき漁獲の減少、景観の悪化による観光業へ影響などの社会・経済的ダメージもあります。

  

PADIとAWAREは「PADIオーシャンアクションの10年」を掲げており、このプロジェクトはその中の「海のごみを削減する」、「サンゴ礁の回復と復元の促進」などのテーマにも該当します。
持続可能な開発目標(SDGs)を達成するための「行動の10年」を求める国連の普遍的な呼びかけに参加し、特にSDG14「海の豊かさを守ろう」の実現を支援しています。

また、本国のPADI AWAREは、ゴーストギアによる世界的な問題を解決するための取り組み「グローバル・ゴーストギア・イニシアチブ(Global Ghost Gear Initiative/GGGI)」にも参加しており、ゴーストギアの量を減らし、リサイクルし、絡み合った動物を救出するために活動しています。

漁網の回収システムを構築をすることが目標

そこでAWARE(日本)は三井物産ケミカル(株)と協力し、漁網が海に投棄されないように適正な回収方法を提案し、さらに使用済み漁網を資源として回収し、より付加価値の高い製品にアップサイクルする仕組みを構築することを2020年より進めてきました。地元のPADIメンバー、自治体、漁協と協働し、「ゴーストギア」発生予防策に取り組み、適正な漁具の管理を促しつつ、使用済みとなった漁網の回収システムを構築をすることが目標です。

プロジェクトの課題

プロジェクトの課題のひとつとして、対象の漁網や仕掛けはナイロン製のものに限る、ということがあります。他にもポリエステル製やポリエチレン製の漁網もありますが、強度や価格といったリサイクルという観点でみるとナイロンが適しているのです。
さらには、定期的な回収頻度と一定量が必要なこと、リサイクルする網(釣り糸)の品質も必要です。汚れが限りなく少ないもので、釣り針やサルカンなどの金属がついていないことなども条件です。

  

地元の漁師とPADIメンバーとの連携静岡県の下田・稲取地区で行なわれているキンメダイ漁でスタート

各地域の漁師さんへの聞き取り調査を続けた結果、キンメダイ漁の仕掛け(立て縄・はえ縄)は、その多くが使い捨てで、回収量・頻度の見込みもあることがわかりました。どのくらいの回収量を見込めるか、回収できる網(釣り糸)の現状確認、リサイクル業者への具体的な搬入(量、頻度、状態、方法)などの検討を続けていきました。

プロジェクトは、1.漁網の回収、2.リサイクル業者に入れる前の準備、3.リサイクル業者へ納品、4.リサイクル業者で網からリサイクルした素材作成、5.製品化・販売、という流れで進むことを想定しています。まずは1.と2.の部分で、伊豆漁協の漁師さんと地元のPADIメンバーに協力をしていただくことになりました。

リサイクル素材として業者に納入するには、針やサルカンなどの金属部品をすべて取ってナイロン100%にしなくてはなりません。そこで、まずは伊豆漁協の漁師さんにも針やサルカンを取ってもらうようにご協力の依頼。しかし、現状での除去率は良くて8割程度なので、残りを静岡県・稲取にあるPADI5スターIDリゾート「稲取マリンスポーツセンター」さんの協力を得て、針とサルカンの除去をしていただくこととなりました。
稲取マリンスポーツセンター」さんにご協力いただいたのは、もちろん地元ということもありますが、水中のごみ拾いダイビングを定期的に行なっており、環境保護活動にも前向きなPADIショップであることも大きな要因です。

地元漁師と地元PADIメンバーとの取り組みがスタート!

2022年11月、網の回収と針やサルカンの除去をするトライアルを繰り返し、定期的に実施できる目途がつきました。今後は伊豆漁協の漁師さんとPADI5スターIDリゾート「稲取マリンスポーツセンター」さんとで地元の取り組みとして継続していく予定です。

AWARE(日本)と三井物産ケミカル(株)は引き続き、他エリアでの同様の実施を目指して協力者を探して活動を広げること、リサイクル素材からの製品化を進めることを目標に、今後も取り組みを進めてまいります。

ご協力いただいた稲取マリンスポーツセンターのスタッフとダイバーの皆さん

協働企業・団体:

活動コーディネート:三井物産ケミカル(株)PADI AWARE(日本)

現地協力:稲取マリンスポーツセンタースパ・リゾート竜宮の使い/伊豆漁協 下田本所稲取支所

活動アドバイス:静岡県漁業協同組合連合会

リサイクル:(株)リファインバース

  

  

  

  

  

 

 

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