PADIは、環境保全に対する責任をもった関わり、青い地球を探索して保護する10億人のトーチベアラーを生み出すという使命、海洋保全活動のための大胆な完成予想図を掲げ、冒険と海を守るために、世界中の人々を招待しています。気候変動の影響が陸上と水中の両方で世界中に現れている今、海はこれまで以上にPADIダイバーの世界的なコミュニティによる支援を必要としています。
気候変動がどのように海に悪影響を及ぼしているかを理解し、気候変動の影響を遅らせ、解決策を見出すために個人的・集団的な行動をとることが不可欠です。
気候変動が海に与える影響とは?
海水温の上昇
温室効果ガス排出による大気中の余分な熱の大部分を海が吸収するため、世界の海面水温は上昇しています。アメリカ海洋大気庁(NOAA)のデータによると、過去100年間で世界の平均海面水温は約1.3℃上昇したとされています。日本近海における、2020年までのおよそ100年間にわたる海域平均海面水温(年平均)の上昇率は+1.16℃です。 海洋生態系への不可逆的なダメージを防ぐためには、世界平均気温の上昇を産業革命以前の水準から2℃未満に抑えることが極めて重要です。
サンゴの白化現象
水温が1℃でも高くなると、サンゴと共生関係にある褐虫藻(かっちゅうそう)がサンゴから抜けだし、白化(はっか)現象と呼ばれるサンゴの骨格が透けて白く見える状態になることがあります。サンゴはストレスを受け続けると、やがて死んでしまいます。サンゴは熱帯の海洋生態系の基盤であるため、サンゴの白化は、サンゴ礁に直接依存している 25% の海洋生物に大きな影響を及ぼします。近年、ハワイ、カリブ海、グレートバリアリーフなど、世界中のサンゴ礁が大量の白化現象に見舞われています。
グーグルアースのプロジェクト「オーシャン・エージェンシー」で360°の水中映像を見たり、沖縄・恩納村でのサンゴ保全活動「チーム美らサンゴ」のサンゴ植え付けイベントに参加したりして、サンゴの白化現象について考えてみてはいかがでしょうか。
海面上昇
海水温の上昇により、世界の海面水位が上昇しています。これは、基本的に水は温まると膨張するためです。海面上昇は、極域の氷河や氷床の融解による水とあいまって、世界中の沿岸の海洋生態系にさまざまな悪影響を与えています。NOAAによると、1880年以降、世界の平均海面は約21.5センチ上昇し、そのうち約3分の1はこの20年間に上昇したといいます。
JACCA(全国地球温暖化防止活動推進センター)によると、日本では1m海面が上昇すると、日本全国の砂浜の9割以上が失われると予測されています。40cmの上昇で、沖に出ている120m分の干潟が消滅し、そこをすみかにしている生物の産卵や子育て、またそこを餌場にしている渡り鳥にも影響がでると言われています。
海洋酸性化
大気中に放出されるCO2の約25%を海洋が吸収することにより、海洋の化学的性質が変化し、酸性化が進んでいます。牡蠣、サンゴ、ウニ、プランクトンなど、殻や炭酸カルシウム構造を作る海洋生物にとって、酸性化が進むと、カルシウムイオンと結合できる炭酸イオンの濃度が減少し、生き物たちにとっては成長に必要な炭酸カルシウムを作りにくくなります。過去200年の間に、海水は30%酸性化し、過去5千万年の海洋化学の変化の中で最も速いスピードで変化しています(参考:海から貝が消える?海洋酸性化の危機/地球環境研究センター)。
どうしたらよいか?
カーボンフットプリントの削減
カーボンフットプリントとは、原材料の調達から廃棄に至るまでの環境負荷をCO2(二酸化炭素)の量で表したものです。
交通手段から家庭の電力まで、消費するエネルギーから発生するCO2の量を削減する方法はたくさんあります。車や飛行機を使う量を減らすと、海にかなりの好影響を与えることができます。公共交通機関の利用、相乗り、電気自動車、自転車、徒歩などが有効な手段です。飛行機を利用する場合は、The Ocean Foundation’s Carbon Footprint Calculator(英語)を使って、排出量の相殺を検討しましょう。さらに、可能な限り、太陽光や風力などの再生可能エネルギーに切り替えることも検討しましょう。照明を消す、機器のプラグを抜く、エアコンや暖房をの使用を減らす、屋外で洗濯物を干すなどすれば、家庭で消費するエネルギー量を大幅に減らすことができます。
何かを植える
サンゴを植える、マングローブを植える、アマモを植える。ダイバーとしてのボランティア、海岸からの支援、金銭的な支援など、気候変動の影響を緩和し、解決するために何かを植えるということに関して、世界には驚くほどさまざまな組織があります。サンゴをサンゴ礁に植えることで、サンゴの生態系を回復させることができます。マングローブやアマモは膨大な量の炭素を貯蔵しており、何かを植えるという活動によってこれらを再生できれば、温暖化の原因となる余分なCO2を吸収することができます。海草の再生に参加しましょう。
日本では、沖縄・恩納村でサンゴの保全活動を行なっている「チーム美らサンゴ」にPADIとAWAREも協力しています。ぜひ植え付けイベントへの参加も検討してみてください(チーム美らサンゴの植え付け・苗作り活動に参加する方法はこちら)。
植物性食品をより多く摂る
気候変動と戦うために個人や組織・グループ単位でのエネルギー消費を減らすことを考えるとき、私たちの食生活にも目を向けることは非常に重要です。2019年の国連の報告書によると、畜産は環境に大きなストレスを与えており、より植物に近い食事をすることは、気候変動に対処する大きな機会を提供するとされています。We Are the Weather、Meat Free Monday、Veganuaryなど、参考になるリソース(左記リンクは英語)がたくさんあるので、普段の食事から肉や乳製品を減らし、代わりに果物、野菜、穀物、豆類でお皿を満たすことを検討してみてはいかがでしょうか。
質の高い製品を地元で買う
気候変動の観点からは、世界的な海運業(航空・船舶)は大気中のCO2排出量増加に大きく寄与しています。可能な限り地元で生産された製品を購入することで、この化石燃料を燃やす産業への依存を減らすことができます。地元で購入しない場合は、長持ちする高品質な製品に購買力を集中させ、そのような製品を繰り返し作って出荷する必要性を減らすことができます。
情報を共有する
海への愛、気候変動の影響に関する知識、解決策の一環として行なっている(あるいは近々行なう予定の)行動を、どんな形であれ、家族や友人、そしてSNSで交流がある人たちなどのネットワークにも伝えましょう。コミュニティ、教育、支援活動は、気候変動の危機を食い止め、次の世代に健全な海を残すための極めて重要な要素なのです。
PADIは、個人と組織やグループの行動によって気候変動の流れを変えることができると信じています。そして海のために、そうしなければなりません。気候変動が海洋に及ぼす悪影響は明らかです。幸いなことに、私たち全員が貢献できる方法はたくさんあり、明確です。10億人のトーチベアラーを束ねるというPADIのミッションに参加し、冒険を求め、海を救うためにぜひ皆さんの力を貸してください。