CPR(心肺蘇生法)をうまくできるか不安だったり、患者を傷つけてしまうのではないかと心配したり、人工呼吸に抵抗を感じたりするのが、CPRを学ばない理由の一つではないでしょうか?でも、もし自分が倒れて助けが必要なとき、周りにCPRを学んだ人がいてほしいと思いますよね。
この記事では、CPRに関するよくある誤解を解消し、この命を救うスキルを学ぶことがなぜ大切なのかをお話しします。
まず、幾つかの驚くべきかつ残念な統計データを見てみましょう。CPRは誰もが習得すべきスキルですが…
- イギリスの成人の3分の1近くがCPRに慣れていない
- CPRを知っていると回答したアメリカ人はわずか54%
- ドイツでは、16%が一度もトレーニングを受けたことがなく、47%が20年以上前に講習を受けて、そこからアップデートしていない
- オーストラリアの成人の3分の2しかCPRのトレーニングを受けていない
誤解 #1 – 知らない人に「口対口」の人工呼吸を行うことになる
統計によると、心停止が起きた際、見知らぬ人よりも知っている人にCPRを行う可能性が高いです。実際、心停止の約80%は家庭内で発生しています。
さらに、国際蘇生連絡協議会(ILCOR)のガイドラインでは、人工呼吸よりも胸部圧迫を優先することが推奨されています。実際に研究により、胸部圧迫のみでも効果があることが明らかにされています。これを「ハンズオンリーCPR」と呼びます。しかし、人工呼吸が大いに生存率を高める可能性がある2つの状況があります。それは、患者が子供である場合と溺水事故による救助の場合です。
エマージェンシー・ファースト・レスポンス©(EFR)クラスでは、マネキンを使って口対口の人工呼吸を練習しますが、人工呼吸を安全かつ効果的に行うために、バリア(ポケットマスク)を使用する方法も学びます。
誤解 #2 – CPRは難しい
CPRは、十分なトレーニングを行えば簡単に習得することができます。どれくらい簡単かというと、最近の研究では、9歳から18歳の子供の86%が実践的なトレーニングを受けた後に正しくCPRを行えることがわかりました。
手順自体は比較的簡単ですが、動画を見ただけでは、正しいCPRを身に付けることはできません。実践的なクラスでは、CPRトレーニング用のマネキンを使って、効果的な胸部圧迫を行うためにどこをどのくらいの強さで押す必要があるのかを学びます。
「万が一の事態の時に、間違ったことをしたらどうしよう」と不安を感じてCPRを学ぶことをためらっている方もいるかもしれませんが、現場に居合わせた人間が犯す唯一の間違いは、何もしないことです。
誤解 #3 – CPRを行っても効果がない
CPRとはCardiopulmonary Resuscitationの略で、具体的には反応のない患者に対して脳に血液を送る行為を指します。心臓が停止すると、脳の組織は3分以内に死んでしまいます。しかし、救急車が到着するまでの平均時間は7分以上かかります。
各国の平均時間
- イギリス: 8分22秒
- アメリカ: 7~8分
- 日本:10.3 分
秒単位で命がかかる状況では、CPRを行うことで、場合によっては患者の生存率を大きく変えることができるのです。
誤解 #4 – 友人や家族は健康だから、CPRを学ぶ必要はない
CPRは、呼吸ができず心拍がない人の命を救うことができます。呼吸ができず心拍がない状態に陥ってしまう原因としては、窒息、心停止、溺水、感電、心臓発作などがあります。たとえあなたやあなたの大切な人が健康であっても、事故はいつ起こるかわかりません。
エマージェンシー・ファースト・レスポンス®のコースでは、次のことを学びます:
- 患者の状態を評価し、CPRが必要かどうかを判断する
- 緊急時に冷静に対応する
- 自動体外式除細動器(AED)を使用する
誤解 #5 – オンラインの動画を見るだけでCPRを学べる
CPRを正しく学ぶ唯一の方法は、実践的なスキルの練習を通じてです。命を救う方法を本当に学びたいのであれば、経験豊富なEFRインストラクターが指導する対面のクラスに参加することです。
EFRコースでは、緊急時に対応する自信とスキルを身につけることができます。実際のシナリオを練習し、質問に答えたり、不安に感じることや疑問にインストラクターが答えてくれます。お近くのPADIダイブセンターまたはダイブリゾートで講習を受けることができます。
誤解 #6 – 自分が患者の状態を悪化させてしまうかもしれない
CPRについての大きな誤解の一つは、自分がなんらかの処置を行うことによって患者の状態を悪化させてしまうかもしれないという心配です。忘れてはならないのは、あなたは命を救う行動をしているということです。
受けたトレーニングの範囲内のケアのみ施し、CPRを行うときは、まず気道や呼吸のチェックを行います。呼吸がないことを確認し、患者が反応しないと判断した後に、この患者がこれ以上に最悪な状況になることはないですよね。
この記事が、あなたがCPRを学ぶきっかけとなることを願っています。ぜひ友人や家族、近隣の方々を巻き込んでみてください。CPRを学ぶことで、あなた自身が危機的な状況に直面したときに大切な人の命を救う力を持つことができます。また、地域社会全体がCPRに対する理解とスキルを高めることで、より安全な環境を作ることができます。