こんにちは!PADI AmbassaDiverの東真七水(アズママナミ)です。

私は沖縄本島を拠点に、「スキューバダイビング」と「ゴミ拾い」を掛け合わせた「水中ゴミ拾い」を新たなマリンアクティビティとして広める活動をしています。

diver posing with trash collected from underwater, okinawa, japan

実は、水中ゴミ拾いは10年以上前から存在しています。2014年にDive Against Debrisという水中ゴミ拾いのノウハウを学ぶPADI AWAREのスペシャリティーコースが登場し、少しずつダイバー間で広まってきました。

そんな水中ゴミ拾いは、一般的に「ただ海底に沈んだゴミを拾うだけ」と思われがちですが、実は守るべき様々なルールと、特有の注意事項があります。

今回は水中ゴミ拾いの奥深さ、 そして安全に楽しく実施するため、押さえるべきポイントについて書かせて頂きます。

水中ゴミ拾いとファンダイビングの大きな違い

「危機管理」と「チームワーク」

ファンダイビングでは水中のものには触れないことが鉄則ですが、水中ゴミ拾いは水中でゴミに触れることを前提としたアクティビティ。

そして水中ゴミ拾いでは、基本姿勢が前を見るのでなく、海底に沈んだゴミを探すために、下を見て泳ぐという特徴があります。

そういった理由から、ファンダイビングよりも「様々な危険」を伴いやすくなります。

また水中ゴミ拾いはとにかく作業が多く、大変です。例えば、うねりがあると水中ゴミ袋を上手く開けられず、ゴミがなかなか入らなかったり、珊瑚に絡まった釣り糸の回収ではハサミを扱いつつ、珊瑚が折れないように細心の注意を払いながら取り除き、またマイ器材に釣り糸が絡まらないように注意を払わなければなりません。だからこそ、バディで協力し合う「チームワーク」が不可欠です。

この2点を念頭におきながら、以下の具体的なポイントについてご覧ください!


水中ゴミ拾いに潜む危険

先述の通り、水中ゴミ拾いは終始下を見るという特徴を持ちます。

加えて、「ゴミを拾う」という明確な目的を持ち潜るため、良くも悪くも集中しやすいアクティビティです。

そこから起こり得るのが、

ロスト ②エア切れ ③危険生物との接触 です。

ロスト

透視度にもよりますが、それぞれがゴミを拾っている間に別方向に進んで、いつの間にかお互いを見失ってしまいます。そのためゴミを探すこと、拾うことに熱中しすぎないよう意識することが大切。一人一人がゴミを拾いながらも、バディやガイドの位置を確認するようにしましょう。

エア切れ

うっかりエアの確認をし忘れることもしばしば。特にゴミの多いエリアで実施する場合、永遠に拾い続けてしまい、失念します。バディ同士でチェックしたり、自分で確認する癖を普段から身につけておきましょう。

危険生物との接触

水中のゴミはわかりやすく姿が見えているものばかりでなく、岩と岩の隙間に挟まっていることもあります。そんなゴミの陰で、ウツボやウミヘビが隠れている可能性も十分にあるので、「見つけた!」とすぐに手を伸ばさず、必ず周囲の安全確認をしてから拾いましょう。また、ゴミを拾っている間に知らず知らず生物の縄張りに入ってしまうこともあるので、潜るポイントの危険生物についてよく予習しておきましょう。

気をつけていないと非常に視野が狭くなり、そこから大きな事故に繋がる可能性を秘めているのが水中ゴミ拾い。単独行動をせず、周囲をよく見て、安全第一で取り組みしましょう。


残すべきゴミの種類

水中のゴミは回収して良いものと、安全に回収できるか判断し、正しく対応しなければならないものがあります。

その特徴は、

①尖っているもの ②重たいもの ③長い物 の3種類です。

尖っているもの

例えば、釣り針や割れたガラスの破片など。これらは怪我や器材の破損に繋がる可能性があります。私も水中ゴミ拾いを始めた当初、ビーチエントリーで破れた金網を回収したのですが、エキジットの際に海が荒れていて、バランスを崩したタイミングで太ももに刺さってしまった経験があります。どうしても回収したいという方は、シリコン素材の袋、瓶やペットボトルに入れるなどの方法で対応できるものもありますが、確実に安全と言える場合に限ります。

重たいもの

PADI Dive Against Debrisのテキストでは、4kg以上のものは運ばないというルールがあります。また4kg未満であっても、BCDに空気をたくさん入れないと持ち運べないようなゴミは置いて帰ります。理由としてはオーバーウェイトとなることで中性浮力が取りづらくなること、エア消費が早くなること、ゴミ袋が重さで破れたり、うっかり手放してしまった際に急浮上につながることなどが挙げられます。そもそも4kg以上のものはリフトバッグを用いることが推奨されるので、通常の水中ゴミ拾いでは扱わないようにしましょう。

長いもの

釣り糸やロープは水中によくあるゴミの1つですが、回収の難易度はかなり高いです。器材に絡まりやすく、ハサミやナイフを扱うことでの危険も発生します。そのため十分なダイビング経験があることと、バディで役割分担をすることがお勧めです。私が運営する「水中ゴミ拾い専門店」Dr.blueでは、釣り糸を巻き取る係、ハサミ係などに分けて安全に回収しますが、まだスキルが未熟なダイバーが参加する場合、釣り糸には一切触れないというルールを設けて実施することもあります。

このように、ポイントや海況、ダイバーのスキルに応じて臨機応変に判断し、無理はしないでおきましょう。また上記以外のゴミであっても、危険と判断されるものは触れないように徹底しましょう。


水中環境のために配慮すべきこと

せっかくゴミ拾いをするのなら、海に優しく実施したいと思うもの。

そのために気を付けるべき、水中ゴミ拾いの基本です。

①浮力コントロール

水底で作業することが多い水中ゴミ拾いでは、思わず着底してしまったり、砂の巻き上げが起こりやすいです。精度の高い浮力コントロールが求められるので、まずは適正ウェイトで潜りましょう。それでも苦手な方はPeak Performance Bouyancy スペシャルティ・コースなど講習で集中トレーニングすることも可能です。あとは、とにかく上達するよう日々意識しながら潜りましょう!

②ゴミに住む生き物たちの確認

ゴミの中を覗くと生き物が住んでいることがあるので、ゴミ袋にゴミを前に必ず中を確認します。特に空き缶やペットボトルなどの飲料ボトル、お菓子の袋の中でよく見かける印象です。もしも生き物がいる場合は、命を優先するのか、ゴミの回収を優先するのか、ダイバーそれぞれが判断します。くれぐれもゴミの中に生き物が残るまま、回収・破棄しないように1つ1つの確認を徹底しましょう。


私のおすすめの対策

水中ゴミ拾いでは特にロストが起こりやすいので、ライトと鳴り物を持っていくことを推奨しています。

①ライト

万が一水中でバディやガイドの姿が見えなくなっても、点灯することでお互いの位置が分かり、合流できる可能性を高めます。特に透視度が優れないポイントでは活躍するので、ロスト防止に大きく貢献します。またライトで水底を照らし出すことで、小さなゴミも見えやすくなるというメリットもあります。

②鳴り物

水中ゴミ拾いでは、スキルだけでなく、性格の違いも顕著に出やすい傾向があります。例えば、とにかく広範囲を探して大きなゴミをたくさん回収したい方もいれば、岩の下や隙間など確認して、細かいものまで丁寧に拾われたい方もいます。そうすると、徐々に2名の間に大きな距離ができてしまいますが、音で合図することで一斉に注意をひき、「一旦集合!」など、いざという時のコミュニケーションを容易にします。回収が大変なゴミを発見し、バディの協力を仰ぎたい場合にも、鳴り物が活躍します。

あとは、写真や動画を用いながら、とにかく事前のブリーフィングでしっかりと注意事項を共有することが大切です。また、その中で私は、独自に作成した「水中ゴミ拾い専用ハンドシグナル」も共有しています。「水中ゴミ袋を貸してください」「危ない」「このゴミ置いておいて」などを含めた、計6種類あります。YOUTUBEにも動画を上げているので、よかったら参考にしてみてくださいね!


おわりに

今回はこれまでの私の水中ゴミ拾い経験と、Dive Against Debrisの講習で用いるマニュアルを参考に書かせて頂きましたが、上記はそのごく一部です。より詳しく学ばれたい方、本格的にゴミ拾いをされたい方は、スペシャルティ・コースの受講をお勧めいたします。

講習では、専門知識を学び、海洋ゴミの回収をすることはもちろん、その日に回収したゴミのデータを取り、詳細をPADI AWAREに提出するところまで行います。ダイバーとして水中ゴミの研究に貢献できる、唯一の市民科学プログラムとなっています。

水中ゴミ拾いは、比較的新しいマリンアクティビティ。まだまだ安全管理における工夫ができたり、知られざる魅力もあると思っています。今後もDr.blueとしてさらに模索していきたいですし、みんなで情報を共有しながら活動をブラッシュアップし、水中ゴミ拾いをより安全で、海に優しく、楽しい形で広がればいいなと思います♪


最後までお読み頂きありがとうございました。

来月は、PADI AmbassaDiver佐藤寛志さんの記事が公開されるので、お楽しみに!次回もどうぞよろしくお願いします。

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