ダイビング器材の選び方>BCDの選び方
BCDはシリンダーを背負うため、そして水中で浮力をコントロールするために欠かせない器材です。体に合わないBCDは、潜降時や水中でのバランスを崩しやすく、中性浮力をとるうえで障害となる可能性もあります。自分の体にぴったりとフィットしたBCDを選んで、水中での活動をより安全に&快適に楽しみましょう。

BCDの各部説明

①ショルダーストラップ
ここを緩めたり縮めたりすることでBCD のサイズが調節できます。このタイプはウエットスーツ、ドライスーツどちらにもフィット。バックルを外すこともでき、BCDを脱ぐのに便利です。
②パワーインフレーター
これでBCD に空気を入れたり出したりすることができます。インフレーター(給気)ボタンを押す、またはデフレーター(排気)ボタンを押しながら息を吹き込むことで、中に空気が入ります。セッティングのときに中圧ホースをつなぎ忘れることが多いので注意。
③ブラダー
空気が入る袋、浮力体のこと。BCDはこれに空気を入れたり、抜いたりすることで浮力をコントロールします。バックフロートタイプではブラダーの形状により、バランスや安定感も変わってきます。
④カマーバンド
おなかの前でとめるベルト。しっかりととめることで水中での安定感が増します。
⑤Dリング
オクトパスホルダーや水中ライト、水中ノートなどのアクセサリー類をつけておくことができ、とても便利です。
⑥クイックダンプバルブ(強制排気弁)
ここを開くことで、BCD の中の空気を一気に排出させることが可能。水面からの潜降開始時や、 急浮上し始めたときなど便利。BCD によって開き方は、パワーインフレーターを下方向に引っ張るか、ひもを引っ張るかなど異なります。
⑦クロッチストラップ
バックフロートタイプにある、股のストラップのこと。バックプレートと体をしっかりフィットさせて固定します。
BCDを選ぶ際のポイント
★ダイビングの目的に応じてタイプを選択
BCDには「ジャケットタイプ」、「ショルダーストラップ(フロントアジャスタブル)タイプ」、「バックフロートタイプ」の3種類のタイプがあります。
3つのタイプの大きな違いは、浮力の位置。
ジャケットタイプは、ジャケットの全体が空気袋(ブラダー)になっているので背中から肩や胸部、腹部に空気(浮力)が入ります。ショルダーストラップは、肩の部分がベルトになっているので、それ以外の部分である背中と腹部に空気が入ります。バックフロートの空気袋は背部にあり、浮力は背中からお尻にかけて位置します。空気が入り膨らむと羽根のように見えることからウイングと呼ばれています。
この浮力の位置の違いによって、水中・水面でのバランスや安定性、姿勢の取り方が異なります。
どのタイプのBCDを選ぶかは、自分がどのようなダイビングを楽しみたいかによっても変わってきます。例えば、肩のベルトで簡単にサイズ調整ができ、腹部のポケットがあるなど使いやすさや便利さを求める人はショルダーストラップ(フロントアジャスタブル)タイプがおすすめですし、水中での動きやすさ、バランスや水平姿勢の取りやすさを求める人はバックフロートタイプ、リゾートでのダイビングがメインでマイ器材を持参する人には、軽量で持ち運びのしやすいタイプなど、ダイビングスタイルや目的によって適したBCDのタイプは異なります。
★体にぴったりとフィットすることが大切
BCDを選ぶ際に最も重視したいのは、体にぴったりフィットするかどうか。体のサイズに合っていないブカブカのBCDだと、陸上ではシリンダーの重みで背中が引っ張られて腰を痛める可能性がありますし、水中ではシリンダーがグラグラと動いてしまい、バランスが取れない原因となります。潜降が苦手な人や、水中で水平姿勢や中性浮力を取るのが苦手な人は、BCDのサイズが大きすぎることが原因ということも。
一方できつ過ぎるBCDも、水中で動きにくく、ストレスを感じたり、体の締め付けで気持ちが悪くなる原因にもなります。またBCDのタイプによって体との固定箇所やストラップでの調整が異なるので、体にしっかりとフィットして快適にダイビングが楽しめるBCDを選ぶようにしましょう。
以下にタイプ別のおすすめBCDを挙げていますので、ぜひ参考にしてみてください。
タイプ別おすすめBCD
ウエットスーツでもドライスーツでも使いたい人は・・・ストラップでサイズの変更ができるショルダーストラップタイプのBCD
👉ポイント
- ショルダーストラップでサイズの調節が簡単にできる。
- バックルを外せばBCDを脱ぐのも容易。
- BCDに空気を入れても体への圧迫感が少ない。
- 腹部にポケットがあり便利。
⚠️留意点
- ショルダーストラップのねじれに注意

水面や水中で自由な姿勢をとりやすくしたい人は・・・ジャケットタイプのBCD
👉ポイント
- 上半身全体を包み込むように空気が入るため、水中で自由な姿勢をとりやすい。
- 水面で体を直立させやすい。
- 自分の体に合ったサイズを選べばフィット感が抜群。
⚠️留意点
- サイズの調整ができないため、ぴったりフィットしていないと、非常に使いにくく、ウエットスーツとドライスーツの使いまわしが難しい場合も。
- BCDに空気を多く入れると体に圧迫感があります。

水中で水平姿勢を安定させたい人は・・・バックフロートタイプのBCD
👉ポイント
- 背面の浮力がシリンダーやウエイトの重心を安定させるので水平姿勢がとりやすく、水の抵抗を少なくして泳げます。
- 体の前面があいているため動きやすく、体を圧迫しません。
- 肩と腰、股の3点で固定し、全てのベルトが調整できるので体にフィットしやすい。
- パーツを替えてカスタマイズできる。
⚠️留意点
- ポケットが付いておらず、物を携行できない。ポケットを追加するには別売りで購入する必要がある。
- ウエットスーツとドライスーツの切り替え時など、体にぴったりフィットさせるためには全ベルトの微調整が必要となり少し面倒。

ウエイトベルトによる腰への負担を減らしたい人は・・・BCDにウエイトを分散できるタイプ
👉ポイント
- ウエイトベルトによる腰への負担や圧迫感を減らすことができます。
- ウエイトが分散されるので、水中でのバランスがとりやすい。
- 緊急時にワンタッチで簡単にウエイトをリリースできるものも。
⚠️留意点
- ウエイトの装着後、陸上での移動や背負う時、BCDが重くなります。

女性により使いやすいBCDを求める人は・・・女性用にデザインされたBCD
👉ポイント
- 小柄な方にもぴったりフィット。
- 胸元や腰回りへの圧迫感や違和感を防ぐ工夫も。
- 力の弱い方でもシリンダーのバックルが締めやすい。

ダイビング旅行にも自分のBCDを持っていきたい人は・・・軽量化されて持ち運びしやすいBCD
👉ポイント
- 飛行機などの重量制限も気になりません。
- 折りたたんだり丸めたりしてコンパクトにまとめられるものも。
- 価格もリーズナブル。
⚠️留意点
- 機能はシンプルなものが多いです。

BCDを使う際のポイント
1. いざというときに素早く操作できるよう確認しておく
BCDはダイビングを安全に楽しむうえで、なくてはならない器材です。水面でしっかりと浮力を確保できるだけでなく、水中で浮力をコントロールするうえでも欠かせません。そのため、給気や排気、BCDの脱着などの操作が、どんな状況でもきちんとできるように確認しておくことが大切。例えば、急浮上しそうになったときに、素早く排気ボタンを押してBCD内部の空気を排出したり、水中で何かに絡まったときに脱着してほどいたり。ダイビングの度に同じモデルのBCDを使い続けて操作に慣れておくと、大きなトラブルを未然に防ぎやすくなります。
2.中圧ホースのつけ忘れに注意
BCDに関する失敗で最も多いのが、「インフレーターに中圧ホースをつけ忘れる」というもの。きちんと中圧ホースがつけられていないと、BCDの中に空気を入れることができません。しっかりとカチッと音がするまで、押し込んではめるようにしましょう。なお、インフレーターに中圧ホースをつける前にシリンダーのバルブを開けてしまうと、ホース内に空気の圧力がかかるため、インフレーターにつけるのが大変になります。きちんとインフレーターに中圧ホースがついているのを確認してから、シリンダーのバルブを開きましょう。
3.BCDのポケットにウエイトを入れるのはあり?
ウエイトベルトではなく、BCDのポケットにウエイトを入れる人がいますが、これはNG。一般的なBCDのポケットは、ウエイトを入れることを想定していないため、生地を傷つける可能性があります。また、いざというときにすぐに取り出すことができませんし、水中で気づかないうちにウエイトがポケットから落ちてしまうこともあるなど、安全性のうえでも問題があります。ウエイトを入れるように設計されているBCDや、ウエイトベストなどを利用することをおすすめします。
4.背負う際は無理をせず、バディと協力を
ひとりで颯爽とBCDを背負うインストラクター/ガイドやベテランダイバーの姿は格好よく見えますが、くれぐれも無理は禁物。シリンダーがついた重いBCDを無理に背負おうとすると腰を痛めたり、ストラップ部分が絡まってきちんと装着できないことも。バディと協力してお互いにBCDを装着し、ストラップが絡まっていないか、ホースをつけ忘れていないかなど、チェックし合うことがおすすめです。
BCDのお手入れポイント
使用後は排気ボタンを押しながらBCD の内部にも真水を入れて、海水を洗い流します。洗ったらしっかりと水を排出して、中に空気を入れて直射日光の当たらない場所で乾燥させましょう。中に水が残ったままだと、腐って悪臭を放つこともあるので注意。排気弁やインフレーターのボタン、中圧ホースとの接続部は特にしっかりと真水で洗うことをおすすめします。収納時は若干空気を入れておくと◎。レギュレーターと同じく、定期的にオーバーホールに出すこともお忘れなく。
協力:GD OUTDOOR(BEUCHAT、XDEEP)