CPR(心肺蘇生法)は、心停止や呼吸不全が起きた際に、脳やその他の重要な臓器への血液と酸素の供給を再開させるため技術で、正しく実施すれば、命を救う重要な役割を果たすことができます。

ほとんどの場合、CPRは胸骨圧迫と人工呼吸を組み合わせて行います。この組み合わせは、新鮮な酸素を気道に取り入れ、酸素を含んだ血液の循環を維持し(心停止により失われたものを補う)、体全体に酸素を供給しようとするものです。重要なのは、CPRを行う目的はすべての種類で共通していますが、望ましい結果を得るための技術は、患者によって異なることです。

この記事では、さまざまな種類のCPRの違いや、それぞれがどのような対象者(または動物)に適用できるかを見ていきます。

CPRが必要とされる緊急事態で最初に行うべきステップは以下の通りです:

  1. 現場の確認 – 自分と患者の周囲が安全であることを確認します。
  2. 助けを呼ぶ – 追加の援助や専門的な医療支援を要請します。
  3. 正常な呼吸の確認 – CPRが必要かどうかを判断するために、呼吸が正常でないことを確認します。

someone performing cpr on a dummy shutterstock types of cpr

1. 成人のCPR(8歳以上)

成人向けのCPRは、いわゆる「典型的な」CPRであり、CPRについて考えたときに多くの人がイメージする技術です。この技術は、人工呼吸胸骨圧迫という2つの要素を組み合わせたものです。

このタイプのCPRでは、以下のサイクルを行います:

  • 胸骨圧迫(30回)腕を伸ばし肘をロックし、そして手を重ね合わせて、患者の胸の中央に体重をかけて、手のひらの付け根のほうに力が加わるよう意識しながら、最大2.4インチ(6センチメートル)深さまで押し下げます。1分間に100〜120回の速さで30回圧迫を行います。
  • 人工呼吸(2回)30回の胸骨圧迫が終わったら、2回の人工呼吸を行います。効果的な空気の流れを確保するために、患者の頭を後ろに傾けて気道を完全に開き、息を吹き込む際にしっかりと鼻をつまみます。

1.5 成人向けのハンズオンリーCPR

感染症のリスクを心配する場合や、バリアがない場合などでは、人工呼吸を行うことができないことがあります。このような場合、人工呼吸を省略して胸骨圧迫だけを継続的に行います。

  • 胸骨圧迫 -腕を伸ばし肘をロックし、そして手を重ね合わせて、患者の胸の中央に体重をかけて、手のひら付け根のほうに力が加わるよう意識しながら、最大2.4インチ(6センチメートル)深さまで押し下げます。1分間に100〜120回の速さで行います。

注:「ハンズオンリーCPR」は、人工呼吸を省略して胸骨圧迫のみを行うことで、成人のみならずすべてのCPRタイプに適用できます。


someone performing cpr on a child dummy shutterstock

2. 小児向けのCPR(1歳以上~8歳未満)

小児に対するCPRは、成人向けのCPRと比較して、胸骨圧迫の深さについて調整が必要です。小児向けのCPRでは、以下のサイクルを行います。

  • 胸骨圧迫(30回)腕を伸ばし肘をロックし、片手のみで患者の胸の中央に体重をかけて、最大2インチ(5センチメートル)深さまで押し下げます。小さな子供の場合、片手で胸骨圧迫を行うことができます。もし胸骨を子供の胸の約1/3の深さ、または少なくとも2インチ(5センチメートル)押し下げられない場合は、成人CPRのように両手を使って圧迫を行います。1分間に100〜120回の速さで30回圧迫を行います。
  • 人工呼吸(2回)30回の胸骨圧迫が終わったら、2回の人工呼吸を行います。効果的な空気の流れを確保するために、患者の頭を後ろに傾けて気道を完全に開き、息を吹き込む際に鼻をつまみます。

この技術は、1歳以上の子供から8歳に満たない年齢層に適用されます。


someone performing infant cpr with two fingers shutterstock types of cpr

3. 乳児向けのCPR

乳児(1歳未満)に対するCPRは、成人や小児に対するCPRよりも大きな違いがあります。乳児は体が非常にデリケートであるため、CPRを行う際にはより慎重な対応が求められます。

乳児に対しては、手を組む代わりに、下部の胸骨に中指と人差し指の2本の指を置いて行います。以下のサイクルを行います:

  • 胸骨圧迫(30回)2本の指を使い、最大1.5インチ(4センチメートル)深さまで胸の中央を押し下げます。1分間に100〜120回の速さで30回圧迫を行います。
  • 人工呼吸(2回)30回の胸骨圧迫が終わったら、2回の人工呼吸を行います。効果的な空気の流れを確保するために、患者の頭を後ろに傾けて気道を完全に開き、息を吹き込む際に鼻をつまみます。

この技術は、1歳未満の乳児に適用されます。


a dog and a cat under a blanket shutterstock

4. 犬や猫向けのCPR

ペットも心停止を経験することがあります。そして、他の大切な家族の一員と同様に、予期しない出来事に備えておくことが重要です。ペットのサイズに関係なく、CPRの手順は「30回の胸骨圧迫と2回の人工呼吸」のサイクルで行います。

  • 胸骨圧迫(30回)人間のCPRと同様に、1分間に100〜120回の速さで30回の胸骨圧迫を行います。ペットCPRの最大の違いは、圧迫を行う手の位置です。以下はおおまかなガイドです:
    • 猫や小型犬
      一方の手を動物の心臓の上に置き、もう一方の手をその上に置きます。心臓は前肢の肘が胸に接する部分にあります。
    • 中型犬や胸が深い犬種
      胸の最も広い部分に一方の手を置き、もう一方の手をその上に置きます。
    • 大型犬
      犬を仰向けに置き、胸の最も広い部分に一方の手を置き、もう一方の手をその上に置きます。圧迫中は腕をロックさせたままにします。
  • 人工呼吸(2回)30回の胸骨圧迫後に2回の人工呼吸を行います。ペットの口を閉じ、鼻に口を密閉して空気を吹き込みます。胸がはっきりと上がるまで息を吹き込みます。 

a patient arriving at a hospital in an ambulance shutterstock types of cpr

CPRを中止するタイミング

CPRを行う主な目的は、患者の心臓を再び動かすことではないことを理解しておく必要があります。心臓が自発的に再び動き出す可能性はありますが、それは稀であり、ほとんどの場合追加の介入が必要です(AEDや医療の専門家の助けなど)。したがって、次のいずれかの状況になるまでCPRを続ける必要があります:

  • 患者に生命の兆候が現れた場合
  • AEDが到着し、使用可能になった場合
  • 医療従事者やCPRの訓練を受けた別の人が引き継ぐ場合
  • あなたが疲労しすぎて続けられなくなった場合(疲労すると自分自身が危険にさらされます)
  • CPRを行う現場が安全ではなくなった場合

CPRを学ぶ準備はできていますか?

CPRが必要な状況に備えるためには、患者に最適な方法で対応できるよう、さまざまな種類のCPRについて知っておくことが重要です。患者の年齢、体格によって対応するのはとても効果的です。応急手当を行う人が持つ知識が多ければ多いほど、患者の生存率を高めることができます。

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