ウサギのような愛くるしい見た目から「海ウサギ」や「ごまちゃん」の愛称で呼ばれ、大人気のゴマフビロードウミウシ。 ゴマ模様のふわふわのボディに黒い耳がちょこんとついているルックスはダイバーでなくても魅了されてしまいますよね! そんな可愛いウミウシですが、実はちょっと不思議な生態の持ち主なのです。実は、著名な日本の海洋生物学者、馬場 菊太郎博士によって最初にその存在が記録されました。さあ、一緒にこの生物について学びましょう!

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画像提供: Julkin Media

1. 本当はふわふわしていない

ふわふわな毛皮に覆われているかのように見えますが、実はこれ、毛ではありません。 ゴマフビロードウミウシの背面部全体を覆っているのは、絨毛状の小さな突起で、黒い先端部分がさまざまな模様を形成しています。 専門家によると、これらの突起は感覚器なのだとか。 また、実は白色のゴマフビロードウミウシはかなりのレア物で、よく見られるのは黄色か橙色の種類です。

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画像提供:丸山 誠治

2. 耳のような突起物は感覚器

ウサギのように見せるあの小さな「耳」のような突起物は、本当は嗅触角で、水中の化学物質を識別して餌や仲間を見つける役割を果たしています。ウミウシの仲間の中でも、ゴマフビロードウミウシの嗅触角は特にふわふわしていて、受容面積が広がるように進化しています。そのおかげで、ゴマフビロードウミウシは意外なほど広い距離で匂いを感知することができると言われています。

One of the cutest nudibranch species on an underwater coral reef, the sea bunny scientific name is actually Jorunna parva
画像提供: Rickard Zerpe

3. 雌雄同体

すべてのウミウシと同様に、ゴマフビロードウミウシも雌雄同体であり、オスとメス両方の生殖器官を持っています。交尾の際には互いに精子を交換し、それぞれの卵を受精させます。そのため、ウミウシは自分の子どもの「母親」であると同時に、他の個体の子どもの「父親」でもあります。


4. 猛毒を持っている

こんなに可愛らしい姿をしていますが、捕食者も敬遠するほどの猛毒を持っているウミウシ。 ゴマフビロードウミウシは、他の生き物から身を守るのに必要な毒を取り体内に溜め込み、危険が迫った際に自在に放出することができます。 ウミウシの主食は毒を持つ海綿生物で、その毒はがん治療に使用されることも。 また、ウミウシはクラゲから毒針を奪うこともあります。 こんなに愛くるしい姿をしているのに毒を持っているなんて…と思われるかもしれませんが、ダイバーに危害を加えることは滅多にありません。

A cone snail hunting along a coral reef and which is one of many nudibranch predators along with crabs and other nudibranchs

5. それでも捕食される

毒性のある「鎧」で守られているゴマフビロードウミウシですので、「一体何がゴマフビロードウミウシを食べるのだろう?」と思うかもしれません。実際にゴマフビロードウミウシの捕食者には、オウムガイ、カニ、さらには、他のウミウシがいます。

しかし、ゴマフビロードウミウシにとって最も大きな脅威の一つは人間です。気候変動、乱獲、そして汚染といった環境問題が、彼らや他の多くの生物が食糧や住処として頼っている生息地や生態系を破壊していることを忘れないでください。


6. 寿命が短い

平均寿命はわずか数か月から1年程度と非常に短いです。その短い寿命と普段の孤立した生活のため、交尾の機会は保証されておらず、チャンスが訪れたときに確実に活用しなければなりません。このため、仲間を見つけるための感覚器官が非常に発達していることが、彼らにとってとても重要なのです。

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画像提供: Julkin Media

7.「食べたもの」が姿を作る

ウミウシは肉食性で、他のウミウシや海貝を好んで食べます。また、歯舌と呼ばれる消化器を使って、藻類を削り取って食べることもあります。しかし、ゴマフビロードウミウシの主な食事は有毒な海綿です。この毒を防御のために体内に取り込むだけでなく、彼らは食べたものの色素も吸収します。その結果、ゴマフビロードウミウシは食べるものに応じて外見が変化するのです。

A Jorunna parva nudibranch with a dark yellow pigment, one of many sea bunny colors which they absorb from their diet
画像提供: Etienne Gosse

8. 鉄のおきて「見るだけで触らない」

一般的に、ヒョウモンダコのような他の有毒生物に比べると、ゴマフビロードウミウシは人間に大きな危険を及ぼすことはありません。ただし、クラゲの毒針など、彼らが取り込んだ毒素は刺激を引き起こす可能性があります。もちろん、海洋生物と責任を持って接するためには、「見るだけで触らない」が鉄則です。


9. 殻を持って生まれる

孵化したばかりのゴマフビロードウミウシの幼生は、すべての軟体動物に共通する特徴である殻を持っています。しかし、成長する過程で「変態」と呼ばれるプロセスを経て、この保護層を脱ぎ捨て、私たちが知っているウサギのような姿のウミウシになります。この変態の仕組みは、ラテン語で「裸のえら」という意味を持つウミウシ全体に共通しています。


10. 大きな家族の一員

ゴマフビロードウミウシは、裸鰓類(らさいるい)ツヅレウミウシ科に属します。裸鰓類は非常に種類が豊富で、約3,000種のウミウシが確認されています。ゴマフビロードウミウシの「いとこ」ともいえる他の種類のウミウシも、同じくらい奇妙で魅力的です。たとえば、鮮やかな青い姿をした「アオミノウミウシ」や、フラメンコの踊り子のような「ミカドウミウシ」、葉っぱをまとった羊のような姿をした「テングモウミウシ」、さらには太陽光をエネルギー源にするものまで存在します!

A blue dragon sea slug, Glaucus atlanticus, one of the more fascinating nudibranch species that are related to sea bunnies
画像提供: Sylke Rohrlach

ゴマフビロードウミウシはどこで見られる?

この可愛い生物を見つけるなら、以下のような場所をチェックしてみましょう!

ダイバーが最もよく見かけることができるのは、日本沿岸です。しかし、世界でもインド太平洋にかけて広く分布しており、フィリピンやオーストラリアなどの沖合でも見つけることができます。

ゴマフビロードウミウシとの出会いは、まるで宝探しのような楽しさがあります!ぜひ、ダイビング中にじっくり探してみてくださいね。

Raja Ampat's islands in Indonesia, where you could spot an orange sea bunny, a pink sea bunny, or even a yellow sea bunny!

かわいいゴマフビロードウミウシの撮り方

A scuba diver holding a camera and strobes who hopes to find colorful nudibranchs which are popular with macro photographers

その愛らしい見た目で水中マクロ写真家たちに大人気の被写体。動かずにじっとしていることが多いので、初心者でも撮影しやすい生き物のひとつと言えるでしょう!

初めて水中カメラに挑戦する方は、PADIデジタル水中フォトグラファー・スペシャルティ・コースを受講するのがおすすめです。プロのコツを参考にして、ゴマフビロードウミウシをより素敵に撮影しましょう!

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