陸上とは異なる環境の水中世界が楽しめるダイビングですが、そのフィールドは海だけではありません。湖、川、滝つぼなど、淡水エリアにもダイビングを楽しめる場所はたくさんあります。第10回は、国内の淡水ダイビングエリアを紹介します。

さまざまな環境の水中世界を楽しみたいダイバーにおすすめなのが、湖や川、滝つぼなどの淡水ダイビングエリア。海とは異なる環境が広がっており、見られる生き物もユニーク。標高の高い場所にある湖や流れのある川では特別な知識やスキルも必要となり、ダイビングの楽しみと経験の幅をさらに広げることができます。1年中楽しめるところもありますが、夏~秋の暖かい時期がメインとなっているところが多いので、今すぐ潜りに行く計画を立ててはいかがでしょうか?


本栖湖(山梨県)

世界文化遺産である富士山の麓に位置する本栖湖は、標高900mの高所にあり、日本でも珍しい高所淡水ダイビングを楽しめる絶好のエリアです。湖底には富士山からの溶岩帯や長い時を経た沈木、湧き水が作り出す幻想的な地形が広がっており、アユやブラックバス、ウナギなどの淡水生物や、2022年に初めて発見された新種のまりも「モトスマリモ」などを見ることができます。透明度が高い分、水温が低いため、真夏でもドライスーツがおすすめ。また、富士山の麓で高所ダイビングとなるため、アルティチュードSPの取得が必須です。千円札の裏面に描かれた逆さ富士のモデルとしても知られるこの湖は、観光地としても人気が高く、ダイビング以外にもカヌーや釣り、BBQ、キャンプなど、さまざまに楽しむことができます。

写真提供:MOTOSUKO DIVE RESORT

人気ダイビングポイント:ホーンテッドマンション

水中に沈む巨大な沈木と幻想的な景観で人気のポイント。枝に絡む藻や釣り糸がクモの巣のように見え、ディズニーの「ホーンテッドマンション」を想像させる不思議な雰囲気を醸し出しています。沈木の間にはナマズやブラックバスなどの生物が生息。湖底には森のような静けさが広がっており、独特の魅力を体験できます。ハロウィン時期にはライトアップされたナイトダイビングも開催され、さらに幻想的な光景が楽しめるのも魅力です。

写真提供:MOTOSUKO DIVE RESORT

アクセス

車:東京方面から中央自動車道を利用し、河口湖ICから約30分。
電車:東京駅からJR中央本線特急で大月駅まで約1時間、大月駅から富士急行線で河口湖駅へ約50分。その後河口湖駅から富士急行バスで約60分。


支笏湖(北海道)

北海道の支笏洞爺国立公園に位置する支笏湖は、摩周湖やバイカル湖に匹敵する高い透明度を誇り、「支笏湖ブルー」と呼ばれる美しい青色で知られる湖。環境省の水質調査で何度も日本一に選ばれており、アメマス、ヒメマス(チップ)、エゾウグイのほか、水草にはスジエビ、水底にはヌマチチブなど、淡水ならではの生物を楽しむことができます。カルデラ湖特有の、巨木が横たわる水中景観は圧巻の迫力。7月には人気の水中花「チトセバイカモ」(固有種)が咲き、多くのダイバーが訪れます。水温が深度によって変化するため、ドライスーツ使用がおすすめ。新千歳空港から約50分、札幌から約1時間とアクセスの良さも魅力です。

人気ダイビングポイント:千歳川源流

世界的にも珍しいリバードリフトダイビングが楽しめるポイント。ときに20mを超える透明度の水中で、エゾウグイやアブラハヤ、イトヨ、ヌマチチブなどの生き物を観察することができます。7月末から8月には固有種の絶滅危惧種「チトセバイカモ」が白い花を水中に咲かせ、淡水魚の壮観なトルネードも見どころ。10月後半からはピンク色の婚姻色をまとったヒメマスが産卵のために千歳川へ遡上する様子が圧巻です。スノーケリングで楽しむこともできます。

アクセス

車:新千歳空港から道道16号(支笏湖公園線)で約40~50分。
電車:札幌駅からJR快速エアポートで千歳駅へ約30分、千歳駅から北海道中央バスで支笏湖まで約45分。


長良川(岐阜県)

岐阜県の長良川は、日本三大清流(四万十川・柿田川)のひとつに数えられる透明度の高い川。美濃の中流域ではリバーダイビングを楽しむことができます。最大水深は12mで、天然アユの大群やウナギ、ナマズ、コイなど見られる生き物はいろいろ。中でも特別天然記念物のオオサンショウウオにかなりの確率で出会えるのが魅力で、体長1mを超える巨大な個体が見られることもあります。また、サツキマスやアユカケなどの季節限定で見られる生き物も魅力です。5月から10月には「長良川鵜飼」も楽しめ、観光スポットとしては美濃橋や岐阜城、「うだつの上がる町並み」などがあり、ダイビング後の楽しみも盛りだくさんです。

写真提供:イトウ リサ様(2018) 
写真提供:ツチダ様

アクセス

車:名古屋から東海北陸自動車道を利用し、美濃ICから約10分。
電車:名古屋駅からJR特急で岐阜駅へ約20分、その後長良川鉄道で美濃市駅まで約1時間、美濃市駅から送迎サービスを利用可能。


古座川(和歌山県)

和歌山県・串本町の東海岸に位置するダイビングエリアが古座(こざ)。そこを流れる清流・古座川は、四季折々の景観と豊かな自然が魅力で、上流域では水深2m程度の浅いところでダイビングをすることができます。水温は春の12~18度から夏には27度まで上昇し、春には桜を水中から眺める花見ダイブ、夏には美しい光のシャワー、秋には紅葉ダイブが楽しめます。特別天然記念物であるオオサンショウウオや絶滅危惧種のアユカケなどの貴重な生物が生息し、1年を通じて観察が可能。ダイビング後にはカヌーやパドルボートも楽しめるため、自然を満喫したい人にぴったりのエリアです。

アクセス

車:関西方面から阪和自動車道を利用し、古座川ICから約15分。
電車:JR紀勢本線古座駅まで大阪から特急で約4時間、古座駅からタクシーまたは送迎サービスを利用して約20分。

写真提供/ダイブクーザ


秋保大滝(宮城県)

秋保大滝は宮城県仙台市に位置する幅6m、高さ55mの名瀑で、東北地方屈指の観光スポット。日本三大瀑布に選ばれており、1990年には「日本の滝百選」にも登録されています。滝壺に降り立つと、豊富な水量が垂直に落ちる様子や大音響とともに、飛沫がミストとなって肌に降り注ぎ、癒しの時間を楽しむことができます。世界でも珍しい滝壺ダイビングができる場所として知られており、ダイバーは最大水深10mほどの滝壺で、流木や魚の生息環境を楽しみながら、滝の轟音と振動を全身で感じることができるのが魅力。秋に紅葉を楽しみながら潜るのもおすすめです。

アクセス

車:仙台市内から東北自動車道を利用し、仙台南ICから約40分。
電車:仙台駅からJR仙山線で愛子駅へ約20分、愛子駅から路線バスで約30分。

写真提供:ダイビングショップ レオ


【北海道/知床】でカラフトマスとスイム

北海道でもオホーツク沿岸でしか見られないカラフトマスやオショロコマを河川にて観察、撮影ができます。スクーバーユニットは使用しませんが、水温が14度前後のため、ドライスーツ、フード、グローブを着用します。水深は20cm~1.5mくらいになります。

写真提供:ロビンソンダイビングサービス

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