フリーダイビング界を牽引するPADIフリーダイバー・インストラクターの福田朋夏さんは、2011年からフリーダイビングを始め、瞬く間にその才能を開花させました。2012年には「人魚JAPAN」の一員として世界大会で金メダルを獲得し、2014年にはイタリアで銀メダル、そして2016年にはギリシャで再び金メダルを手にしました。個人としても、ケイマン諸島で世界の女子で5番目のCWTー100mを達成するなど、その実力は世界中に知れ渡っています。

現在、福田さんは沖縄本島を拠点にフリーダイビングのインストラクターとして活動しながら、14年ぶりとなる日本での国際大会「OKINAWA FREEDIVING CUP」を主催予定です。今回のインタビューでは、福田さんのこれまでの挑戦やこれからのビジョンについてお話を伺いました。

an athelete freediver expressing her joy on the surface
画像提供:Tomoka Fukuda

フリーダイビングはあなたの人生にどのような影響を与えましたか

人間は地球の陸の上でしか生活できませんが、フリーダイビングを習得することで、私の世界は 地球の70%を占める海の中にも広がりました。 海の中を自分の体一つで自由に動ける事を身につけると、私自身も海の中の生物たちと同じ感覚で海を味わうことができるようになりました。
毎日の生活に追われて陸の上では思考が過去や未来に行ってしまいがちですが、フリーダイビングをするときは私にとって唯一、自分に深く向き合える時間です。

今、ここで、自分と海に向き合える大切な時間。 海に潜るのと同時に自分の中にも深く潜っていきます。 自分が整っていないと、意識があちらこちらに行ってしまって良い潜りができないので、フリーダイビングを通して自分のマインドコントロールができるようになってきたと思います。フリーダイビングを初めてからは、海が中心の生活になりました。 毎日、風や潮や流れを見て、一喜一憂して海に振り回されていますが、自然と生きるこの感じが 本来の人間っぽくて毎日が楽しいです。

A female freediver swimming in the ocean
画像提供:Tomoka Fukuda

フリーダイバーインストラクターになろうとした理由、瞬間は何ですか

私はずっと競技者としてフリーダイビングを続けてきたのですが、海外から沖縄に拠点を移す事になった時に、今までの自分が経験してきたことをたくさんの方に伝えられたら良いなと思い、イ ンストラクターになりました。 当時は沖縄にフリーダイビングの専門店があまりなく、フリーダイビングをする上で環境が整っていなかったので、人魚JAPANのコーチでもあり、トゥルーノースの代表でもある山本さんに沖縄にお店を作って!と口説き落として(笑)今では漁師さんが毎日朝早くから船を出してくる良い環境でトレーニングや講習をすることができています。本当に周りの方々に感謝しかないです!

Freediver instructor counting the time of a static apnea
画像提供:Tomoka Fukuda

フリーダイバーインストラクターとして長期的な目標は何ですか?またその目標を達成する為にぶつかっている壁や乗り越えてきた困難などがあれば教えて下さい。

長期的な目標は、日本でのフリーダイバーを増やして、一息で海に潜る素晴らしさをたくさんの方々に伝えていけたらと思っています。 最近はアジア圏でとてもフリーダイビングが流行っていて台湾や中国、韓国などからフリーダイ バーが増えています。 韓国では街中に36mのプールがあって、毎日フリーダイバーでいっぱいです。 それに比べて日本ではまだまだマイナースポーツと思われがち。 しかし、アジアの中では日本がフリーダイビングの歴史が一番古いんです。
日本は素晴らしい海の環境に恵まれています。フリーダイビングのレジェンド、ジャック・マイヨールも日本の海を愛していました。その日本から素晴らしいフリーダイバーを増やしていけたらと思います。
ただ、日本ではフリーダイビングはまだストイックとか危険な競技と思われてなかなか挑戦できな い・・・といった雰囲気があります。
フリーダイビングは深さを求めるだけではなくて、海に体を馴染ませるように潜ることができたり、海の中の生物と一緒に泳げるようになったり素晴らしい経験ができるので、たくさんの人に伝えていきたいです。


福田さんのダイビングスタイルや哲学について教えて下さい。

水というのは記憶して伝えることができると言います。 ありがとうと伝えた水は凍らせると綺麗な結晶になったり、バカヤロウ!と伝えた水はガチャガチャの結晶になると言うのを聞いた事がある方もいるのではないでしょうか?

私が潜るときは、まずは自分の中の細胞一つ一つにも感謝して、周りの水たちも良いエネルギー になるように意識しています。 そうすることで、自分の中の水と海が一体になるような最高のダイブが経験できるようになりま した。
海は本当に面白いなと思うのが、不安をもって潜ると不安がそのまま返ってくるし、愛を持って 潜るとそのまま愛が帰ってくる鏡のようなものだなと感じます。 その時の自分をありのまま見せてくれるから毎回教えられるものが大きいです。

a female freediver holding her fins and looking at the sunset
画像提供:Tomoka Fukuda

最後にフリーダイビングを始めたいと思っている方にメッセージをお願いします

私は最初、スキューバダイビングをしていたのですが、フリーダイビングを始めてから、また違う視線で海の中を見れるようになりました。
フリーダイビングは急浮上なども気にせず自由に海の中を動き回る事ができます。
海の生物を観察していた側から、フリーダイビングを通して海の生物と同じように泳ぎ回れる様に なります。 フリーダイビングは深さを追い求めていく過酷なスポーツと思われがちですが、海も自分の生きる世界にできる素晴らしいツールなので、ぜひたくさんの方にフリーダイビングを試していただきたいです。
そしてフリーダイビングは自然を全身で感じられて自分の軸に戻してくれるので、都会で忙しく過 ごしている方々には特に体験して欲しいなと思います。
そして、本当に約束してほしいのは、絶対に1人では潜らないでください。 海では予測できないような事が起こります。 たまに素潜り自慢みたいな方がいらっしゃって、危ない潜りを見たこともあります・・・
何かあった後では遅いので、素潜りをする上で、理論や海の中に潜って体にどんな変化が起こる のかをしっかり学んでおくのは必須です。
素晴らしいフリーダイビングインストラクターがたくさんいるので、ぜひそちらで学んでからフリーダイビングを初めていきましょう。
たくさんの方にフリーダイビングでの海の素晴らしさが伝われば嬉しいです。


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