周囲を海に囲まれた日本には、個性豊かなダイビングエリアがいっぱい。日帰りで気軽に行ける場所にも、見どころ満載の海があるのです。第11回は紀伊半島のダイビングエリアを紹介します。
日本最大級の半島の周囲にダイビングエリアが点在しており、古くから関西ダイバーのホームグラウンドとして高い人気を誇っている紀伊半島。半島の真南を流れる黒潮の影響で、潮の当たりやすい半島西側と南側は、テーブルサンゴや熱帯性の生物が数多く見られるトロピカルな雰囲気。一方、東側はソフトコーラルの群生など温帯色が強く、異なる景観が楽しめます。ビーチ、ボート共に盛んにダイビングが行なわれており、幅広いレベルのダイバーが楽しめるのが魅力です。
白崎
白崎(由良町)は大阪から車で約1時間で訪れることができる、「日本のエーゲ海」とも呼ばれる美しい観光地。白亜の岩肌とコバルトブルーの海が印象的で、昔から多くの人が訪れています。過去に台風で甚大な被害を受けたものの、現在は再び熱帯魚や豊かな海中生物が息づくダイビングエリアとして復活。和歌山初のパブリックダイビングエリアとして運営されており、ダイビングショップでの利用のみ受け付けています。京阪神からのアクセスの良さも魅力で、初心者から経験者まで幅広いダイバーが楽しめるのが魅力。「シャクシの浜」(ビーチ)や「白崎水中洞窟」(ボート)といった期間限定スポットも人気を集めています。


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人気ダイビングポイント:シャクシの浜
シャクシの浜は透明度が高く、水深10mほどと初心者にも優しいビーチポイント。砂利から岩場、砂地へと続く緩やかな地形は、ダイビング講習や体験ダイビングにも最適で、ソラスズメダイやイワシ、ネジリンボウといった多様な生物が観察できます。岬の先端付近には珍しい生物が現れることもあり、フィッシュウォオッチングや水中撮影にもおすすめ。北~西の風には弱いため、例年5月中旬から10月末までの期間限定で楽しむことができます。

アクセス
車:阪和自動車道の広川ICから国道42号線を南へ、里交差点を右折後約15分。大阪方面からは、阪和自動車道・海南湯浅道路を利用して約1時間30分~2時間程度。
電車:JR紀勢本線の紀伊由良駅下車後、バスまたはタクシーで約20~30分。
みなべ
みなべは関西圏からのアクセスが良く、日帰りでも楽しめる魅力的なダイビングエリア。世界でもここでしか見られない蛍光イエローのオオカワリギンチャクが生息しており、和歌山県の天然記念物にも指定されています。ダイナミックな地形と魚影の濃さが魅力で、熱帯系・温帯系の生物が交錯する独自の水中環境が特徴。「ショウガセ」でダイナミックな地形のほか、テーブルサンゴの群生やアカウミガメの産卵エリアも観察でき、ユニークな水中景観が広がっています。また、初夏にはネジリンボウ、冬にはウミウシなど、季節ごとに異なる生き物を観察することも可能。ボートダイビングスポットも数多く点在しており、ダイビング初心者からベテランまで幅広く楽しむことができます。
人気ダイビングポイント:ショウガセ
みなべを代表する人気ダイビングスポット。通常は水深150m以深に生息するという「オオカワリギンチャク」が水深40m近くで見られる、世界的にも珍しいスポットとなっています。蛍光イエローに輝くその姿はとても幻想的ですが、近年、その数は減少しており、現在は保護活動が進められています。マダラトビエイやカツオ、カンパチといった大物回遊魚との遭遇率も高く、根のトップにはクマノミのコロニーが存在。ミツボシクロスズメダイやキンギョハナダイも生息しており、魚影の濃さも魅力です。

アクセス
車:阪和自動車道のみなべICより約10分。大阪方面からは、阪和自動車道・海南湯浅道路などを利用して約2時間。
電車:JR紀勢本線の南部駅下車。大阪方面から特急「くろしお」利用で約2時間。
田辺
紀伊半島の南西側に位置する田辺は、温暖な気候と多彩な自然環境に恵まれた魅力的なエリア。和歌山県最大の面積を誇り、田辺、芳養(はや)のほか、みなべにも潜りに行き、ビーチとボート合わせて約30カ所のバリエーション豊富なダイビングポイントがあります。サンゴ群落や砂地が広がる癒し系ポイントではカラフルな魚やウミウシ、甲殻類などマクロの世界を堪能。さらに、ハンマーヘッド、マンタ、ジンベイザメなどの超大物の目撃例もあり、高いポテンシャルを秘めています。アクセスも良く、大阪・神戸から車で約2時間で訪れることが可能。年間を通じて盛んなシラス漁が魅力で、アフターダイブには地元でしか味わえない生シラスや釜揚げシラス、さらには新鮮な海産物を楽しむことができます。

人気ダイビングポイント:天神崎ビーチ
「天神崎ビーチ」は、美しい海岸線とダイビングに最適な環境が魅力のビーチポイント。浅場から水深10mほどのエリアまで幅広く、トレーニングやリフレッシュにも最適なポイントです。春から夏のシーズンは魚群が、秋以降は透明度の高い水中で色鮮やかな魚やサンゴ群落が楽しめ、多くのダイバーで賑わいます。クマノミやハゼ、イカの産卵などが見られるほか、オオウミウマなどの珍しい生物との出会いも期待大。北寄りの風に強い環境は冬のダイビングにもおすすめで、初心者からベテランまで楽しめるスポットとして多くのダイバーに愛されています。
アクセス
車:阪和自動車道の南紀田辺ICから市街地まで約10分。大阪方面から阪和自動車道を経由して約1時間50分。
電車:JR紀勢本線の紀伊田辺駅下車。大阪方面から特急「くろしお」利用で約2時間。
白浜
白浜は紀伊半島の老舗ダイビングエリア。白良浜(しららはま)の白砂ビーチや、夕陽が美しい円月島、50m以上の断崖が続く「三段壁」などの景勝地が有名で、観光地としても人気です。白浜の海は黒潮が流れ込むため、多様な生物が集まり、カラフルな熱帯魚、ソフトコーラル、ウミウシなどを見ることができます。沈船ポイントもあり、夏場にはイサキやマアジの大群が見られるほか、地形派ダイバーに人気のケーブやアーチ、ダイナミックなドロップオフも点在し、幅広いダイバーが楽しむことができます。ボートダイブが主流で、港から15分以内の場所に多くのスポットが集中。大阪から車で約2時間、さらには南紀白浜空港も近いためアクセスの良さも魅力です。
人気ダイビングポイント:沈船
白浜の人気No.1ポイント。水深18mに全長28mの沈船が横たわり、周囲は生物の宝庫となっています。イサキやクロホシイシモチの大群が集まり、それを追いかけるカンパチやシマアジの回遊魚が織りなす光景は圧巻。マクロからワイドまで幅広く楽しむことができ、ネジリンボウ、ジャパニーズピグミーシーホース、ミジンベニハゼ、アオウミガメといった多様な生物との出会いが期待できます。さらにナイトダイビングも可能で、昼間とは異なる幻想的な沈船の様子は必見。ボートでわずか5分とアクセスも良く、年間を通じてダイバーを魅了するポイントとなっています。
アクセス
車:紀勢自動車道の南紀白浜ICから各所へ。大阪方面から阪和自動車道を経由して約2時間30分。
電車:JR紀勢本線の白浜駅下車。新大阪から特急「くろしお」利用で約2時間10分。
すさみ
紀伊半島の南南西に位置し、長いリアス式海岸と「すさみブルー」とも呼ばれる透明度抜群の海が特徴のすさみ。27kmの海岸線に広がるダイナミックな地形の中で、ワイド派もマクロ派も存分に楽しむことができます。夏にはヒレナガカンパチやツムブリの群れ、時にハンマーヘッドシャークなどの大物が姿を見せることも。ボートとビーチを合わせて30以上のダイビングポイントが点在し、どのボートポイントも3〜10分程度と近いので初心者にも安心。ビーチポイントの名物「水中ポスト」は「世界一深いところにあるポスト」としてギネス記録にも認定されており、海中でハガキを投函することができます。
人気ダイビングポイント:ソンナエ
魚影の濃さとダイナミックな地形で知られるポイントで、中心となる根にはキンギョハナダイなどのカラフルな魚群が集まり、また春から夏には繁殖期を迎えたイセエビが岩の間にぎっしりと群れます。外洋に面しているため、カンパチやヒラマサの回遊魚、大物との遭遇率が夏から秋にかけて高く、時には100尾以上ものハンマーヘッドシャークの群れが現れることも。洞窟などの地形も魅力的で、ワイドな視界からマクロな観察まで多岐にわたる楽しみ方が可能です。冬になるとテングダイも多く確認され、季節ごとに異なる生物たちと出会うことができます。
アクセス
車:紀勢自動車道のすさみIC、またはすさみ南ICを下りてすぐ。大阪方面から約3時間。
電車:JR紀勢本線の周参見駅下車。大阪方面から特急「くろしお」利用で約2時間20分。
串本
本州最南端に位置する串本は、「サンゴの街宣言」を掲げた町で、黒潮の恩恵を存分に受けたダイビングエリア。海中には日本最大規模のテーブルサンゴ群落が広がり、スリバチカイメンなどの珍しい海底生物も生息するトロピカルな海となっています。春にはスズメダイの幼魚が現れ、ウミウシ類が増え始める一方、夏から秋にかけては南から季節来遊魚がやって来て華やかな海になります。フリソデエビやジョーフィッシュなどの人気生物も一年中観察可能で、初心者からマクロ派、さらには大物狙いのフォト派まで満足できるポイントが数多く存在。ビーチダイビングからダイナミックな外洋スポット、さらにアフターダイビングの温泉や観光も楽しめる充実のエリアとなっています。

人気ダイビングポイント:浅地
ダイナミックな地形と多様な生物が揃う、串本を代表する外洋ポイント。潮流が速いことも多いため中級者以上のダイバー向けとなっています。水深30m以深から立ち上がる広大な根にブイが2つあり、さまざまなコース取りが可能。夏前にはキビナゴの群れが集まり、それを狙うカンパチやツムブリなどの回遊魚が迫力たっぷり。夏にはカツオ、カンパチ、シイラなどが水面近くで観察でき、時にはハンマーヘッドシャークやヒメイトマキエイの群れが出現することも。地形的にもおもしろく、トンネルや回廊の探索を楽しむこともできます。


画像提供:南紀シーマンズクラブ
アクセス
車:紀勢自動車道のすさみ南ICから国道42号線を南下。大阪方面から約3時間30分。
電車:JR紀勢本線の串本駅下車。大阪方面から特急「くろしお」利用で約2時間40分。
九鬼
三重県尾鷲市の小さな港町・九鬼は、紀伊半島の東側に位置し、人口約400人の静かな漁村。戦国時代には「九鬼水軍」の拠点として知られ、入り組んだ海岸線と深い山々に囲まれた地形は、軍用船団を守るのに適していました。現在も漁業が盛んで、黒潮の影響を受けた熊野灘の豊かな海が広がっています。ボートダイビングが主流で、港からポイントまでは船で10分ほどとアクセスも良好。水中では、色鮮やかなソフトコーラルやエダサンゴの群生が広がり、タイミングが合えばアオウミガメや魚群との遭遇も期待できます。さらに、ウミウシや甲殻類などの小さな生き物も豊富で、ワイドからマクロまで四季折々の海の表情を楽しめます。人の手があまり入っていないポイントがほとんどなので、ありのままの自然の海を体験できるのが魅力です。

人気ダイビングポイント:ウメ島
港からボートで約7分の場所に位置し、初級者から上級者まで楽しめる人気のポイント。東西に広がる大きな根には、イシダイ、イサキなどの魚影が濃く、シラコダイやキンギョハナダイが舞う華やかな光景が広がります。浅場の岸壁ではウミウシや幼魚の姿が多く見られ、マクロ派にも人気。白い砂地とのコントラストが美しい隠れ根には、サカタザメやアカエイも登場し、癒しの雰囲気を演出します。季節によってはワラサの大群やスジハナダイなどの深場の魚に出会えるチャンスも。さまざまな海の表情を楽しむことができるポイントとなっています。


画像提供:MTK
アクセス
車:紀勢自動車道の尾鷲北ICから国道42号線を南下し、国道311号線へ。ICから約30分。名古屋方面から東名阪自動車道、伊勢自動車道を経由。
電車:JR紀勢本線の九鬼駅下車。名古屋方面から特急「南紀」利用で約2時間30分で尾鷲駅。尾鷲駅から九鬼駅まで普通列車で約15分。
尾鷲
三重県南部、紀伊半島の東側に位置する尾鷲は、リアス式海岸の地形が特徴的な港町で、深く湾入した尾鷲湾に数多くのダイビングポイントが点在。水中は、陸上の地形をそのまま反映したようなアーチやケーブなどのダイナミックな地形が広がり、黒潮の影響を受けた豊かな海にはヤギやトサカなどのソフトコーラルが彩りを添えています。ボートエントリーが主流で、どのポイントも港から15分以内とアクセスが良く、船酔いが心配な人でも安心。魚種も豊富で、紀伊半島でもトップクラスの魚影を誇り、マクロ派にはヤマトウミヒルモの群落やヒメイカ、アミメハギ、アオサハギなどの幼魚、甲殻類との撮影が人気です。「銚子川ブルー」と称される日本屈指の透明度を誇る川「銚子川」でのリバーダイブにもぜひチャレンジしてみたいところです。
人気ダイビングポイント:漁礁
漁礁は、港からボートでわずか12~13分。水深23mの砂地には、大型回遊魚を呼び込むために1立方メートルや2立方メートルの並型魚礁が多数沈められています。これらの魚礁にはソフトコーラルがびっしりと付着し、魚影も濃く、ウミウシも豊富に観察できます。中層にはキンギョハナダイの群れが舞い、ソフトコーラルとの鮮やかなコントラストが水中を一層華やかに演出しています。
さらに、大型のコロダイをはじめ、ミノカサゴや夏場には南方系の魚たちも登場し、四季折々に異なる生物相が楽しめます。特に冬場は透明度がぐっと上がり、どこまでも続く美しい砂紋が広がり、幻想的な光景が広がります。
日本全国からはもちろん、アジア各国からもダイバーが訪れる、まさに尾鷲を代表する人気No.1のスポットです。

アクセス
車:紀勢自動車道の尾鷲北IC、または熊野尾鷲道路の尾鷲南ICから市内へ。名古屋方面から約2時間。
電車:JR紀勢本線の尾鷲駅下車。名古屋方面から特急「南紀」利用で約2時間30分。
方座浦
三重県度会郡南伊勢町に位置する方座浦は、リアス式海岸が東西に長く伸びる、山と海に囲まれたのどかなエリア。入り組んだ入り江の地形により、波や風に強く、一年を通して穏やかな海況が保たれるため、安定したダイビングが楽しめます。海は栄養分が豊富で、四季折々の生物が見られるのが魅力。特にソフトコーラルの群生は圧巻で、水中はまるでお花畑のような美しい景観が広がります。視界を埋め尽くすほどの魚群に出会えることもあれば、ウミウシや甲殻類などの小さな生き物との出会いも豊富。湾内外に点在する6つのダイビングポイントは、それぞれに個性があり、初心者向けの砂地エリアから、地形がダイナミックな上級者向けの外洋ポイントまで、1日で多彩なダイビングスタイルを楽しむことができます。


画像提供:HDA方座浦ダイビングアシスト
人気ダイビングポイント:中平瀬
山に囲まれた穏やかな湾内に位置するポイントで、風や波の影響をほとんど受けず、初心者から上級者まで安心して楽しめる環境が整っています。ポイントには筏が設置されており、エントリー方法を選べるのがユニーク。禁漁区に指定されているため魚影が非常に濃く、特に夏場にはカマスやアジ、イサキの群れが賑やかに泳ぎ回る様子が見られます。人工漁礁には長年かけて育ったソフトコーラルが咲き誇り、魚群とともに華やかな水中景観を演出。最大水深は24mで、漁礁には通年を通して多彩な生物が生息しており、東西南北それぞれに異なる魅力があるため、何本潜っても飽きることのない充実したダイビングが楽しめます。

アクセス
車:伊勢自動車道の紀勢大内山ICから南伊勢方面へ。ICから約20分。名古屋方面から高速道路を利用して約2時間。大阪方面からは約2時間40分。
電車:JR紀勢本線の伊勢柏崎駅、または大内山駅が最寄り。駅からの公共交通機関は限られるため、タクシーやレンタカーの利用が一般的。




