毎年3月の最終水曜日は、マナティー啓発の日(Manatee Appreciation Day)として制定されています。マナティーが直面している脅威(生息地の破壊、船との衝突、気候変動など)について理解を深め、彼らの生息環境を守るために何ができるかを考える機会とされています。2025年のマナティー啓発の日は3月26日(水)にあたります。

「マナティー啓発の日」をきっかけに、マナティーについて理解を深めてみましょう。

マナティーとジュゴンは、名前が違うだけで全く同じ動物だと誤解している人もいます。しかし、マナティーとジュゴンには多くの共通点があるものの、それぞれ異なる特徴を持つ別の動物です。
ジュゴンとマナティーはいずれも海牛目(Sirenia)に分類されます。sirenは、イタリア語やスペイン語で「人魚」を意味し、これらの動物が人魚と間違えられていた歴史に由来しています。かつて、海牛目には5種類の動物が存在していました。3種類のマナティー(アマゾンマナティー、アフリカマナティー、アメリカマナティー)、ジュゴン、そしてステラーカイギュウです。しかし残念なことに、ステラーカイギュウは1700年代に乱獲され、絶滅してしまいました。


マナティーの基本情報

マナティーは、アマゾン川流域、カリブ海、メキシコ湾、西アフリカの浅い湿地帯に生息しています。ジュゴンとは異なり、マナティーは淡水と海水の両方で生活できるのが特徴です。

マナティーにとって冷たい水は大きなストレスになります。水温が20℃(68°F)以下になると、温かい水を求めて移動し、天然の湧き水や発電所の温排水の周辺に集まることもあります。

マナティーの平均的な体長は3.6メートル、体重は200~600kgほどになります。この巨体の草食動物は、海草、マングローブ、時には藻類など、浅瀬に生える植物を食べています。中でもアメリカマナティーの亜種であるフロリダマナティーは、海牛目の中で最大の種とされており、最大で4メートル、体重は1590kgにも達することがあります。

manatee facts

マナティーの通常の泳ぐ速度は時速8kmほどですが、短い距離なら時速24kmまで加速することができます。他の海洋動物と比べると、マナティーはのんびりしているように見えますが、実は人間の平均的な最高泳速(約時速6km)よりも速いのです。

また、マナティー(とジュゴン)は他の海洋哺乳類と同じく、呼吸のために水面へ浮上する必要があります。休息中は約15分間、水中にとどまることができ、活動中は3~4分ごとに水面へ浮上して呼吸をします。

🛟 豆知識 🛟:マナティーやジュゴンは海に生息する哺乳類ですが、実はクジラやイルカよりもゾウに近い仲間なのです!マナティーについての面白い事実をもっと知りたい方は、ぜひチェックしてみてください!


ジュゴンの基本情報

ジュゴンは、東アフリカからオーストラリアにかけての温かく浅い海域に生息しています。寿命は最大70年とされ、これはマナティーのほぼ2倍の長さにあたります。ジュゴンの平均的な体長は2.4~3メートル、体重は230~500kgほどになります。

Dugong- Underwater - Saltwater

マナティーとジュゴンの3つの大きな違い

マナティーとジュゴンを見分けるための簡単なポイントを3つ紹介します!

① 口の形:ジュゴンは、ゾウの鼻のように長い口を持ち、器用な上唇を使って海草を食べます。もし、海底を鼻先で探りながらエサを吸い込んでいる姿を見たら、それはジュゴンの可能性が高いでしょう。マナティーの口は短く、エサを水面や水中で食べることが多いのが特徴です。

② 体の大きさ:マナティーは最大で4メートルまで成長します。一方でジュゴンは3メートルを超えることはほとんどありません。

③ 尾びれの形:ジュゴンの尾びれはクジラやイルカのようなフカヒレ型をしています。マナティーの尾びれは丸みを帯びたパドル型で、全体的に幅広いのが特徴です。

🛟 豆知識 🛟:ジュゴンは呼吸のために水面に上がるとき、尾びれを使って「立ち上がる」ようにして頭を水面に出すことがあります!


マナティーとジュゴンは絶滅の危機に瀕している

残念ながら、人間の活動がマナティーとジュゴンの生存を脅かしています。 特にジュゴンは、繁殖サイクルが長いため、絶滅のリスクがより高いとされています。ジュゴンのメスは、10歳ごろにならないと子どもを産まず、その後も3~5年に1度しか繁殖しません。マナティーのメスは、3歳ごろから出産が可能で、2~3年に1度のペースで子どもを産みます。

マナティーもジュゴンも法律で保護されていますが、その骨や脂を狙った密猟の標的になりやすいのが現状です。また、動きが遅いため、ボートの衝突や漁網、水路に巻き込まれる事故が後を絶ちません。 さらに、マングローブ林の破壊も、彼らの生息環境を奪う深刻な問題となっています。

A manatee swims over a sandy bottom

マナティーやジュゴンを守るために、私たちにできること

マナティーやジュゴンは日本には生息していませんが、彼らの暮らす海は、私たちダイバーにとっても特別な場所です。世界中の海洋生物を守るために、環境に優しいダイビングを心がけることが大切です。マングローブや海草の生息地を守る活動に参加する、ゴミを持ち帰るなど、小さな行動が大きな変化につながります。

実際にマナティーやジュゴンと泳いだり、シュノーケリングやダイビングで観察したりすることも、彼らを守る大切な方法のひとつです。 エコツーリズムを通じて彼らに会いに行くことで、「生きていることに価値がある」ことを地元の人々や政府に示すことができます。

世界には、ジュゴンやマナティーに出会える素晴らしいスポットが数多くあります。ぜひ、お近くの PADI ダイブショップ に問い合わせて、彼らに会いに行く旅を計画してみてください。

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