世界中のPADIダイブセンター、リゾート、プロフェッショナルが、サンゴ礁の回復と復元に向けた世界的な取り組みをリードしています。
今回は、その中からいくつかの取り組みについてご紹介します。サンゴ礁の保護に取り組んでいるPADIダイブセンターとリゾートを探すには、PADIダイブショップ検索のページをご覧ください。
リーフシーン・バリのサンゴの保護
PADIダイブリゾートであるリーフシーン・バリ(Reef Seen Bali)は、ダイバーのスキルアップを専門にサポートしています。しかし、スキルだけにとどまらず、人間が水中世界にどのような影響を与えることができるかを深く理解することで、自然をよりよく理解できるようになるという考えです。リーフシーン・バリは、地元のサンゴを保護・修復するプロセスを開発し、「リーフガーデニング」と名付けています。
90年代後半から、リーフシーン・バリはすべてのダイブ前のブリーフィングとダイビングにエコの考えを取り入れています。そのため、プムテラン湾とムンジャンガン島の素晴らしい水中世界を保護しながら、ダイバー教育を行なっています。サンゴの保護活動を通じて、”The Underwater Temple Garden & Temple Wall”, “Bio-Wreck Reef”, “Underwater Garden Of the Gods” などの新しいダイブサイトを作り、より多様なサンゴと自然のリーフを保護しています。サンゴ礁の保護・保全に向けた同社の取り組みについては、ショップのウェブサイトをご覧ください。
シェラトン・モルディブ・フルムーン・リゾート&スパでサンゴの植え付け活動
シェラトン・モルディブ・フルムーン・リゾート&スパ(Sheraton Maldives Full Moon Resort & Spa)では、サンゴの生息環境を促進し、新しいサンゴを誕生させるために、サンゴの苗を植える楽しい体験型アクティビティに参加するお客様を募集しています。当リゾートは、モルディブ政府によってサンゴの増殖組織に任命されたリーフスケーパーズ(Reefscapers)と提携し、埋め立てプロジェクトの一環として破壊される予定だったグルヒファルフラグーンのサンゴ群落の管理者となりました。この活動は、専門家が指導し、参加者に実体験を提供するとともに、これまで漁業しか職がなかった250人の住民に代替ビジネスを提供するものです。
2021年初頭、4月のアースデイに合わせて、シェラトン・モルディブ・フルムーン・リゾート&スパは、2020年2月に開始した同リゾートのサンゴ増殖活動のマイルストーンとなる100本目のサンゴを植え付けました。モルディブで最も重要な人工サンゴ構造物のひとつとして、15種類のサンゴから5,619個以上のサンゴ苗が移植されました。このプログラムは、マリオット・インターナショナルがアジア太平洋地域で展開している「Good Travel with Marriott Bonvoy」の取り組みと共鳴し、地域社会や環境との直接的なつながりを提供するものです。
「サンゴの植え付け活動を始めてから、ハウスリーフに戻る魚が増えたことが確認され、このプログラムがうまくいっていることが証明されました。私たちは、この活動をリゾートのコミュニティにとって重要な優先事項として続けていきます」と、総支配人のエミリオ・フォルティーニは述べています。
シェラトン・フルムーン・リゾート&スパのリーフスケーパーズ海洋生物学者であるアメリーは、PADIダイブマスターです。彼女は2017年にホンジュラスのウティラでPADIダイブマスター認定を取得しました。このトレーニングは、サンゴ再生プロジェクトのために水中で快適に過ごすために必要なスキルを提供し、半年ごとにリーフスケーパーズのインターンをトレーニングしています。
バルバドス・ブルー・ウォータースポーツとエコ・ダイブ・グレナダでサンゴの保護に取り組む
クリスティとアンドレのサンゴ植え付け・再生のストーリーは、バルバドス港の拡張工事が行われていた2001年に始まりました。技術者によると、港には「岩礁」があり、その上に建設しなければならないのですが、港の日々の活動から、岩礁が危機に瀕していることは容易に推測できたのだそうです。そこで、実際に港に潜ってみると、港側の岩礁が健康で、大きく、頑丈であることに驚かされました。当時、バルバドスの西海岸や南海岸ではほとんど見られなくなった、非常に脆いスタッグホーンコーラルまで繁茂していたのです」と、彼らは説明します。
この過程で、2つの教訓が得られました。
- ハーバーリーフ(または他のサンゴ礁)の漁業圧力を数年間なくすことで、サンゴ礁の回復力が高まり、ビルジや排水、大量の堆積物による水質の悪化に対処できるようになったことです。
- サンゴの植え付けと再生は、貴重な保護管理ツールとなり得ます。サンゴの大部分は生き残っただけでなく、16 年後に PADI サンゴ礁救急法(PADI Coral Reef First Aid classes)の講習会のドナーサイトとなりました。
現在、バルバドス港サンゴ再生プロジェクトは、南カリブ海で最大のサンゴ礁移植の成功例として残っています。
PADI 5スター・ダイブリゾートのバルバドスブルーウォータースポーツ(Barbados Blue Watersports)でサンゴ再生プロジェクトの共同創設者を務めるアンドレ・ミラーは、「何年も前に保存し移植したサンゴを、戻ってきたダイバーに見せるのが好きなんだ」と言っています。
このプロジェクトのもうひとりの共同創設者であるクリスティ・フィニー(Eco Diver Grenadaの現在のオーナー兼マネージャー)は、「海洋生物学者として、私たちにはサンゴ礁を保護し、スクーバ・ダイビングの技術を超えて教育する責任があると信じています」と言い、さらに付け加えます。「私たちは地域社会と関わり、変化する海洋環境を常に意識していなければなりません。2020年の新型コロナウイルスでの渡航中断期間中に、フロリダキーズから南下し、北隣のセントルシアまで最新の強毒性サンゴ病、ストニーコーラルティッシュロスディジーズ(SCTLD)が確認されました。このような脅威に対して、私たちダイバーが学び、監視することが必要なのです。私たちはサンゴ礁への脅威をなくすことはできませんが、脅威をコントロールし、解決に積極的に参加することは可能なのです。私たちと一緒に、すべてのダイビングを美しい冒険以上のものにしませんか?」
自治体、地域住民、企業による沖縄・恩納村でのサンゴ保全活動
「チーム美らサンゴ」
「自分たちの手でサンゴを植え付け、かつての水中景観を取り戻したい」
チーム美らサンゴは、沖縄県恩納村でのサンゴ苗の植え付けプログラムや沖縄県外における啓発イベントを通じて、「美ら海を大切にする心」をより多くの人々に広げることを目的に活動しています。
「チーム美らサンゴ」は、2004年に沖縄県内外の企業が集まってを結成されました。地元の恩納村漁業協同組合と、PADI5スター・ダイブリゾートのANAインターコンチネンタル万座ビーチリゾート、PADIダイブリゾートの沖縄ダイビングサービスLagoonが協力し、環境省・沖縄県・恩納村などの行政の後援を得ながら、生態多様性の宝庫であり、観光資源でもあるサンゴの保全に取り組んでいます。
2004年から2019年末までに3,906名がサンゴ苗の植付活動に参加し、15,432本のサンゴを植え付けました。2020年は、コロナ禍などの影響もあり、2回のイベント開催で参加者は107名、457本(代行植え付け分を含む)を植え付けました。また、寄付分は1,830本でした。総計で、2,287本となり昨年を上回り、過去最高となりました。植え付けイベントでの植え付け本数は、5,600本を超え、総本数は15,000本を達成しました。
チーム美らサンゴは年5回程度の植付イベントを、春と秋に実施しています。恩納村漁協が恩納村海域からドナーとして採捕し、陸上施設で養殖したサンゴ苗を植え付け・苗作りに使用します。※ 採捕は沖縄県漁業調整規則に基づき、特別採捕許可が必要。
この海域での生存率が比較的高いバランヤンネシ、ウスエダミドリイシ、ドネイ、クシハダミドリイシを中心に植え付けを行なっています。植え付け後は、オニヒトデやレイシガイダマシなどの食害生物の除去を行ないながら、定期的に経過観察を実施しています。ダイバープログラムとノンダイバープログラムがあり、ダイビングライセンスがなくてもご参加いただけます。
また、現在沖縄の海で起こっていることをひとりでも多くの方に知っていただくため、「チーム美らサンゴ」では様々な啓発活動に取り組んでいます。沖縄県内外で啓発イベントを開催し、サンゴや美ら海に親しみ、「自然環境を大切にしたい」ということについて、興味を持っていただくきっかけ作りができればと考えています。
サンゴ礁の保護スペシャルティ・コース
サンゴ礁の保護スペシャルティ・コースは、ダイバーとノンダイバーに、危機に瀕する世界のサンゴ礁の状況を伝えるものです。このコースでは、サンゴ礁がどのように機能し、なぜそれほど重要なのかを説明します。また、多くのサンゴ礁が深刻な問題を抱えている理由と、これ以上の減少を防ぐために個人ができることを話し合います。ダイバー、スノーケラー、環境意識の高い人の多くは、すでにサンゴ礁を訪れたことがあるか、これから訪れる予定がすでにあるようです。サンゴ礁の保護スペシャルティ・コースは、サンゴ礁を見学する際に適切な交流を行なうための知識を提供します。