熱帯のサンゴ礁に潜るときも、知床での流氷ダイビングも、どんな環境でダイビングをする場合でも、水温や環境に合った保護スーツを選ぶことはとても大切です。ダイビング用の保護スーツには、体を守り、快適な体温を保つためのさまざまな種類があります。まずは基本となる、ウェットスーツとドライスーツの違いを見ていきましょう。
名前からもわかるように、ウェットスーツはスーツの内側に水が入り、ドライスーツは体を濡らさずに潜ることができます。でも、両者の違いはそれだけではありません。
- ウェットスーツは、比較的シンプルで動きやすく、暖かい水域でのダイビングに適しています。
- ドライスーツは、特に水温の低い環境で活躍しますが、安全かつ快適に使うためには、適切なトレーニングやメンテナンスが必要です。
価格や着心地、適した水温、使い方など、それぞれに異なる特徴があります。この記事では、ウェットスーツとドライスーツの違いを詳しく比較しながら、自分にはどちらが合っているのかを見ていきましょう。

ウェットスーツとは?
ウェットスーツは、スーツと肌の間に入った少量の水を体温で温め、その温かい水の層を保つことで体温の低下を抑える仕組みになっています。「セミドライスーツ」と呼ばれるタイプもありますが、完全に体が濡れないわけではありません。手首や足首などに設けられたシールによって水の出入りを抑え、スーツ内で温まった水をできるだけ逃がさない構造になっています。ウェットスーツもセミドライスーツも、保温性を十分に発揮するためには、体にしっかりフィットしていることが重要です。サイズが合っていないと、スーツの中に冷たい水が繰り返し入り込み、せっかく温まった水が外へ流れ出してしまいます。
ウェットスーツは一般的にネオプレン素材で作られており、半袖・半ズボンタイプの「ショーティ」から全身を覆うフルスーツまで、さまざまなスタイルがあります。また、生地の厚さにも種類があり、代表的なものには3mm、5mm、7mmなどがあります。

ドライスーツとは?
ドライスーツはウェットスーツよりもゆとりのある作りで、水ではなく、スーツ内の空気やインナーによって保温するのが特徴です。 水の代わりに空気を断熱材として使用するため、ウェットスーツに比べて体温が奪われにくく、保温性のあるインナーを組み合わせることで、水温の低い環境でもより暖かく快適にダイビングを楽しむことができます。
では、ドライスーツはどのようにして体を濡らさずに保っているのでしょうか?
ドライスーツは一般的に、防水性のあるネオプレンや、トリラミネートなどのメンブレン素材で作られています。首や手首のシール、防水ファスナー、スーツと一体になったブーツやソックスなどによって、スーツ内部への水の侵入を防ぐ構造になっています。
また、ドライスーツには給気バルブと排気バルブが備わっており、ダイビング中にスーツ内の空気を出し入れすることができます。
ウェットスーツとドライスーツの違い
ウェットスーツは暖かい水域、ドライスーツは冷たい水域で使われることが多いですが、両者の違いはそれだけではありません。構造や保温の仕組み、適した環境、使い方など、さまざまな違いがあります。
保温性の違い
ウェットスーツとドライスーツの大きな違いのひとつが、どのくらいの水温に適しているかです。
日本の海では、季節や地域によって水温が大きく変化します。そのため、一年を通してダイビングを楽しむなら、水温に合わせてウェットスーツとドライスーツを使い分けるがおすすめです。
ひとつの目安として、水温20℃前後を下回るようになると、ドライスーツを選ぶダイバーが増えてきます。 一方、水温が高い時期には5mmや3mmのウェットスーツなどが使われます。
ウェットスーツにもさまざまな厚さやタイプがあり、厚くなるほど一般的に保温性も高くなります。たとえば、5mmのワンピースにフードベストを組み合わせたり、6.5mmのツーピース(通称「ロクハン」)を着用したりするなど、水温や寒さの感じ方に合わせて保温性を高めることもできます。
ただし、快適に感じる水温には個人差があります。また、ウェットスーツの厚さや素材、ドライスーツのインナー、潜水時間、ダイビング本数、気温などによっても体感温度は変わります。そのため、水温だけで判断するのではなく、その日のコンディションや自分の寒さへの強さに合わせて選ぶことが大切です。
そこで役立つのが、ダイビング後のログ付けです。水温や着用したスーツ、その日の「寒かった」「ちょうどよかった」といった体感も一緒に記録しておけば、次に同じような環境で潜るときのスーツ選びの参考になります。自分がどのくらいの水温で寒さを感じるのかを知るためにも、ぜひログに残しておきましょう。

ドライスーツとウェットスーツのインナーの違い
ドライスーツの暖かさを大きく左右するのが、スーツの下に着るインナーです。水温や気温に合わせてインナーを変えることで、保温性を調整できます。
ドライスーツ用のインナーには、保温性が高く、汗や湿気を逃がしやすいポリエステルやポリプロピレンなどの化学繊維を使ったものが適しています。一方、汗や湿気を吸収すると乾きにくい綿(コットン)素材は、体を冷やす原因になるため、ドライスーツのインナーには適していません。比較的暖かい時期なら薄手のベースレイヤー、水温が下がってきたらフリースなどの保温着など、季節やコンディションに合わせて調整できます。
ウェットスーツは体にフィットさせて着用するため、ドライスーツのように厚手のインナーを重ねることはできませんが、ウェットスーツ用に設計された保温インナーをプラスする方法もあります。
たとえば、MOBBY’Sの「WARM PLUS(ウォーム プラス)」は、ウェットスーツやセミドライスーツのインナーとして着用できる1mm厚のクロロプレンウエア。内側には保温・蓄熱性に優れたポリエステルの中空糸起毛ジャージが使われており、ウェットスーツにもう少し保温性をプラスしたいときに活用できます。

このように、インナーを変えることで保温性を調整できるドライスーツは、幅広い水温や季節に対応しやすいのが特徴です。日本のように季節によって水温が大きく変化する環境では、この調整のしやすさもドライスーツのメリットのひとつです。
必要なトレーニングの違い
ウェットスーツとドライスーツでは、使い方を身につけるために必要なトレーニングにも違いがあります。
ウェットスーツの場合は、スーツの厚みによって浮力が変わるため適切なウエイト調整は必要ですが、基本的な使い方は比較的シンプルです。
一方、ドライスーツを安全かつ快適に使うためには、ウェットスーツにはないスキルを身につける必要があります。ドライスーツの中には空気が入っているため、BCDや肺などと同じように、深度が変わるとスーツ内の空気も圧縮・膨張します。潜降すると空気が圧縮され、浮上すると膨張するため、その変化に合わせて給気・排気を行うことが必要です。
また、スーツ内の空気は姿勢によって移動します。こうしたドライスーツ特有の性質を理解し、空気量を適切にコントロールすることが、安定した浮力や快適なダイビングにつながります。
PADIの「ドライスーツ・ダイバー・スペシャルティ」では、ドライスーツの着脱や給気・排気の方法、浮力コントロール、トラブルへの対処など、ドライスーツを使って潜るために必要な知識とスキルを身につけることができます。
器材のサイズとウエイトにも注意
ウェットスーツからドライスーツに替えると、これまで使っていた器材のサイズやウエイト量が合わなくなることがあります。ドライスーツはウェットスーツよりもかさが増えるため、BCDのフィット感を確認したり、ブーツ部分の大きさに合わせてフィンのサイズを見直したりする必要がある場合があります。
たとえば、Bismの「BOOST FIN(ブーストフィン)」は、大きめのブーツポケットを採用し、ドライブーツにも対応。スプリングストラップ仕様なので、厚みのあるドライブーツやグローブを着用しているときでも着脱しやすく設計されています。大きなベントを備えたラバーフィンで、力強い推進力と機動性を発揮するのも特徴です。

そして、さらに重要なのが、適切なウエイト量の調整です。ドライスーツではスーツ内に空気があり、さらに着用するインナーの厚さや素材によっても浮力が変わります。そのため、ウェットスーツと同じウエイト量がそのまま適切とは限りません。
動きやすさの違い
一般的に、体にフィットするウェットスーツは比較的動きやすい一方、ドライスーツはスーツ自体にゆとりがあり、さらにインナーも着用するため、ウェットスーツよりもかさばったり、動きにくく感じたりすることがあります。また、ドライスーツではスーツ内の空気は、常に高い位置へ移動します。たとえば、水中で足が頭より高くなると空気が足側に移動し、姿勢を戻しにくくなったり、意図せず浮上したりする可能性があります。
だからこそ、ドライスーツでは適切な姿勢や空気のコントロール、万が一足側に空気がたまったときの対処方法など、ドライスーツ特有のスキルを身につけておくことが大切です。
快適なのはどっち?
ウェットスーツとドライスーツ、どちらが快適かは、何を「快適」と感じるかによって変わります。ウェットスーツは水中で動きやすい一方、体にぴったりフィットするため、着たり脱いだりするのに苦労することもあります。
ドライスーツはウェットスーツより動きにくく感じることがありますが、体が濡れにくく、ダイビング後も暖かく過ごしやすいのが大きなメリット。特に気温の低い季節には、ダイビングの合間に濡れたウェットスーツで過ごさなくていいことも、快適さにつながります。

価格と寿命の違い
構造が複雑なドライスーツは、一般的にウェットスーツより価格が高くなる傾向があります。ただし、素材や機能、オーダーの有無などによって価格帯はさまざまで、高機能なウェットスーツとエントリーモデルのドライスーツでは、価格が近くなることもあります。
また、スーツを選ぶときは購入時の価格だけでなく、どのくらい長く使えるかも考えておきたいポイントです。
ウェットスーツもドライスーツも、使用頻度や保管方法、素材などによって寿命は大きく変わります。特にドライスーツは、シールやファスナーなどを交換・修理しながら使えるものも多く、適切にメンテナンスすることで長く愛用することができます。
お手入れの違い
ウェットスーツとドライスーツでは、ダイビング後のお手入れにも違いがあります。
ウェットスーツは、使用後に真水でしっかり洗って塩分や汚れを落とし、直射日光を避けて十分に乾燥させてから保管するのが基本です。必要に応じてウェットスーツ用のシャンプーなどを使うこともできます。
ドライスーツも使用後に真水で洗い、しっかり乾燥させることが基本ですが、それに加えて防水ファスナーや首・手首のシール、給排気バルブなどの状態を定期的に確認することが大切です。ファスナーには種類に応じた適切なケアが必要で、シールやブーツなども経年劣化すれば修理や交換が必要になることがあります。
ウェットスーツに比べると少し手間はかかりますが、適切なお手入れを続けることが、ドライスーツの防水性や快適性を保ち、長く使うことにつながります。

ウェットスーツとドライスーツ、潜り方はどう変わる?
ドライスーツでのダイビングは、ウェットスーツで潜るときとは少し勝手が違います。大きな違いは、スーツの中にある空気をコントロールする必要があることです。
たとえば、ドライスーツでは次のような操作やスキルが必要になります。
- 潜降時には、スーツが体を締め付ける「スクイズ」を防ぐため、ドライスーツに適量の空気を入れる
- 浮上時には、膨張する空気を排気バルブから適切に抜く
- BCDだけでなく、ドライスーツ内の空気の量や位置にも注意する
- 足側に空気がたまったときなど、姿勢が崩れた場合の対処方法を身につける
こうした違いを理解し、ドライスーツならではの操作に慣れることが、安全で快適なダイビングにつながります。
「ドライスーツで潜ってみたい」と思ったら、まずは正しい使い方を身につけることから。 PADIの「ドライスーツ・ダイバー・スペシャルティ」では、ドライスーツの着脱や給排気、浮力コントロール、トラブルへの対処などを実際に練習しながら、ドライスーツで快適に潜るためのスキルを身につけることができます。

PADIドライスーツ・ダイバー
ドライスーツは、正しい使い方を身につければ、ダイビングを楽しめる季節やフィールドをぐっと広げてくれるアイテムです。PADIの「ドライスーツ・ダイバー・スペシャルティ」では、ドライスーツでダイビングを始めるために必要な知識とスキルを学びます。
知識開発に加え、PADIインストラクターと実際にドライスーツを着用して練習しながら、次のようなことを身につけていきます。
- 自分に合ったドライスーツやインナーの選び方水面
- 水中でのドライスーツの基本的な使い方
- ドライスーツでの浮力コントロール
- よくあるトラブルを防ぐ方法と対処
- 基本的なお手入れやメンテナンス
ドライスーツで、潜れる季節をもっと広げよう
ウェットスーツとドライスーツには、それぞれに違った特徴があります。どちらが優れているというものではなく、水温や季節、ダイビングスタイルに合わせて使い分けることが大切です。
特に四季のある日本では、ドライスーツを使えるようになることで、これまで「寒そう」と避けていた季節もダイビングシーズンに変わります。冬ならではの海の景色や生き物など、暖かい季節とはまた違った水中世界に出会えるかもしれません。
ドライスーツに興味を持ったら、お近くのPADIダイビングショップに相談してみましょう。
ドライスーツの選び方は?
PADIジャパンのウェブサイトにある「ダイビング器材の選び方」では、各種ダイビング器材の選びのコツを掲載しています。ドライスーツの選び方は以下のリンクからご覧ください。
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