みなさん、こんにちは。この度、PADI AmbassaDiverに就任致しましたNPO法人三陸ボランティアダイバーズ代表のクマです。地元である岩手県の三陸海岸を拠点に環境保全活動を行なっています。
2011年3月11日に発生した東日本大震災による津波の被害を受けた三陸エリアの海中清掃からスタートし、現在は主に藻場再生活動を行なっています。近年はPADIインストラクターとして自分達の手で海を守り育てる地元ダイバーの育成に注力しています。
活動の目的は豊かな里海を育てて守ること。写真は磯焼けから回復した藻場。ダイバーによる海中清掃や藻場再生等の環境保全活動は漁業、教育、観光等、社会に様々な影響を与えています。
私の1日
私達の活動は地元の漁師や行政と密接につながっているので、年間を通して様々なダイビングをすることになります。例えば町を挙げての藻場再生活動であったり、漁協からの依頼でアワビの稚貝放流を行なったり、瓦礫の調査や生物の調査を行なったりします。勿論、インストラクターなので講習も開催していますし、ファンダイビングのガイドも行います。今回はそんな一年の中の1日をご紹介致します。
3時半:起床
夏至の頃には朝の4時には本州最東端の三陸はもうすでに明るい。多くの漁師たちは日の出前から既に動き出しています。
4時:漁場整備の潜水作業開始
震災直後から漁師とダイバーで二人三脚で海の復旧・復興活動を行なってきたことで二者の厚い信頼関係が生まれています。同じ海をフィールドにする者同士、お互いに協力して作業をすることが増えています。
この日の朝は三陸特産のマボヤの養殖施設の復旧作業でした。少し前の時化で養殖施設のロープが切れてしまった箇所を復旧します。
サーチスキルやロープワークが役立ちます。
陽が登るのが早いとは言え、海中はまだ薄暗いので水中ライトは必須です。
6時半:朝食
8時:参加者集合、午前中のダイビングの準備
9時:ブリーフィング
海中でどんな活動を行うのか説明をしていきます。初めて経験する作業もあるので陸上で練習をしてもらいます。また、毎日のように海中で地震の音が聞こえてくるので、避難の仕方や経路を確認しておきます。
9時半:ダイビング開始
8月、9月以外は基本的にドライスーツで潜られる方が多いです。
この日はアカモクのスポアーバッグ(種袋)をみんなで設置してもらいました。アカモクの雄雌や成熟具合等の確認をしながら進めていきます。
ドライスーツ+厚いグローブでの水中活動はウェットスーツの時よりも一つ一つゆっくりと確実な動作が必要になります。
アカモクの種から芽が出るのは来年の春、結果が楽しみです。
自分の海の森が育つのを観たいと、皆さんリピートしてくれます。途中には冬の初めに設置した昆布のスポアーバッグや種苗ロープから真昆布が元気に成長しているのが確認できました。
昆布やアカモク等の海藻の周りには様々な水中生物が集まってきています。
12時半:ランチ/ログ付け
基本的には午前中に2本潜り、その日のダイビングは終了になります。
近くの定食屋さんでランチをとりながらログ付けをします。
参加者の皆さんが撮影された写真や動画を確認しながら海藻の生育具合を確認したり、魚の種類の変化、環境の変化も記録します。近年は沖縄に棲むグルクンやヨスジフエダイ等、海藻を食べるアイゴやメジナの成魚が三陸でも確認されるようになってきています。ダイバーの撮影する写真が環境の変化を捉える一助になっています。
14時:打ち合わせ オンライン会議
15時:翌日の準備 タンクチャージ スタッフ解散
朝が早かったのもありますが、出来るだけ早めに解散できるように心がけています。息の長い活動をするためには無理をしすぎないのが大事だと思います。
まとめ
震災後、瓦礫の撤去や潜水工事を行う潜水士や様々な調査を行う研究者ダイバー、そしてレジャーダイバー等、様々な分野のダイバーが垣根を超えて集まり復興に尽力してくれました。インストラクターとしての私の役割はダイバー同士の橋渡しでした。そして現在はそれらの知識やノウハウを活かし磯焼け対策や藻場再生、海中清掃等の環境保全の活動ができています。さらにはそういった活動に共感し、自分も参加したいとライセンス講習を申し込む方も増えてきています。
この活動を通して海とより深く、そして社会とつながっていくことを実感しています。