科学者たちは海水温の急激な上昇を報告しており、ダイバーたちはその影響を実感しています。

約60年間、レクリエーションダイバーたちは海中の美しさと絶景を楽しんできました。今日でも、スキューバダイバーたちは世界中の多くの健全なダイビングスポットを探索し、楽しんでいます。しかし、未来のダイバーたちは同じ特権を享受できないかもしれません。その理由は、海水温の上昇です。


上昇する海水温: 基礎知識

人為的な気候変動の結果、地球は10年ごとに0.18°Cのペースで急速に温暖化しています。この温度上昇は一見わずかに思えますが、地球を冷やすために海洋は大気からの余分な熱の90%を吸収し、その結果、海洋生態系が損なわれ、多くの海洋生物が死滅しています。

私たちはまさに今、記録的な海水温の高さを経験しています。例えば、2023年にはアメリカフロリダの水温が前例のない38°Cに達し、大西洋もこれまでにない数値を記録し、地中海は28°Cを超えました。

CO2および温室効果ガスの排出が続く限り、海水温は上昇し続け、地球と海洋への損害は取り返しのつかないものになる可能性があります。

スキューバダイバーとして、海洋の景観が変わりつつあることはすでにお気づきでしょう。海水温の上昇がダイビングスポットと地球に与える影響をご説明します。


1. 大規模なサンゴの白化

海水温が異常に高くなると、サンゴはストレスを受けます。このストレスにより、サンゴはゾーキサンテラを体内から排出してしまうのです。藻類が排出されると、サンゴの組織が透明になるため、内部の白い骨格が透けて見えるようになります。これが「白化現象」と呼ばれる現象で、サンゴが白く見える原因です。

Am image of staghorn corals underwater

白化したサンゴは少しの間は生存できますが、水温が元に戻らないと死んでしまいます。サンゴ礁が消失すると、それが復活することは非常に難しいです。そしてサンゴ礁がないと、そこに依存するすべての海洋生物の住処、栄養、繁殖の場を失うことになります。

サンゴの白化は世界的な問題であり、日本、カリブ海、ハワイ、グレートバリアリーフなど多くの人気ダイビングエリアに影響を与えています。


2. 海藻の森の壊滅的な消失

海藻の森は大気中からCO2を吸収し、気候変動の進行を遅らせる役割を果たしています。しかし、サンゴ礁と同様に、海藻の森も海水温の急上昇によってストレスを受けています。

Two scuba divers in a California kelp forest

2014年以降、アメリカカリフォルニアでは海藻(ケルプ)の森の95%以上が失われ、ローカルの野生生物、特にラッコやウニに影響を及ぼしています。


3. マングローブの消失

マングローブの森は、風、潮流、嵐、高波からサンゴ礁や海岸線を守る役割を担っています。また、大気中からCO2を吸収する働きもしてくれています。

A split shot of a mangrove forest above and below the surface

しかし、世界的な海水温の上昇と海面の上昇が続く中で、マングローブの生態系も脅威にさらされています。


4. 魚の移動

海洋の温暖化に応じて、移動可能な魚たちは生存のために冷たい水域へ移動し、海洋生物多様性や地元の漁業に影響を及ぼしています。底生の海洋生物(ウナギ、エビ、ヒトデ、一部のサメなど)は同じように移動することができません。

two whales swim underwater

5. 漁業と観光業にも及ぶ問題

サンゴ礁はすべての海洋生物の25%の生息場所です。サンゴ礁(および海藻や他の生態系)が失われるということは、大多数の海洋生物が生息地を失うことを意味し、生態系と食物連鎖のバランスが崩れることに繋がります。実際、10億以上の人々が収入源と食料源としてサンゴ礁に依存しています。乱獲や汚染も海洋生態系の崩壊を引き起こす可能性もありますが、海水温の上昇もその一因です。

また、サンゴ礁は旅行、観光、レクリエーションの分野で数千もの雇用を生み出し、年間推定360億米ドルを世界経済に貢献しています。しかし、白化したサンゴはダイバーや旅行者にとって魅力的ではないので、持続可能な観光がますます重要になります。


6. 酸素不足の海洋

海洋が温暖化すると、酸素の保持力が低下し、海洋生物が生息できる海域が制限されます。特に大型の種(マグロ、マカジキ、サメなど)はより多くの酸素を必要とするため、最も影響を受けやすく、乱獲の危険がある深い水域に移動を余儀なくされています。

schooling grey sharks in australia, one of the best places to dive with sharks

1950年代以来、海洋の酸素量は2%減少しており、今後も減少が続くと予想されています。


7. 海洋の酸性化

温暖化した海洋は大気からより多くのCO2を吸収するし、海洋生物に害を及ぼす可能性があります。例えば、貝殻を作る種(牡蠣、アサリ、ムール貝など)は殻や構造を作り、維持するのが困難になります。

GiantClam_GBR_Shutterstock

今日、海洋は産業革命前に比べて30%酸性度が増しており、科学者たちの今後50年以上の予測は芳しくありません。


8. 海面上昇

海水温の上昇は、氷河や氷床を膨張・融解させ、海面の上昇に繋がります。海面が上昇すると、沿岸地域における水害のリスクが高まり、そして経済、居住、社会、農業の景観を変化させてしまいます。

An aerial view of the Maldives

海面上昇のリスクが最も高い地域は、アメリカ東海岸、中国、インド、オランダ、そして、モルディブ、インドネシア、バハマなどの多くの島国です。


9.さらなる異常気象

気候危機が激化し、海水温が急上昇する中で、気象パターンも変化し、異常気象が増えています。一般に、雨の多い地域はより雨が多くなり、乾燥した地域はより乾燥する傾向にあります。これにより、旅行業界は大規模な遅延やキャンセルの影響を受けるでしょう。

hurricane relief

10. ダイブサイトの変化

多くのダイビングスポットが年月とともに大きく変わりました。美しいサンゴ礁と華やかな魚で人気なダイビングポイントは、かつての面影を失ってしまっていることもあります。なので、これから計画している場所がまだ同じ魅力を持っているかどうか確認しましょう。


Divers participate in a dive against debris

あなたができること

私たちが大切にしているものを守ることは、困難な戦いかもしませんが、私たちの総力を結集することで、海の健全性を育み、ひいては気候変動がもたらす人的、社会的、環境的、経済的影響から地球を守ることができます。

私たちと共に力を合わせ、変化をもたらしましょう。


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