なぜ海洋生物を保護するのか?

海は、私たちの地球の70%以上を占めています。私たちが呼吸する1秒1秒にも海が関係しています。さらに、食料、医薬品、エネルギー資源など、多くのものを私たちに提供してくれています。海は、私たちの生活に大きく関わっていますが、私たちが遊ぶ場所でもあります。常にインスピレーションの源なのです。
もちろん、ダイバーとして皆さんも海を愛しているでしょう。

Underwater - Coral Reef- Koh Phangan
パガン島のカラフルなサンゴ礁。画像提供:Phangan Photography.

私たちがダイビングで見たい海洋生物たちは、健全な海に依存しています。そのため、海を守ることは、豊かな生物多様性と美しさを未来の世代につなぐことでもあります。
ここでは、海洋生物を保護するため、私たちができる方法をいくつかご紹介します:

1. PADIトーチベアラーになる

PADI のロゴに描かれた、灯火(トーチ)を持ち導く人(ベアラー)。PADI は実現のための5つの指針を立て、この志を持つ人を「PADI Torchbearer トーチベアラー」と呼びます。
PADIトーチベアラーになって、水中に変化を起こすきっかけを作りましょう。海がなぜ大切なのかを学び、思いやり、家族や友人と共有することで、海のために行動を起こし、海洋生物を保護するように他の人々に伝え、気持ちを奮い立たせることができます。
トーチベアラー・コミュニティに参加することで、あなたの声と行動が集団となり、意味のある変化をもたらすことができます。これは文字通り、数の力です。

PADIワールドワイド/プレジデント& CEOのドリゥ・リチャードソンは言っています。
「ご存知のように、PADIは皆さんや私のようなPADIトーチベアラーを10億人集めることを目標としています。この目標を達成するためには、常に新しいトーチベアラーやパートナーを仲間に加える必要があります。私たちのように、他の人々が海との個人的なつながりを築く手助けをすれば、海の保護がなぜそれほど重要なのかを理解し、私たちに参加し、一緒に行動しようという意欲が湧いてくるでしょう」。

 

 


 

2. ごみとプラスチック汚染の削減

合衆国魚類野生生物局(US Fish and Wildlife Service)によると、「海洋ごみは、世界の沿岸地域、海、水路の健全性に対する最も広範な世界的脅威のひとつである。それは、地域、地方、国、そして国際的な関心事である」と言っています。

なぜかというと、それは 海洋ごみは野生生物に害を及ぼし、サンゴ礁や藻場のようなデリケートな生息環境にダメージを与え、劣化させる可能性があります。また、海洋ごみは航海の安全を妨げることもあります。

さらに、海洋汚染が経済に悪影響を及ぼすという証拠もあります。カリブ海やハワイのようなダイビングの目的地では、手つかずの海や海岸線を期待して旅行する人がいます。しかし、実際に目にしたものが、頭の中にあるのどかな楽園と違っていたら、また来たいと思わないでしょうし、地域経済も悪くなります。また、海洋ごみは、漁業や海運業に経済的損失を与え、沿岸地域社会の幸福や生活の質を脅かし、さらには人間の健康や安全も脅かしま会の幸福や生活の質を脅かし、さらには人間の健康や安全も脅かします。

 A sea turtle swims and eats a plastic bag it mistakes for a jellyfish Baby Octopus found in Ras Mohamed, Sharm el Sheikh in plastic bag

(左)首に漁網が巻き着き、傷ついたアザラシ (中央)ウミガメはビニール袋を大好物のクラゲと勘違いすることが多い (右)シャルム・エル・シェイクのラス・モハメドで発見されたビニール袋に入ったタコの赤ちゃん

 

海洋生物に害を与える「海ごみ(マリンデブリ)」

ほとんどの人は、海のごみの量が多いことを理解していますが、それが海洋生物にどのような影響を与えるかを知っている人は少ないでしょう。
海洋ごみやプラスチック汚染は、毎年何百万もの海洋・沿岸の野生生物を傷つけたり殺したりしています。例えば、海に投棄された漁具(ゴーストギア)や釣り糸は、クジラ、サメ、アザラシなど、大型の動物に巻き付きます。海産哺乳類の場合、海底に足を取られ、息を吹き返すことができないため、切断や溺死を引き起こすことがあります。

海鳥や魚類、その他の生物も、不健康な量のごみやマイクロプラスチックを摂取しています。残念ながら、これらのプラスチックは体内で分解・生分解されることはありません。例えば、ウミガメの成体は、水中に浮遊するビニール袋を好物のクラゲと勘違いすることがよくあります。この袋が腸を塞いでしまい、飢餓状態なのに満腹だと思わせたり、重要な栄養素の吸収を妨げてしまうことがあるのです。また、ウミガメの赤ちゃんは、水柱の中のマイクロプラスチックをかじり、それが消化管をふさいで破裂させてしまいます。

海にごみは行かせない!海洋ごみを「上流」で食い止めよう!

では、私たちにできることは何でしょう?実は、海ごみの8割は街(陸)から来たものなのです。しかも、そのほとんどが有害なプラスチックで、生分解されずに蓄積され、食物連鎖の上流に移動していきます。

私たちの生活や行動が、実は、海へつながっているのです。普段の生活でも、ごみや使い捨てプラスチックの量を減らすことで、私たちの大切な海や海岸の環境、そして私たちが愛する海洋生物に害を与える前に、問題を「上流」で食い止めることができるのです。


3. 海洋生物保護のための活動に参加する

第一はごみを減らすこと、第二は海や海岸からごみを回収することです。そのためには、クリーンナップなどの清掃活動に参加するのが簡単で楽しい方法です。しかも、清掃活動は陸上(海岸)でも水中でも行なうことができ、最大限の効果を発揮します!

AWARE(日本)も協力しているNPO法人海さくらでは、毎月定期的に神奈川県・片瀬海岸のごみ拾いを行なっています。純粋なごみ拾いもあったり、イベントを絡めたごみ拾いもありますので、ぜひご参加ください。

>>NPO法人海さくらのウェブサイトはこちらから

Two ocean advocates collect trash from a beach.
「海のごみの8割は、街から来ている」という事実を知っていますか?

海岸を散歩したり、ダイビングしたりするときは、落ちているごみが気になるでしょう。ごみを回収することで、野生生物やデリケートな水中環境を守ることができます。

A diver removes a ghostnet
世界の海に流出している漁具「ゴーストギア」は、水中から撤去されるまで海洋環境に問題をもたらします。

これらの水中に投棄された漁具「ゴーストギア」の流出量は年間50万~115万トンとも言われており、多くがプラスチックでできています。これらの漁網は600 年間は生分解されません。海洋プラスチックごみによって、多くの海洋哺乳類、海鳥、ウミガメなどの生物が被害を受けています。海洋プラスチック被害の中でも最も危険なものがこの「ゴーストギア」なのです。

AWARE(日本)は、他企業と協力して2022年より「廃漁網の回収とリサイクルプロジェクト」を開始しました。漁網が海に投棄されないように適正な回収方法を提案し、さらに使用済み漁網を資源として回収し、より付加価値の高い製品にアップサイクルする仕組みを構築することが目標です。

 

各地域で行なわれている清掃活動や、環境保護・保全活動に参加する

さらに、友人と一緒に大きなインパクトを与えたいなら、素晴らしい各種取り組みに参加することを検討してみてはいかがでしょうか。

PADIプロメンバー主導による水中と陸上の清掃活動

全国のPADIショップやプロフェッショナル・メンバー主導による海岸や水中のクリーンナップ活動が行われています。この際に使用するごみ袋はバイオマス(資源米)を原料とした「ライスポリ」で作られています。ライスポリパックは燃焼カロリーが低いため、焼却炉にも優しく、有害ガスの発生がありません。政府の備蓄米で古くなったため食べられないものや、様々な理由で食用に適さないお米「古古米」を使った米率70%のペレットをベースポリマーに、ポリプロピレン樹脂で希釈した米率35%製品で、化石原料系プラスチック製品と比較するとCO2排出量を約30%削減できています。

PADIプロメンバーが実施する清掃活動に参加希望の場合は、以下の報告ページに報告実績のあるPADIショップ/プロメンバーにお問い合わせください。

 

  

「海岸のごみ拾い」活動

NPO法人海さくらでは、毎月、神奈川県・片瀬海岸(江の島)でごみ拾いを行なっています。海さくらは「目指せ!日本一楽しいゴミ拾い!」をスローガンとして掲げ、2005年から活動しています。AWARE(日本)も2012年よりNPO法人海さくらのごみ拾い活動に協力し、応援しています。

 

  

「沖縄のサンゴ保全」活動

「自分たちの手でサンゴを植え付け、かつての水中景観を取り戻したい」。「チーム美らサンゴ」は、沖縄県・恩納村でのサンゴ苗の植え付けプログラムや沖縄県外における啓発イベントを通じて、「美ら海を大切にする心」をより多くの人々に広げることを目的に活動しています。

チーム美らサンゴ」は2004年に沖縄県内外の企業が集まって結成され、地元関係者の協力や環境省・沖縄県・恩納村などの行政の後援を得ながら、生態多様性の宝庫であり、観光資源でもあるサンゴの保全に取り組んでいます。

AWAREとPADIはチーム美らサンゴが結成された2004年からチームに参加し、沖縄のサンゴの保全活動に協力しています。

 

  

「廃漁網の回収とリサイクルプロジェクト&水中クリーンナップ」活動

漁網が海に投棄されないように適正な回収方法を提案し、さらに使用済み漁網を資源として回収し、より付加価値の高い製品にアップサイクルする仕組みを構築することを2020年より進めてきました。地元のPADIメンバー、自治体、漁協と協働し、「ゴーストギア」発生予防策に取り組み、適正な漁具の管理を促しつつ、使用済みとなった漁網の回収システムを構築することが目標です。

「廃漁網の回収とリサイクルプロジェクト」は、2023年4月現在下田・稲取地区で行なわれていますが、今後は協力者を募ってエリアを拡大予定です。

稲取で行なわれている「廃漁網の回収プロジェクト」では、同日に水中クリーンナップも実施されており、一日を通じて環境保護・保全活動を体験することができます。
こちらにご参加希望の場合は、以下のリンクから「稲取マリンスポーツセンター」にお問い合わせください。

 

 

 

  

 

他にも、ごみ拾いをはじめとするさまざまな環境保護・保全イベントが計画されています。皆さんの地元でも行なわれているか、ぜひ探してみましょう!

 


4. 海洋生物保全のために持続可能な選択をする

消費者である私たちは、海を助けるために多くの力を持っています。食べ物、衣服、交通手段、掃除用具など、私たちの選択はすべて、文字通り海やそこに住むすべての生物に波及していきます。海、地球、そしてすべての生物種を念頭に置いて、持続可能な選択をしましょう。

A plastic bottle sits at the water's edge on a beautiful, tropical beach.
南国の海岸に流れ着いた使用済みペットボトルは、離島でもプラスチック汚染の世界的危機を浮き彫りにしています。

ストローや食器、ボトル、レジ袋など、使い捨てのものをやめ、再利用できるものを選びましょう。そうすることで、ごみを減らし、海の安全を守ることができます。すでに再利用可能なものを使っている人は、家族や友人にプレゼントして、持続可能な旅を始める手助けをすることも考えてみましょう。

また、リサイクルされたプラスチックなどの再生品から作られた製品を選ぶこともできます。
PADI Gearでは、海から回収されたプラスチックや、ペットボトルから再生された素材を使って作られたキャップやウェアなどを販売しています。また、「オーシャンボトル」や「Klean Kanteen」、「GOTBAG」、「EARTH FRIENDLY」など環境意識の高いブランドとのコラボ製品も多数ご用意しています。

 

私たちが日常生活の中で持続可能な選択をすることは、海洋生物の保護やより健全な海を積極的にサポートすることになります。


5. 海洋保護区を支援する

2030年までに生物多様性の損失を食い止め、回復させる(ネイチャーポジティブ)というゴールに向け、2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする、野心的かつ必要な目標である「30 by 30(サーティ・バイ・サーティ)」をご存知でしょうか。これは、機能的で回復力のある生態系を確実に維持し、この惑星に住む種を保護するために必要な最低限の保護であるというのが科学者の意見です。

海にとっては、海の健康を取り戻し、野生生物に避難場所を提供し、既存の悪影響を逆転させ、気候変動に対する回復力を高め、人類への生態系サービスを持続させることにつながります。つまり、海洋生物にとって健康な海があることを保証するのです。とても重要なことです!

A mom and calf humpback whale are in the foreground, and a male is in the background. The water is dark and clear.
子クジラを連れた母ザトウクジラが、攻撃的なオスの追跡に逃げる様子(トンガにて)

現在、世界の海洋の5%未満しか、海洋保護区として保護されていません。海洋保護区の設立と拡大に向けた地域、国、国際的な取り組みを支援することで、私たちは一丸となって30 by 30に近づいていくことができるのです。

重要な海岸線の生態系を忘れてはいけない

この保護は、海草やマングローブ、サンゴ礁のような重要な沿岸の生息地にも広げることができます。これらの環境はいずれも、アマゾン熱帯雨林よりもさらに多く、とんでもない量の大気中の炭素を吸収するため、「ブルーカーボン」の生態系と考えられています。そのため、海草やマングローブ、サンゴ礁の再生は、気候変動に対する私たちの「秘密兵器」になり得るのです。ですから、これらの植物をより多く植え、保護することで、私たちが直面している気候の危機に対応し、緩和し、新しい解決策を見出すための時間を確保することができます。

Maldives Seagrass - snorkeller
海草・海藻の再生は、海洋と気候の解決策です。

これらの海洋生態系は、多くの海洋生物にとって重要な保育の場、採餌場としての役割も果たしています。数多くの魚類、サメ、無脊椎動物、甲殻類は、サンゴ礁を生き抜くために十分な大きさに成長するために、マングローブや海草藻場に依存しています。したがって、30 by 30の取り組みの一環として、これらの地域を保護することで、海洋生物と地球を守ることができるのです。

ぜひ皆さんもAWARE(日本)の活動をご覧いただき、この中からできるものに参加してみてください!

 

 

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