周囲を海に囲まれた日本には、個性豊かなダイビングエリアがいっぱい。日帰りで気軽に行ける場所にも、見どころ満載の海があるのです。第7回は伊豆半島西エリアのダイビングエリアを紹介します。
関東や東海だけでなく、関西・中部のダイバーも訪れる伊豆半島は、まさに日本のダイビングの中心的存在となっています。半島を取り囲むようにダイビングエリアが並んでおり、見どころはさまざま。大物、回遊魚からマクロ生物、迫力の地形にソフトコーラルの群生まで、あらゆるダイバーを満足させる要素を持っています。伊豆半島西側のエリアは、日本最深湾の駿河湾と黒潮の恩恵で、ダイナミックな地形から珍しい生き物まで見どころが満載! 富士山を見ながら潜れるエリアもあり、東エリアに比べるとのんびりとした雰囲気で、ゆったりと楽しむことができます。
雲見
西伊豆のダイビングエリアとしては最も南に位置する雲見。施設が充実しているため潜りやすく、生物も豊富に観察できるなど、いいこと尽くめ。ダイナミックな地形が人気で、水中には大小さまざまな穴があり、光と影の美しいコントラストの中、アドベンチャー気分でダイビングを楽しむことができます。水面から顔を出すことができる場所もあり、そこに頭上から光の筋が差し込むシーンはとても幻想的。魚影の濃さも大きな魅力で、穴の中や壁沿いにはネンブツダイやクロホシイシモチが群れ、外洋側ではキビナゴやイワシなどの小魚を追ってカンパチやワラサの大群が登場することも。ハナタツやカエルアンコウなどの人気マクロ生物も豊富なので、じっくりとフィッシュウオッチングを楽しみたい人にもおすすめです。

人気ダイビングポイント:牛着岩
港からボートで約2分の距離にあり、最大水深は26m。起伏の激しい地形が特徴で、トンネルやアーチ、ケーブ、縦穴などの多彩な地形を満喫できます。ケーブ内にはハタンポやキンメモドキが群れをなし、魚影の濃さも魅力。海底が白い砂地の「アウトサイド」と呼ばれるエリアでは、泳ぐだけで浮遊感を味わえます。洞窟や砂地、魚の群れ、ウミウシなどが一度に楽しめるため、コース取りの組み合わせ次第で何度潜っても飽きません。地形の美しさと豊富な生物相がそろい、贅沢なダイビングを堪能できるポイントです。


アクセス
車:東京から約3時間40分。東名高速道路→沼津IC→伊豆縦貫道→国道136号線→松崎経由で雲見へ。
電車:東京駅から新幹線で約55分。熱海駅から伊豆急線で約90分、下田駅からバスで約50分、松崎バスターミナルで乗り換え、約20分で雲見へ。
浮島
西伊豆の美しい海岸線に位置するダイビングエリアで、海水浴や磯遊びにも人気があり、夕日の絶景スポットとしても知られています。周囲に建物が少ないため、夜には流れ星や天の川を眺めることも。ビーチには世界的にも珍しい海底火山の痕跡が残り、ジオ・ダイビングが楽しめるほか、通年ナイトダイビングが可能です。「ウミウシ天国」と称されるほどウミウシの種類が豊富で、1ダイブで20種近く観察できることも。洞窟、クレパス、アーチなどの地形が広がり、ワイドからマクロまで幅広いダイビングを満喫できます。夏から秋にかけてはボートポイントでタカベのトルネードが発生し、迫力満点の魚群が楽しめます。プライベート感あふれる環境でのんびりとしたダイビングが可能な魅力的なエリアです。

人気ダイビングポイント:浮島ビーチ
穏やかな入り江のダイビングポイントで、最大水深12〜13mと浅めで流れもほとんどなく、セルフダイビングも可能。500万年前の海底火山の痕跡が残る地形で、ジオ・ダイビングが堪能できます。ビーチにはアーチやトンネル、ホールなどが点在し、多彩な地形を楽しめるほか、広い砂地には魚礁やガイドロープが設置され、安全に潜ることができます。特にウミウシが豊富で、年間250種前後が発見される「ウミウシ天国」として知られ、レアな種類にも遭遇できることが魅力。甲殻類や魚の生息も多く、フォトダイブにも最適なスポットです。



アクセス
車:東京から約3時間。東名高速道路→沼津IC→国道136号線→松崎経由で浮島へ。
電車:東京駅から新幹線で約1時間。三島駅で伊豆箱根鉄道に乗り換え、修善寺駅へ。修善寺駅からバスで約100分、松崎バスターミナルで乗り換え、約20分で浮島へ。
田子
田子は伊豆半島西側の真ん中よりやや下に位置し、駿河湾に面するダイビングエリア。ボートダイビングが主流で、各スポットまでは10分ほどの距離。1本潜るごとに港へ戻るため、船酔いの心配も少なく、ゆったりと楽しめます。ダイビングポイントは、ダイナミックな地形と迫力の魚群が見られる「外海」、エダサンゴの群生など穏やかな景観が楽しめる「内海」に分かれており、外海の「フト根」は水深8~40mの隠れ根で、圧倒されるほどの魚影の濃さが魅力。内海にはエダミドリイシが群生する「白崎」や、カエルアンコウや甲殻類が観察できる「弁天島」があります。5~9月限定でオープンする「田子島」は、ソフトコーラルの群生や大型回遊魚に出会えることで人気。「日本の夕日100選」に選ばれる美しい景観が見られるのも魅力です。
人気ダイビングポイント:フトネ
中級者~上級者向けのボートポイント。水深40m付近から立ち上がる巨大な根や入り組んだクレバスが特徴で、根の周囲にはソフトコーラルやウミウチワが群生し、キンギョハナダイやサクラダイ、イサキ、タカベなどが群れています。秋にはワラサやカンパチなどの大型回遊魚も登場。水底から水面を見上げた際の魚影の濃さは圧巻で、ワイドからマクロまで幅広く観察することができます。流れがあることもあるため、中性浮力をしっかりと取ることが重要。ダイナミックな地形と豊かな生態系が魅力の、西伊豆随一のダイビングポイントです。
アクセス
車:東京から約3時間。東名高速道路→沼津IC→国道136号線→西伊豆バイパス経由で田子へ。
電車:東京駅から新幹線で約1時間。三島駅で伊豆箱根鉄道に乗り換え、修善寺駅へ。修善寺駅からバスで約100分、松崎バスターミナルで乗り換え、約20分で田子へ。
黄金崎・安良里
ビーチとボートのどちらも楽しめる、西伊豆屈指の人気エリア。「黄金崎公園ビーチ」は美しい芝生の公園に面した景観豊かなビーチダイビングポイントで、海底の白い砂地はマクロ生物の宝庫。ウミウシや甲殻類など珍しい生物が数多く観察できます。海況は年間を通じて安定しており、初心者の講習にも最適です。ボートポイントも充実しており、港から約5〜8分で到着。初夏にはトビエイの群れが見どころで、マンボウやウミガメ、ハンマーヘッドシャークなどの大物が目撃されたことも。秋には壁のような魚の群れが圧巻。施設も充実しており、リゾート気分で快適にダイビングを楽しむことができます。

人気ダイビングポイント:黄金崎公園ビーチ
穏やかな入り江に広がる白砂のビーチで、年間を通じて安定した海況が魅力。水深は5〜18mと浅めで流れもほとんどなく、初心者から上級者まで幅広く楽しめます。西伊豆では珍しい白砂の広がる海底には、ネジリンボウやクマドリカエルアンコウ、春にはでハナイカ高確率で見ることができる、フォト派ダイバーにも最適。初夏には小型のトビエイ、秋にはカンパチが回遊することも。施設も充実しており、広々とした休憩室やスーツのまま入れるお風呂が完備されており、快適なダイビング環境が整っています。




アクセス
車:東京から約2時間30分。東名高速道路→沼津IC→国道136号線→西伊豆バイパス経由で黄金崎・安良里へ。
電車:東京駅から新幹線で約1時間。三島駅で伊豆箱根鉄道に乗り換え、修善寺駅へ。修善寺駅からバスで約90分。
土肥
初心者から上級者まで楽しめる多彩なダイビングポイントが揃うエリア。北部の八木沢地区は天候に左右されにくく穏やかで、ビギナーも安心して潜れるのに対し、南部の小下田地区は中上級者向けのハードなスポットが多く、ダイナミックな地形や迫力ある魚群が魅力です。沈船や魚礁、カラフルなソフトコーラルの群生が見られるほか、まるで異世界のような落ち着いた風景も。エントリー/エキジットがより快適になったビーチポイントに加え、豊富に用意されたボートダイビングのポイントで、マクロ生物の撮影からワイドな群れの観察まで、豊富なバリエーションで飽きることなく楽しむことができます。「鷹の巣」「とび島沖 partⅡ」など期間限定で開放されるボートポイントにもぜひ潜りたいところです。
人気ダイビングポイント:通り崎 湾内
風の影響を受けにくい穏やかなダイビングポイントで、砂地と岩場に分かれており、遠浅の地形が特徴。水深は最大25mで、年間を通じて安定した海況のため、講習や体験ダイビングにも適しています。砂地ではネジリンボウやミジンベニハゼ、ヒレナガネジリンボウなどが観察でき、秋には黒潮に乗ってきたミナミハコフグの幼魚やカミソリウオ、ニシキフウライウオが現れることも。魚影が濃い岩場では、カエルアンコウやトウシマコケギンポ、チョウチョウウオの仲間も見られ、フォト派ダイバーにも人気です。また、ビーチエントリーで沈船ダイビングが楽しめるのも魅力となっています。
アクセス
車:東京から約2時間30分。東名高速道路→沼津IC→国道136号線→西伊豆バイパス経由で土肥へ。
電車:東京駅から新幹線で約1時間。三島駅で伊豆箱根鉄道に乗り換え、修善寺駅へ。修善寺駅からバスで約50分。
井田
井田は、伊豆半島西側に位置する穏やかなダイビングエリアで、四方を山と海に囲まれた自然豊かな環境が魅力。潮通しが良く、年間を通じて高い透明度を誇り、「井田ブルー」と呼ばれる美しい青の世界を楽しむことができます。ビーチからエントリーできるポイントは全長200mと広く、自由にコースを楽しめます。急深な地形が特徴で、魚影の濃さも圧巻。春には幼魚たちが海藻の中で成長し、秋にはタカベの大回遊が見られるなど、季節ごとの生態系の変化が楽しめます。晩秋から冬にかけてはクロホシイシモチの大群も迫力満点。マクロ派のダイバー垂涎の生物層の豊かさがあります。のんびりした集落と古き良き日本の街並みが残る井田は、初心者からベテランまで楽しめるエリアです。
人気ダイビングポイント:ビーチ
富士山を北に望む絶好のロケーションにあるビーチポイント。砂浜がなくゴロタ石の海岸のため、水質が安定しており、「井田ブルー」と称されるほど年間を通じて高い透明度を誇ります。潮通しが良く、回遊魚の群れやマクロ生物が豊富に生息。夏~秋にはクマドリカエルアンコウ、ムレハタタテダイなども観察でき、冬にはウミウシが増えてマクロウォッチングが楽しめます。ビーチからエントリー可能で、幅200mのポイント内は浅場から深場まで地形が多様。初心者から上級者まで幅広いダイバーに人気で、一年を通じて魅力的な海を堪能できます。

アクセス
車:東京から約2時間。東名高速道路→沼津IC→国道414号線→県道17号線経由で井田へ。
電車:東京駅から新幹線で約1時間。三島駅で東海道本線に乗り換え、沼津駅へ。沼津駅からバスで約1時間。
大瀬崎
伊豆半島の西側、沼津から車で1時間ほどのところにある、駿河湾に突き出した800mほどの岬が大瀬崎です。日本屈指のダイビングエリアとして知られ、その安定した海洋環境と多様な生物相が魅力。ダイビングポイントは「湾内」「岬の先端」「外海」に分かれ、深海性の生物やクジラ、マンタなどの大物が姿を現すこともあるほど、多様な生物が観察できます。特に「湾内」は穏やかで、初心者の講習にも適しているほか、フォト派ダイバーにも人気。ダイビングサービスも数多くあり、それぞれの目的に応じたダイビングが楽しめます。また、岬の先端には大瀬神社や国の天然記念物であるビャクシン樹林、伊豆七不思議のひとつ「神池」があり、観光スポットとしても人気です。

人気ダイビングポイント:湾内
講習生から上級者まで幅広いダイバーに対応したポイントで、200mに及ぶビーチからエントリーが可能。流れもほとんどなく、安定した海況が魅力です。ゴロタ沿いにはスズメダイやソラスズメダイ、砂地には水神様のオブジェや魚礁が沈み、カエルアンコウやミジンベニハゼ、ネジリンボウなど多種多様な生物が観察できます。冬にはキアンコウやミズウオといった深海魚が姿を見せることもあり、フォト派ダイバーにも人気。四季を通じて見どころが豊富で、初心者からベテランまで楽しめるダイビングポイントとなっています。



アクセス
車:東京から約2時間10分。東名高速道路→沼津IC→国道414号線→県道17号線経由で大瀬崎へ。
電車:東京駅から新幹線で約1時間。三島駅で東海道本線に乗り換え、沼津駅へ。沼津駅からバスで約1時間。
平沢
大瀬崎と獅子浜の間に位置し、富士山を一望できる景観が魅力のダイビングエリア。幅約230mの白い砂浜「らららサンビーチ」が広がり、平成25年度には全国の水浴場の中で特に水質が良好な場所として選ばれています。平坦な地形でエントリー&エキジットポイントが複数あり、風の影響を受けにくく海況が年間を通じて安定しているため、初心者でも安心して楽しめるのが魅力。ハゼ、ウミウシなどのマクロ生物が豊富で、特に夏には黒潮に乗って南方から季節来遊魚が訪れ、カラフルな水中景観を楽しめます。ボートダイビングも可能で、淡島周辺にダイナミックな地形や回遊魚の群れを満喫できるポイントを用意。アクセスもよく、沼津ICから車で約45分、駐車場とダイビング施設が隣接しており、快適な環境でダイビングを楽しめるのも人気の理由です。

人気ダイビングポイント:平沢ビーチ
ダイビング施設の目の前に広がるビーチポイント。水深5〜25mと浅めで流れもほとんどなく、穏やかな海況のため、初心者の講習やリフレッシュダイブにも最適です。東側は海藻の林を抜けると小魚の群れが広がり、ミドリイシサンゴやイソギンチャクが群生するエリアで、クマノミやミツボシクロスズメダイの幼魚が観察できます。西側はメジナやボラなどが生息し、時にはエイの姿も見られることも。ヘッドランド周辺は潮通しが良く、ソフトコーラルが豊富で、クロホシイシモチやカマス、ミナミハタンポの群れが楽しめ、マクロとワイドの両方でダイビングの魅力を堪能できます。

アクセス
車:東京から約2時間。東名高速道路→沼津IC→国道414号線→県道17号線経由で平沢へ。
電車:東京駅から新幹線で約1時間。三島駅で東海道本線に乗り換え、沼津駅へ。沼津駅からバスで約1時間。
獅子浜
伊豆半島西側のダイビングエリアでは最北端に位置し、沼津ICから車で約30分とアクセスの良さが魅力。台風や低気圧の影響を受けにくく、年間を通じて潜水可能です。水中はゴロタと砂地が広がり、魚影が濃く、特にサクラダイの群れは圧巻。沖に向かって急勾配に落ち込む地形のため、テクニカルダイビングのトレーニングにも利用されるほか、ディープダイビングも手軽に楽しめます。夏から秋にかけてはカンパチやワラサなどの回遊魚が現れ、カミソリウオなどの生物も豊富。通年ナイトダイビングが可能で、近隣には天然温泉もあるため、快適なダイビング環境が整っています。
人気ダイビングポイント:ビーチ
エントリー/エキジットがしやすく、初心者から上級者まで快適に楽しめるダイビングポイント。北側と南側の2か所からエントリー可能で、コンクリートで整備された安全なアクセスが魅力。浅場の砂地エリアには広い棚があり、各種講習にも最適です。ガイドロープ沿いに深度を取れるため、ディープダイビングもしやすい環境となっています。砂地にはハゼ類が多く生息し、フィッシュウオッチングではマクロからワイドまで幅広く観察することができます。水深5mから始まる浅瀬は徐々に傾斜を増し、華やかなハナダイの群れやソフトコーラルの豊富な景観が広がります。
アクセス
車:東京から約2時間。東名高速道路→沼津IC→国道414号線→県道17号線経由で獅子浜へ。
電車:東京駅から新幹線で約1時間。三島駅で東海道本線に乗り換え、沼津駅へ。沼津駅からバスで約30分。


