「ダイビングは自己責任のスポーツ」と言われることもありますが、そもそも“安全に潜れる人”とは、どんな人を指すのでしょうか?今回は、PADIのクォリティ・マネージメント(QM)部門の北奥慎也さんに、“安全に潜れるダイバー”の共通点について聞いてみました!
クォリティ・マネージメント部とは、PADIの教育や講習の品質、そして安全性を維持・向上させることを専門に担うチームです。
世界中のダイビングが一定の基準で行われるよう、インストラクターやダイブセンターの活動をチェックし、講習に関するフィードバックや改善提案を行っています。いわば、“すべてのダイバーが安心して海を楽しめる環境を裏側から支える番人”のような存在です。
それではさっそく、あなたは“安全に潜れる人”かどうか、日ごろのダイビングスタイルを振り返ってチェックしてみましょう!

北奥 慎也
PADI Asia Pacific Japan
インストラクター開発 & クォリティ・マネージメント
体調不良や不安があるときは無理に潜らない判断ができる人
実は、“無理しない”っていうのも大事なスキルなんです。朝起きて体調が優れなかったり、なんとなく不安を感じたりしたときに、『今日はやめておこう』と冷静に判断すること──これは簡単なようでいて、多くの人にとって難しいものです。旅行先まで来ていたり、休みを取って計画してきたり、器材の準備も整えていると、もう“潜る前提”になってしまっていることが多いからです。
水中では、わずかな体調不良や不安が、判断力や冷静さに影響を与え、トラブルの引き金になることがあります。たとえば、「ちょっと頭が痛い」「少し気持ち悪い」――そんな状態でも、潜ってしまうと、水圧や水温、ストレスなどが重なって症状が悪化し、思わぬリスクを抱えることになるかもしれません。陸上でなら「ちょっと無理すればなんとかなる」ことでも、水中ではその“ちょっと”が命に関わることだってあるのです。
だからこそ、安全に潜れる人とは、自分の体と心のサインに正直でいられる人。そして、必要なときに“潜らない”という判断ができる人だと、私たちは考えています。
“バディ”を大切にする人
安全に潜れる人は、“自分だけ”じゃなく“バディのこと”もちゃんと気にかけています。バディチェックをしっかり行うことはもちろん、エントリー前後や水中でも、こまめにサインを送り合ったり、残圧を確認し合ったりするなど、お互いの状態を気にかけながら潜る姿勢が大切なんです。
中でもバディチェックは、万が一のトラブルを防ぐための最初の安全対策です。誰でも準備中は少し緊張していたり、急いでいたりして、自分では気づかないミスをしてしまうことがあります。たとえば「ウェイトがついていなかった」「インフレーターホースがつながっていなかった」「バルブが開いていなかった」など、こうした“うっかりミス”は実際によくあるケースです。
それ自体がすぐに命に関わるわけではないかもしれませんが、焦って無理に潜降しようとしたり、水中で姿勢を保てなくなったり、パニックや急浮上といった二次的なリスクを引き起こす可能性があります。そして、そうした行動が最終的に重大な事故につながってしまうことも、決して珍しくありません。だからこそ、「ちょっとの確認」で防げるリスクは、バディと一緒に確実に潰しておくことが大切なんです。さらに、お互いの器材や使い方を事前に確認しておけば、もしものトラブルが起きたときも、対応がスムーズになります。
また、知らない人とバディを組むときこそ、最初のコミュニケーションが安全のカギになります。
最初は少し気を使うかもしれませんが、「残圧はどのタイミングで知らせる?」「バックアップ空気源はどこにある?」といったシンプルな確認や会話を交わすことで、いざというときの安心感が大きく変わってきます。
ガイドやインストラクターはもちろん頼りになる存在ですが、多くの場合「1 対 多数」でダイビングを行うことになります。その点、バディとは常に「1 対 1」の関係性です。
“安全に潜るためのパートナー”として、お互いを支え合う意識が、信頼されるダイバーへの第一歩です。

ガイド任せにせず、不明点があれば自分から確認している人
安全に潜れる人って、“ガイドが全部やってくれるから大丈夫”って思っていない人だと思うんです。
ダイビングでは、ガイドやインストラクターがブリーフィングで伝える情報が、安全に潜るための大事な手がかりになります。ポイントの地形や流れ、注意すべき生物、緊急時の対応ルールなど――聞き流してしまうと、いざという時に正しい判断ができません。もし不明点があっても「まあ大丈夫だろう」とそのままにしてしまうと、“理解していないまま潜る”という危険な状態になってしまいます。海はガイドのものではなく、あなた自身が潜るフィールド。だからこそ、自分の安全は自分でも管理しようとする姿勢がとても大切だと思います。
自分の残圧、ダイビングの深度、潜水時間、ダイブ中のルート、こういったことがログ付けの時に「これくらいだったな」と答えられるくらいがいい目安かもしれません。
経験にかからわず、久しぶりのときは準備を怠らない人
経験があっても、久しぶりに潜るときは慎重であることが大切です。
例えば、アクティビティに参加される前に「ダイバー・メディカル(病歴の確認)」や「ダイビング前の体調チェックガイドライン」などを活用して、ダイビングに適した健康状態を確認しておくこと。これは基本的なことですがとても重要です。
本数が多いとか、長年潜ってきたとか、それ自体はもちろん素晴らしいことなんですが、感覚や判断力って、しばらく離れていると少しずつ鈍ってしまうんですよね。実際に、ブランク明けで潜った方の中には、『あれ?器材のセットってどうだったっけ?』『中性浮力が思うように取れない…』と感じる人も少なくありません。
でも、そういう“ズレ”に気づけることが大事で、さらにそれをそのままにせず、事前に器材を見直したり、ReActivate™でしっかり思い出してから海に戻ってくる方は、私たちから見ても本当に“安全意識の高いダイバー”だなと思います。
“久しぶりでちょっと怖い”と感じている方にこそ、ぜひもう一度戻ってきてほしいと思います。私たちは、そういう方の海への再スタートを全力で応援したいと思っています。

トラブルを“想定”できる人
安全に潜れる人って、“何が起きても楽しめるように準備している”人なんです。講習で習ったスキルも、ただ覚えるだけじゃなくて、『あ、こういうときに使うんだな』ってリアルに想像しておくことが、実はすごく大事です。
たとえば、ダイビング中にバディと目が合って思わず笑ってしまったり、顔の動きでマスクがずれてマスクの中に水が入ることって、けっこうありますよね。呼吸はできていても、視界がぼやけたり、鼻に水が入ったりして、不快感や焦りにつながってしまうこともあります。でも、『ここでマスククリアの出番だな』って自然に行動できる人は、落ち着いて対処できるんです。
あるいは、バディのフィンが当たってレギュレーターが口から外れてしまった――そんな不意のトラブルも、講習でやったレギュレーター・リカバリーを“使う場面”として理解していれば、呼吸を落ち着いて取り戻すことができます。
トラブルに対処するためのアクセサリーを準備することも重要です。水中ベル、シグナルチューブ、ダイバーナイフといったアクセサリー類はいざという時に使いこなせるよう、マイ器材として所有しておくことを推奨します。
こうした対応力は、ただ練習したからじゃなくて、“もしも”をちゃんと想定して練習したから身につくもの。私たちは、スキルを学ぶや復習するときにぜひ、『これはどんなときに役立つのか?』を一緒に考えてほしいと思っています。

“安全に潜れる人”を目指すなら…
今回のインタビューでわかったのは、安全に潜れる人にはスキルだけでなく、意識や習慣、そして判断力が備わっているということ。
“どんなときでも、安心して楽しめる自分”を育てていくことこそ、本当に信頼されるダイバーへの道です。では、そのためにどんなステップを踏めばよいのでしょうか?
「もしも」に備えるなら、PADIレスキュー・ダイバー・コースへ
レスキュー・ダイバー・コースでは、自分だけでなく周囲のダイバーを助ける力を身につけることができます。
トラブルを予測し、未然に防ぐ。もしもの時にも慌てずに対応できる。
そうした力は、まさに「安全なダイバー」に必要なものばかり。“ただ潜れる人”から、“頼れるダイバー”へ──次のステップとして、ぜひ受講を検討してみてください。
久しぶりのダイビング前には、ReActivate™で準備を整えよう
最後に潜ったのはいつですか?もし「最近潜ってないな…」という方は、ReActivate™プログラムでスキルと知識をリフレッシュしてから海へ戻りましょう。
オンラインで知識を復習し、PADIプロフェッショナルと一緒にスキルの確認をすることで、“安全に潜る自信”をしっかり取り戻すことができます。少しのブランクでも不安を抱えているなら、それは安全意識がある証拠。準備さえすれば、海はいつでもあなたを歓迎してくれます。
レスキューで“対応力”を磨き、ReActivateで“安心”を取り戻して、もっと自由に、もっと安全に、海を楽しんでください!