私たちの暮らしのすぐそばに広がる、日本の海。地域ごとにまったく異なる表情を持つ海があり、潜るたびに新しい発見があり、何度訪れても飽きることはありません。
日本各地の海で日々ダイバーを案内するPADIインストラクターたちは、その海ならではの魅力を誰よりも知る存在です。この連載では、そんな現地ガイドの視点から、日本の海の魅力を紐解いていきます。
クラウンダイバース 小林 靖さん

大学生の頃千葉県にサーフィンしに行った際、浜辺に岩のように大きなクジラが打ち上げられていて、それを見て「水の中には他にどんな生き物がいるのだろう」と興味を持ったのが、ダイビングを始めたきっかけです。ただ、いざ講習に入ると耳抜きもできず、水中世界が怖くて、全くと言っていいほどスキル練習ができませんでした。水中で息をしているだけがやっとの僕でしたが、それでもCードをもらってしまい、その後の卒業旅行のサイパンはずっと水中の恐怖を思い出して数日潜れないほどでした。
その講習の時のインストラクターに対して感じた、「インストラクターは出来の悪い人のためにいるんじゃないの?」という疑問が頭から離れず、僕のようにやりたい意欲をもっているにも関わらず、不安を抱えてダイビングができない人のためのインストラクターが必要なのではと思い、卒業後に就職する予定だった不動産系の会社に入社一週間前にお断りの電話をして、どこかの地でインストラクターになろうと決めました。
八丈島の海を仕事の舞台にしようと思った理由は?
実は、特に理由があって八丈島を選んだわけではありません。
インストラクターになろうと決めた卒業1ヶ月前、その当時見ていたダイビング雑誌の後ろに載っている求人欄を頭から順番に電話して、最初に繋がったのが八丈島にあるお店でした。履歴書を送り、東京で面接を受け、卒業が確定したら八丈島でお世話になりますと伝えました。
その後、無事に卒業が決まり、卒業式の夜にダイビング器材と当面の着替えを持って竹芝桟橋から東海汽船に乗って八丈島に渡りました。ダイビング業界のことなど全く知識がなく、自分がどこでインストラクターとして育てばいいのか見当もつかないし考えもつかなかったですが、自分のフィールドは欲しいと思っていたので、都会のお店よりは現地のお店につながってラッキーだったのかもしれません。

小林さんが考える、八丈島の海の魅力は?
八丈島には大きな川がないので、大雨が降っても水中が濁ることはほとんどありません。年間を通じて透明度が高いので、中層を泳ぐ気持ち良さがあり、火山でできた自然でダイナミックな地形やその青い世界の中で目にする大きな生き物たちも魅力。温帯と亜熱帯が混ざった八丈島の地理的な環境が作る植物と動物のバランスがとても気に入っています。
個人的にはどちらかといえば魚よりも「動かないけど動物系」の方が好きなので、ホヤをはじめサンゴなどの腔腸類やカラフルな刺胞動物などがたくさん見られるのもいいですね。自分が今眺めている水底はどんな生き物たちで構成されているのか観察するのが大好きなので、カラフルで多彩な生き物たちが見られるのが八丈島の大きな魅力と感じています。


八丈島に来たらここに潜ってほしい!おすすめポイント3選
①ナズマド

八丈島を代表するビーチポイント。八丈富士の裾野のため水深がとれる地形です。小さな生き物からハンマーヘッドやザトウクジラまで多様な生き物に遭遇するチャンスがあり、期待値が高いです。また潮流も出やすく、ウネリや流れの観察も楽しいです。
②八重根

とてもポピュラーで、統計を取ったら年間使用率がダントツ一番のポイントです。よく使われるポイントですが、エントリーしてすぐカメに会えたり、沖には大きなアーチがあったり、途中にかわいい生き物たちがたくさんいて、何度潜っても飽きることがありません。
③タレド

島の東側のボートポイントです。八丈島では珍しく白っぽい砂地が広がるショートドロップオフの地形がきれい。根つきの生き物、回遊する生き物、暗いところが好きな生き物、砂地の生き物などバランスよく楽しめます。港から3分と近く、船酔いの心配もありません。結構イルカに会えたりもします。
八丈島の海でガイドするうえで小林さんが心がけていること
「生き物に優しいダイビング」を心がけていいます。
写真を撮る際に水底に手をつく時でも、お客様にはサンゴやカイメンなどの生き物に配慮できるダイバーになっていただきたいので、「動かないけれど動物」たちを紹介して親近感を持ってもらうようにしています。
八丈島の海は透明度が良いので、中層を泳ぐのがとても気持ちいいです。ビーチポイントでは見所を回るために距離を泳ぐことがあります。必要な方には空気の消費を伸ばすコツや中性浮力のコツを細かく教えてスキルアップもしてもらっています。
生き物たちの観察では、「眺める」ではなく「観察」をお勧めしています。水族館の仕切りに隔てられた生き物を見ているのではなく、野生の生き物たちの生活が目の前にあるので、彼らが何をしているかを観察していただきたいですね。


八丈島に潜りに行きたいと考えているダイバーへのアドバイス
八丈島の海は透明度が良いため、オープン・ウォーター・コースで中性浮力の練習やフィンキックの練習がたくさんでき、ダイビングを始めるのにもおすすめですが、アドバンスド・オープン・ウォーター・ダイバー・コースのトピックにも最適だと思っています。水中ナチュラリストやナビゲーション、魚の見分け方などのトピックが特に実践的で役に立つのではないでしょうか。
またボートダイブや一部のビーチのポイントなどでは、地形的に平均水深が15m前後になる所も多いので、窒素の吸収を控えめにできるエンリッチド・エアSPも人気があります。そのほか、固有種の魚やウミウシたちがいるのでフォトSPコースもお勧めです。
《クラウンダイバース》

[ショップDATA]
八丈島八丈町大賀郷311-2 <Map>
TEL:04996-2-4538
営業時間:8:00~20:00
定休日:なし
ウェブサイト:https://crowndivers.com/
「今よりもっとダイビングのいろいろが上手くなりたい」と考えているダイバーの皆さんの希望にクラウンダイースはお応えしています。ご来店いただくダイバー皆さんが、不安なくダイビングが続けられるように、耳抜き、中性浮力、空気消費、器材トラブルなど気がついたことは何でもアドバイスしてスキルアップしていただいています。ダイビングが上手になるということは安全に繋がり、生き物たちを守ることにも繋がります。そのお手本とお手伝いをさせていただいているのがクラウンダイバースです。