PADI AWARE財団の最新の「ミッションハブ・コミュニティ・グラント」助成先は、それぞれの地域社会で海洋保全を推進することに尽力する先見的な組織の集まりです。今回の新たな助成金の採択は、世界各地で海の重大な脅威に立ち向かうオーシャン・トーチベアラー(海洋保護の志を持つ者)たちを支援するという、PADI AWAREの揺るぎないコミットメントを改めて示すものです。
PADI AWARE財団 コミュニティ・グラントプログラムについて
2022年、PADI AWAREは、各地域の海洋保護・保全の取り組みやプロジェクトをさらに進めるため、非営利の助成金プログラム(ミッションハブ・コミュニティ・グラントプログラム)を開始しました。
この助成金プログラムの開始以来、PADI AWAREは、PADIダイブセンター/ダイブリゾートおよび、地域の非営利団体よって運営されいて、気候変動、海洋ごみ、海洋生息地の喪失、海洋種の保護など問題に取り組む80以上のプロジェクトに、総額70万米ドル以上の資金を支援してきました。
PADI AWAREは、コミュニティ内で海洋における行動指針を推進することに尽力している助成先をご紹介いたします。
Maputo Dive Center – モザンビーク
モザンビークで初、そして唯一の100%モザンビーク人による運営・所有のダイブセンターであるマプト・ダイブ・センターは、「ゼロ・トゥ・ヒーロー・ダイビング・プログラム」によって海洋保全の分野で新たな扉を開いています。モザンビーク国内には7つの海洋保護区(MPA)があり、同国は国連SDGsの目標14.5「沿岸・海域の少なくとも10%を保全する」ことに取り組んでいますが、これを実現するための地域の専門人材が不足しているのが現状です。この画期的なプログラムでは、海洋生物学を学ぶ学生やMPAの管理者を対象に、泳ぎ方、スノーケリング、レクリエーショナル・ダイビング、科学的な専門ダイビングの技術を教え、海洋保全の分野でのキャリアを始めたり、さらにスキルを高める機会を提供します。参加者に必要な水中技術を習得させることで、MPAの管理と研究における地域の能力不足を補い、モザンビークの海洋生態系の持続可能な保全を支援しています。

この取り組みは、スイスの高級時計ブランド ブランパンの多大な支援により、PADI AWAREコミュニティ助成金を通じて実施されています。この助成金によって、マプト・ダイブ・センターはモザンビークのダイバーたちを育成し、サンゴ礁やMPAのモニタリングと評価を自ら実施できるように支援します。このプログラムは、モザンビークの壊れやすい海洋生物多様性の保護を助けるだけでなく、参加者に経済的な機会を創出し、持続可能な観光に貢献します。また、海外の専門家への依存を減らし、地域のリーダーシップを促進することで、海洋保全と観光分野の自立を支え、海の保護への意識改革を地域にもたらしています。
マプト・ダイブ・センターの共同創設者で教育責任者のルチアーノ・アダモ氏は「このプログラムは“情熱”を“行動”に変え、モザンビークの人々が私たちの海を守り、未来の世代のために海洋生物を残す力を与えます。」と語りました。
Australian Diving Instruction – ジーロング(オーストラリア)
オーストラリアン・ダイビング・インストラクション(ADI)は、ポートフィリップ湾における海洋保全の推進に10年以上取り組んできました。彼らの最新プロジェクトは、外来種の海洋生物(マリンペスト)への対策に焦点を当てており、ダイバーのトレーニング、一般市民への教育、シチズンサイエンス(市民科学)を通じて実施されています。

この取り組みは、Freshfieldの多大なる支援により可能となったPADI AWARE「絶滅危惧種保護助成金」を活用して、さらにプログラムを拡大し、より多くの市民科学者を募るとともに、地域コミュニティ団体、NPO、地方自治体、州政府、行政機関、企業との連携を通じて海洋生態系と在来種を守るための実践的な戦略を強化していきます。
より多くの市民科学者の関与により、これまで影響を受けていなかったエリアでも外来種の早期発見と除去が可能になり、地域の海洋生態系のバランスと豊かな在来種の海洋生物の未来を守ることが期待されています。
ADIのPADIコースディレクターであるティン・ティン・リー氏により「私たちは、ダイバーや地域コミュニティの環境意識を高めるためには“教育が鍵だと信じています。」とお話しました。
Coral Catch (Yayasan Gili Matra Bersama) – ギリ諸島(インドネシア)
Coral Catch(Yayasan Gili Matra Bersama)は、受賞歴のある奨学金プログラムであり、地域の女性たちが海洋保全のキャリアを築く機会を提供することを使命としています。このプログラムは、サンゴ礁の劣化、保全分野におけるジェンダー格差、地域コミュニティの関与の少なさという3つの大きな課題に取り組みながら、最も必要とされる現場で実際に変化をもたらしています。

創設者のローズ・ハイゼンガ氏はこう語ります:
「私たちの成功は、植えたサンゴの本数や修復したリーフの面積では測れません。私たちが変えた“人生の数”、すなわち、女性や地域社会に力を与え、海洋保全のリーダーへと導くことこそが成果なのです。」
プログラム参加者は、自分自身のサンゴ礁修復プロジェクトを設計・モニタリングする実地体験を積むと同時に、地域で変化を起こすリーダーとなるための力を養います。卒業生たちは、地元の子どもたちに海洋保全を教えたり、毎週のビーチクリーンアップを主催したり、地域のダイブガイドのトレーニングを手伝ったり、他の女性に泳ぎ方を教えたりするなど、次世代の担い手を育てる活動にも貢献しています。
これまでに250以上の構造物を設置、5,000本以上のサンゴを植え付け、ギリ・マトラ海洋保護区内に独自の海中科学ラボを設立し、最も効果的なサンゴ修復技術の研究も進めています。現在までに32名の“スーパーウーマン”が卒業し、すべての卒業生が海洋保全に従事するか、海洋科学の学びを継続しています。
PADI AWAREコミュニティ助成金の支援により、10期生の奨学生たちがまもなく海洋保全リーダーへの道を歩み始めます。 Coral Catchの最終的なビジョンは、地域社会と共にインドネシアのサンゴ礁を守り、再生する“100人の女性リーダー”のネットワークを築くことです。
Corals for Conservation – フィジー
Corals for Conservation(コーラルズ・フォー・コンサベーション)は、フィジーにおいて気候変動に対応した地域主体の海洋保護区(MPA)を強化する取り組みを主導しています。彼らは、サンゴの回復と魚類の再生を加速させるために、地域社会と連携してMPAの拡充とサンゴの再生を進めています。熱に強いサンゴを植え付け、魚の生息地を強化することで、ナイディリ・ユース・マリンパークが温暖化する海に耐え、生物多様性を守れるよう備えています。

この助成金により、Corals for Conservation は、2025年以降に予想されるサンゴの白化現象への耐性を高め、マリンパークを持続可能な海洋管理のモデルサイトとして引き続き発展させていくことが可能になります。
「フィジーでは、400以上の地域管理型MPAが設立されており、先住民コミュニティが海洋保全の最前線に立っています」と、Corals for Conservation のマネージングディレクター、オースティン・ボウデン=カービー氏は語ります。「今こそ、気候変動に直面しながらも、これまでの成果を維持しなければなりません。」
Marine Research Foundation – サバ州コタキナバル(マレーシア )
海洋研究と保全において20年の実績を持つMarine Research Foundation(MRF)は、サバ州の海域での海洋ごみ対策を強化しています。このプロジェクトでは、水中クリーンアップ遠征と地域の若者やダイビング事業者、地域住民を対象にした啓発活動を組み合わせることで、海洋生態系の保護に貢献しています。

今回の助成金は、地域の若者、ダイビング事業者、ダイビングコミュニティ、そして地方自治体との協力体制をさらに強化し、より持続可能な保全活動の実現を後押しするものです。これは単なる資金援助ではなく、健全な海洋環境を守ることで地域の暮らしや生計を支える、大きな一歩となります。
MRFの上級保全担当者、リヤナ・カリド氏は次のように述べています:
「MRFは、的を絞った取り組みと継続的な協力によって、都市を越えて地域全体に波及する変化を生み出し、より健やかな海を実現できると信じています!」
TAKATA Experience Dive & Research – マアウアル(メキシコ)
TAKATA Experience Dive & Researchは、2016年からメキシコ・マハウアルの海洋生物多様性保全の要として活動してきました。最近では、プロジェクトの科学的側面を担う新たな拠点「Marine Resilience & Sustainability(MARES)センター」を設立しました。国連生態系回復の10年の公式パートナーにも認定されており、サンゴの回復を軸に、サンゴの繁殖研究、ミノカサゴ駆除、草食魚の再導入といった革新的な手法を導入しながら、環境教育や地域の人々の参加を重視した取り組みを展開しています。

今回の助成金により、絶滅危惧サンゴ種の再生・生物多様性の向上・地域の若者の環境意識の向上といった活動をさらに拡大することが可能になります。
共同創設者であり、MARESセンターのディレクターを務めるカシオペア・キャリア・ドネイズ氏はこう語っています:
「海とその神秘を守ることは、人間にとって本能的であるべきこと。自然とのつながりを思い出し、豊かな海の未来を守りましょう。」
マハウアル・サンゴ礁再生プロジェクトの統合的なアプローチは、絶滅危惧サンゴ種の回復、草食魚の再導入による藻類の管理、ミノアカサゴの捕食圧の軽減を通じて、サンゴ礁の生物多様性の回復を促進します。また、保全に深く関わる地域コミュニティの形成にも寄与しています。
Master Divers – タオ島(タイ)
Master Divers はタイ・タオ島における持続可能性への取り組みを活かし、研究者を惹きつける学術的な拠点としての役割を強化しながら、サンゴ礁の保全活動を拡大しています。今回の助成金によって、今後1年間で保全インターンを15名受け入れ、35の保全コースを開催し、200kg(約440ポンド)の海洋ごみを除去することを目指しています。こうした活動を通じて、地域社会に行動を促し、サンゴ礁生態系の重要性についての理解を深めるとともに、次世代のオーシャン・アドボケイトの育成を進めていきます。

この助成金は、研究基盤の強化、器材のアップグレード、教育・啓発プログラムの拡充に活用される予定です。Master Divers はこの資金が、地域の海洋生態系の保全、生物多様性の維持、そして将来世代のための健全な地球環境の確保につながると信じています。これは地域社会の幸福への投資であり、協力による行動の力を証明するものでもあります。
海洋保護への統一されたビジョン
これらの助成団体はいずれも、グローバルなダイビングコミュニティが持つ情熱と決意、そして集合的な行動がもたらす大きな影響力を体現しています。PADI AWARE財団は、彼らの革新的なプロジェクトを支援することで、「地域の行動が地球規模の海洋保護につながる」という使命をさらに強化しています。
こうしたプロジェクトが展開されていく中で、それは希望とインスピレーションの灯台となり、地域主導の解決策が海を守るうえでいかに力強いものであるかを私たちに思い出させてくれます。
PADI AWARE財団と コミュニティ・グラント・プログラムの詳細については、www.padiaware.org をご覧ください。
PADI AWAREの「オーシャンヒーロー」を支援しよう
ここ数か月で、PADI AWAREには230件を超えるコミュニティ助成申請が寄せられました。これはわずか2年で4倍の増加です。PADI AWARE財団にご寄付いただくことで、最も支援が必要とされる場所で、実際に成果を上げている重要な海洋保護プロジェクトに、必要な資金を届けることができます。あなたのサポートが、海とそこに生きる命を守る力になります。

