体験ダイビングで耳抜きがうまくできず、痛い思いをした。シュノーケリングで波をかぶって水を飲み、「もう海はこりごり」と思った。そんな経験から、「ダイビングは自分には向いていない」と感じてしまった人は少なくありません。
しかし、その原因は海そのものではなく、初めての環境に戸惑ったことである場合がほとんどです。
この記事では、体験ダイビングやシュノーケリングで思うように楽しめなかった方に向けて、不安の正体やその向き合い方、そしてもう一度海を楽しむためのヒントをご紹介します。
あのとき諦めてしまった海の世界へ、もう一度チャレンジしてみませんか。

「ダイビングが怖かった」の正体は何だったのでしょう?
あの日、怖かったのは本当に海だったのでしょうか。少し思い返してみてください。その理由を少し掘り下げてみると、実は海そのものではないことがほとんどです。例えば、
- 耳抜きがうまくできず、痛みで焦ってしまった。
- レギュレーターで呼吸することに違和感を感じた。
- マスクに水が入ってびっくりした。
- 波やうねりに揺られ、落ち着いて呼吸ができなかった。
- 初めて身につける器材が重く感じた。
- インストラクターについていくことに必死で、景色を見る余裕がなかった。
どれも、初めてなら誰にでも起こり得ることです。つまり、「ダイビングが向いていない」のではなく、慣れていないことが一度にたくさん起こっただけなのです。
不安は「知らないこと」から生まれる
人は、「知らないこと」に不安を感じます。体験ダイビングは、海の世界を気軽に楽しんでもらうためのプログラムです。限られた時間の中で行うため、安全に潜るための基本的な説明はありますが、なぜ浮いたりしずんだりするのか、水中で呼吸をすると体はどう変化するのかといった仕組みまで詳しく学ぶ時間はありません。
また、シュノーケリングは旅行先や量販店で器材を購入し、自己流で始める人も少なくありません。マスクの選び方やフィンの使い方、波への対処、水が入ったときの対処法を知らないまま海へ入れば、「怖かった」「うまくできなかった」と感じるのは、ごく自然なことです。
つまり、「できなかった」のはセンスがないからではなく、知識や練習する機会が足りなかっただけかもしれません。一方、ライセンス取得コースでは、一つひとつのスキルを「なぜそうするのか」から学びます。
自分のペースで繰り返し練習し、「できなかったこと」が一つずつ「できること」に変わっていけば、最初に感じていた不安や恐怖心も、少しずつ小さくなっていくはずです。だからこそ、体験ダイビングでうまくいかなかった人にこそ、ライセンス取得コースという選択肢を知ってほしいのです。
ダイビングは競争ではありません
マリンスポーツの一つとして紹介されることも多いスクーバダイビングですが、ダイビングはタイムや順位を競うスポーツではありません。
海の世界を楽しみ、自分のペースでスキルを身につけていくレクリエーションです。そのため、PADI Open Water Diverコースは、eLearningで事前に学習を進める場合、プールや限定水域での練習と海洋実習を合わせて3〜4日程度で実施されることが一般的です。ただし、「3日でできなければ不合格」という意味ではありません。
PADIの講習は、決められた時間内にできるかどうかではなく、必要な知識とスキルを一つひとつ身につけたかどうかを確認しながら進める「達成ベース」です。
必要であれば、インストラクターと相談しながら追加で練習することもできます。講習は、「できない人を落とすため」のものではなく、必要なスキルを身につけ、安全にダイビングを楽しめるようになるためのものです。
講習中に「みんなはできているのに、自分だけできない。」と焦る必要はありません。一人ひとり、得意なことも苦手なことも違うのは当たり前です。大切なのは、自分のペースで一つずつ「できた」を積み重ねていくことなのです。

講習が始まる前に、できる3つのこと
「よし、もう一度チャレンジしてみよう。」そう思っても、講習前日や当日は少し緊張してしまうものです。でも、それは決して特別なことではありません。初めてのことに不安を感じるのは、とても自然な反応です。少しでも安心して当日を迎えるために、こんなことを意識してみましょう。
① 心と体を整える
不安は、体調が万全でないときほど大きく感じやすくなります。講習前日は十分な睡眠をとり、バランスの良い食事を心がけましょう。また、水分補給も忘れずに。カフェインやアルコールは脱水につながることがあるため、できるだけ控えるのがおすすめです。
当日は時間に余裕を持って集合しましょう。疲れている、寒い、お腹が空いている、時間に追われている──そんな状態では、普段なら気にならないことまで不安に感じてしまうことがあります。心と体に余裕を持って海へ向かうことが、安心してダイビングを楽しむための第一歩です。

② 「できるかな」ではなく、「楽しみ」を思い出す
「また怖い思いをしたらどうしよう。」そんなことを考え始めると、不安はどんどん大きくなります。そんなときは、海へ行きたいと思った理由を思い出してみてください。
- 色鮮やかな魚を見たい。
- 透き通る海を泳いでみたい。
- 水中写真を撮ってみたい。
- 海の環境についてもっと知りたい。
その気持ちが、きっと最初の一歩だったはずです。Instagramで海の写真を眺めたり、ダイビングの動画を見たり、ダイバーの体験談を読んだりするのもおすすめです。海への憧れを思い出すことは、不安よりも楽しみに意識を向けるきっかけになります。
また、緊張してきたら深呼吸をしてみましょう。ゆっくり呼吸を整え、「今、この瞬間」に意識を向けることで、心も自然と落ち着いてきます。
③ 不安は遠慮せず伝えよう
「少し緊張しています。」「前に体験ダイビングで怖い思いをしました。」そんなことを伝えたら迷惑かな、と遠慮してしまう人もいます。
でも、PADIインストラクターは、そうした不安を抱えた人をサポートするプロです。ダイビングへの不安や苦手なことを事前に伝えてもらえれば、一人ひとりに合わせたペースで講習を進めたり、苦手なスキルをゆっくり練習したりと、安心して学べるようサポートしてくれます。また、「耳抜きが苦手」「器材をつけると圧迫感がある」など、不安の原因が分かれば、その原因に合わせてアドバイスをもらうこともできます。
また、一緒に潜るバディにも不安な気持ちを共有しておくと安心です。バディは困ったときに助け合う存在。不安を知っていれば、焦っている様子に気づいて声をかけてくれたり、自分の経験を話して励ましてくれたりするでしょう。不安を隠すことよりも、不安を伝えること。それが、安全に、そして楽しくダイビングを始めるための大切な一歩です。

あのときとは、きっと違う景色が待っています
最初の体験でうまくいかなかったからといって、ダイビングが向いていないとは限りません。知識が増え、少しずつ経験を積めば、その余裕は少しずつ生まれてきます。
そして初めて、魚たちやサンゴ、美しい光が差し込む水中の景色に目を向けられるようになります。
海が好きという気持ちがあるなら、それだけでもう十分です。あのとき諦めてしまった海の世界へ、もう一度だけチャレンジしてみませんか。次に待っているのは、「怖かった思い出」ではなく、「もっと早く始めればよかった」という新しい思い出かもしれません。
