私たちの暮らしのすぐそばに広がる、日本の海。地域ごとにまったく異なる表情を持つ海があり、潜るたびに新しい発見があり、何度訪れても飽きることはありません。
日本各地の海で日々ダイバーを案内するPADIインストラクターたちは、その海ならではの魅力を誰よりも知る存在です。この連載では、そんな現地ガイドの視点から、日本の海の魅力を紐解いていきます。
SUPER NATURAL 元日田 眞和さん

宮崎出身の「宮崎人」です。父が釣り好きだった影響で、子供の頃から海に通っていて、海そのものはすごく身近で大好きな存在でした。高校は電気系の学校で資格もたくさん取りましたが、進路を考える時期に「何か違うな」という違和感が。もともと学校の先生のように「人に何かを伝えていく仕事」にも興味があったんです。そんな時、進学ガイダンスで福岡の専門学校の先生がたまたまダイビング専攻の方で、「海をフィールドに人に伝える仕事があるんだ!」と初めて知り、これだ!と直感しました。体験入学のプールで潜ってみた時に「あ、いけるかな」という感覚があり、そのままリゾート科に入学してダイビングインストラクターを目指しました。当時は雑誌などで「パラオは聖地だ」という勝手なイメージを持っていて、いつか海外でも働いてみたいという夢を持ちながら、卒業する頃には「この道で生きていこう」と覚悟が決まっていました。
宮崎の海を仕事の舞台にしようと思った理由は?
専門学校を卒業した当初は、憧れのパラオでダイビングインストラクターとして働こうと考えていました。ところが、地元の宮崎でもダイビングができることを知り、実際に潜ってみると「宮崎の海ってこんなに楽しいんだ!」と驚いて、まずは地元で働こうと決めました。それから地元のショップで9年ほどスタッフとして修行し、その間にプーケットでも短期で働いたり、お客様と海外の海を回ったりして、いろいろな経験を積んでいきました。
ですので、独立を考えた時、他のエリアに行くことは全く考えませんでしたね。やはり地元としての基盤があるし、何より宮崎の海のことは自分でもよく分かっていたので「ここならやっていける」という確信がありました。宮崎は、僕にとって慣れ親しんだ場所であり、自分の理想とするスタイルで挑戦しやすい環境だったことが、この地を仕事の舞台に選んだ大きな理由となっています。
元日田さんが考える、宮崎の海の魅力は?
宮崎の海は、豊かな山々からもたらされる栄養と、黒潮が運んでくる恩恵が合わさった、世界的に見ても非常に豊かな海です。特にソフトコーラルの種類や量は圧巻で、サンゴの研究をしている専門家も驚くほど。生き物も多く、地形のバリエーションも豊富で、ビギナーからベテランまで幅広い層が楽しめるバランスの良さが最大の魅力となっています。
さらに、海の中にも日本的な「四季」がはっきりあって、年間を通して見られる生き物が変化していくのも、とてもおもしろいです。先日、20年以上潜っていて初めてダンゴウオを発見して驚きましたが、常に新しい発見が尽きない奥深さがあり、潜っていて飽きることがありません。また、港からポイントまでボートで10〜30分と移動が短く、宮崎空港からも約1時間という「海と陸のアクセスの良さ」も、ダイバーにとっては大きなメリットだと思っています。弱点を挙げるとすれば、黒潮や川の水の影響で透視度が安定しない日があることですが、それを補って余りある魚影の濃さと豊かさがこの海にはあります。透明度がいい日に当たれば20メートル、30メートルと抜けることもあって、その時のワイドな景色は本当に見事ですよ。


人気のウミウシ類も豊富

エビ・カニ類を探すのも楽しい
宮崎に来たらここに潜ってほしい!おすすめポイント3選
①コクセキ(黒石)

宮崎らしいソフトコーラルと魚影の濃さがぎゅっと凝縮されたポイント。水深8〜14メートルという浅い場所にメインの根があり、黄色やオレンジ色のソフトコーラルが群生しています。そこをキンギョハナダイやスズメダイが舞う光景は本当に華やかです。スジハナダイやピグミーシーホース、キクチカニダマシなど、カラフルで「映える」生き物もいっぱいで、レンテンヤッコやサザナミヤッコ、時にはカメも現れます。1周1分ほどの小さな根ですが、どこを見ても密度が濃いので、初心者の方はもちろん、じっくり写真を撮りたいベテランの方にも満足していただけるポイントです。
②ガンガゼ城

ここは地形のダイナミックさとマクロ生物の両方が楽しめるポイントです。2つの大きな根の間にある深い亀裂には、キンメモドキやネンブツダイが溢れんばかりに群れ、壁一面のソフトコーラルと相まって見事な景観を作り出しています。冬から春にかけてはウミウシが非常に豊富で、ピカチュウウミウシ(ウデフリツノザヤウミウシ)など1ダイブで20種ほど見られることもあります。カエルアンコウやエビ・カニ類も多く、ワイド派もマクロ派も納得の充実度です。西風に強いため、冬場でも比較的安定して潜れるのもガイドとして心強いところですね。
③トンバラ

沖合にある2つの沈み瀬を狙う、アクティブ派ダイバーにイチ押しのエキサイティングなポイントです。水深40メートルあたりから聳える塔のような根の周りは潮通しが抜群で、イサキ、ニザダイ、メジナなどの巨大な群れが常に寄ったり離れたりしています。ここはトカラ列島を彷彿とさせるような原始的で巨大なソフトコーラルが見どころで、中層には回遊魚も回ってきます。過去には早朝にニタリ(オナガザメ)が出たこともあるほどで、宮崎の海のダイナミックさを象徴する場所です。コンディションが整わないと行けないギャンブル性はありますが、ビシッと決まった時の迫力は別格ですよ。
宮崎の海でガイドするうえで元日田さんが心がけていること
ガイドをする上で一番に考えているのは、やはり「安全」に楽しんでもらうことです。当店に来られる方は初心者からベテランまで様々ですので、その日のコンディションを見極めて、全員が無理なく楽しめるポイント選びを徹底しています。ボートは9人乗りですが、一度に出るのは5〜6名程度の少人数制。大人数でわちゃわちゃせず、一人ひとりが宮崎で潜ってよかったと思ってもらえるように心がけています。
その日その日の海の中で最大限に美しい水中景観や豊富な生き物をお客様に見ていただきたいですね。透明度が悪い日もありますが、そんな時でも「今日潜ってよかった」と感じてもらえるようなガイドが目標です。特にお客様のスキルに不安がある場合は、その方に合わせたペースで調整します。「バリバリ潜る人に合わせなきゃ」というプレッシャーを感じさせない、ストレスのないダイビングを提供することが僕の役割だと思っています。


宮崎に潜りに行きたいと考えているダイバーへのアドバイス
宮崎の海は透視度が下がることもありますが、生き物が非常に豊富なので、フォト派やフィッシュウォッチング派のダイバーにとっては透明度に左右されず、存分に楽しむことができるのが強みです。より深くこの海を味わうなら、アドバンスの資格を持っておくのがおすすめですね。深い場所にしかいないハナダイやピグミーシーホース、エビ・カニの仲間など、出会える生き物の層がぐっと広がります。
また、フォト系のステップアップコースや、中性浮力のスペシャルティ(SP)を取得しておくと、写真が撮りやすくなるだけでなく、のんびり快適に潜れるようになりますよ。オープンウォーターを取ったばかりの方や、しばらく海から遠ざかっていたブランクダイバーの方も、風や波を避けて潜れる穏やかなポイントがたくさんありますので、あまり構えずに相談してください。個々のレベルに合わせて無理のないプランを提案します。
《SUPER NATURAL》

インストラクター歴・宮崎のガイド歴ともに20年超の経験を活かして、和やかなスタッフが楽しく丁寧にご案内するショップです。拠点は日南市の海岸近くにある二階建ての民家を改装したもので、お客さまからは「まるでおばあちゃんの家に来たみたいで落ち着く」とよく言われます(笑)。都会的なドライな感じは一切ないので、初めての旅先でのダイビングや、久しぶりのダイビングでドキドキしている方でも安心して来ていただける雰囲気だと思います。
ダイビングの合間には、地元民ならではの美味しいグルメや観光スポットも紹介しています。また、地元の若手オーナーの育成も手伝っていて、ショップ全体に活気があります。宮崎の海をホームにしてもらうのはもちろん、ここでの繋がりを大切にして、一緒に沖縄や海外のツアーに行ったりもしています。どこにも所属する「ホーム」がないけれど、楽しく、自分らしく潜り続けたい。そんなダイバーたちの温かい居場所になれたら嬉しいですね。