私たちの暮らしのすぐそばに広がる、日本の海。地域ごとにまったく異なる表情を持つ海があり、潜るたびに新しい発見があり、何度訪れても飽きることはありません。

日本各地の海で日々ダイバーを案内するPADIインストラクターたちは、その海ならではの魅力を誰よりも知る存在です。この連載では、そんな現地ガイドの視点から、日本の海の魅力を紐解いていきます。


フリーウェイ佐渡店 小出 博之さん

小さいころから魚を見ることが大好きで、友達と川へ魚を捕まえに行ったり、家では金魚やメダカ、熱帯魚、海水魚など、いろいろな魚を飼っていました。家族で出かけた時も熱帯魚店に寄るのが楽しみで、「見たことのない魚が入っていないかな~」と眺めている時間が好きでした。学生時代は水泳部で、泳ぐことも好きでしたし、人と話したり、誰かと一緒に楽しむことも好きでした。そんな自分の「好き」を活かせる仕事って何だろうと考えた時に、ふと思い浮かんだのがダイビングでした。高校卒業後は工業系の大学へ進学し、地元企業でエンジニアとして働いていましたが、まずはダイビングの仕事を実際に見てみたいと思い、現在勤めている《フリーウェイ》でCカードを取得しました。初めて佐渡の海を潜った時、水中に広がる景色や生き物の豊かさに本当に感動して、「自分もこの世界に関わる仕事がしたい」と強く思ったことが、インストラクターを目指したきっかけです。


新潟・佐渡の海を仕事の舞台にしようと思った理由は?

Cカード取得後は沖縄へ移住し、3年間ダイビングサービスで働きながら、沖縄の海でインストラクター資格を取得しました。その後、結婚をきっかけに新潟へ戻り、妻の協力もあって佐渡へ移住しました。正直、最初から佐渡の海の魅力を知っていたわけではありません。《フリーウェイ》に就職して初めて潜った3月の海は、透明度5mほどの春濁りで、水温8℃。泳いでいる魚も少なく、「この海で何を紹介したらいいんだろう」と正直戸惑いました。

ただ、潜り続ける中で、ウミウシやダンゴウオ、ホテイウオ、卵を守るチャガラなど、この海ならではの魅力に少しずつ気づいていきました。沖縄のように“見えているもの”を楽しむ海とは違い、自分で探して見つける楽しさがあります。今では、以前は不安だった春濁りの季節が、「今年もこの季節が来たな」とワクワクする大好きな海になっています。

小出さんが考える、新潟・佐渡の海の魅力は?

佐渡の海の魅力は、季節によってまったく違う表情を見せてくれることだと思っています。春は海藻が広がる景色の中で、ダンゴウオやホテイウオ、ウミウシなど、小さな生き物との出会いがあります。初夏になるとコブダイの繁殖シーズンが始まり、大きな魚たちがぶつかり合う迫力あるシーンを間近で見られることもあります。

また、夏の浅場の景色も大好きです。優しい水色の海に光が差し込み、白い砂地を照らす景色はとても幻想的で、何度潜っても「あぁ、気持ちのいい海だな」と感じます。メバルやタイ、アジなど、普段自分たちが食べている身近な魚たちが泳いでいる姿を見ると、「自分は日本の海で潜っているんだな」と実感することも多いです。

沖縄の海のようにカラフルな魚が多いわけではありませんが、その分、同じ種類の魚たちが一気に増える迫力や、季節ごとの変化を強く感じられるのが佐渡の海の魅力だと思っています。

迫力たっぷりのコブダイの喧嘩

海藻が広がる春の海


新潟・佐渡に来たらここに潜ってほしい!おすすめポイント3選

①北小浦

佐渡を代表するダイビングポイント。特にコブダイで有名な場所で、初夏には大きなコブダイ同士の喧嘩や繁殖行動を間近で観察することができます。

北小浦の大きな特徴は、ダイビングポイント周辺での漁や釣りを行わず、地元の方々がダイバーのために魚たちを守ってくれていることです。そのおかげで、佐渡の中でも特に魚影が濃く、魚種も多い海になっています。メバルやアジの群れなど、日本海らしい迫力ある景色を楽しめるのも魅力です。また、沈船ポイントやウミウシなどのマクロ生物も楽しめるため、ワイドからマクロまで幅広く楽しめる海だと思っています。季節によって海の表情が大きく変わり、何度潜っても新しい発見がある、まさに佐渡を代表するポイントです。

コブダイ

メバルの群れ

②虫崎

マクロ好きの方におすすめしたいポイント。春にはダンゴウオの幼魚やウミウシが多く、小さな生き物をじっくり探す楽しさがあります。海の中をよく見ると、卵を守る魚たちや季節ごとの生態シーンも多く、何度潜っても新しい発見があります。

また、「虫崎」は生き物だけではなく、海藻が広がる景色や白い砂地の雰囲気もとても魅力的です。初夏には浅場へ差し込む光が優しい水色の景色を作り出し、泳いでいるだけでも気持ちの良い海だと感じます。

派手な海ではありませんが、「探して見つける楽しさ」と、日本海らしい季節感をじっくり味わえる、佐渡らしいポイントだと思っています。

春のダンゴウオ

卵を守っているチャガラ

③加茂湖(期間限定:3月~6月初旬)

透明度3m前後、最大水深3m。ダイビング施設はなく、着替えやトイレも公衆トイレを利用する、とてもローカルな環境です。そのため、ドライスーツの時期限定でご案内しています。

一見すると地味な環境ですが、佐渡の外海ではなかなか見られない珍しいウミウシが多く観察できる、とても面白いポイントです。冬は水温5℃以下、夏は30℃近くまで上がる過酷な環境のため、生き物たちも独特で、ナベカやイソギンポの仲間たちが卵を守る様子など、生態観察の魅力があります。個人的には、表情豊かなトサカギンポが大好きです。

流れやうねりがほとんどなく、じっくり生き物を探せるのも大きな魅力です。透明度やダイナミックな景観を楽しむ海ではありませんが、「探して見つける楽しさ」が詰まった、マクロ好きにはたまらないマニアックなポイントだと思っています。リクエストがあれば、ぜひご案内したい海です。

春のハナヤギウミウシ

初夏のハゼの産卵


新潟・佐渡の海でガイドするうえで小出さんが心がけていること

佐渡の海は、沖縄のように「ただ泳いでいるだけで色鮮やかな魚が次々に見える海」とは少し違います。だからこそ、自分は“この海の面白さをどう伝えるか”をいつも大切にしています。

例えば、小さなダンゴウオやウミウシ、魚たちの卵保護、生き物同士の関わりなど、自分一人では気づかずに通り過ぎてしまうような景色を、できるだけわかりやすく紹介することを心がけています。「ただ見る」のではなく、「知ることで面白くなる海」だと思っているからです。また、季節によって海の表情が大きく変わるので、その時期ならではの魅力を感じてもらえるよう意識しています。春の海藻の景色、夏の光、初夏のコブダイなど、自分自身が毎年楽しみにしている海の変化を、お客様とも共有したいと思っています。

そして何より、安全に楽しく潜ることが一番大切です。「また佐渡で潜りたい」と思ってもらえる時間になるよう、海の魅力だけでなく、その日の雰囲気や居心地も大事にしながらガイドしています。


新潟・佐渡に潜りに行きたいと考えているダイバーへのアドバイス

佐渡の海をより楽しむためにおすすめしたいのが、まず「ドライスーツSP」です。佐渡では10月初旬〜7月初旬頃までドライスーツを使用することが多く、水温の低い時期でも快適に潜れるようになります。特に春はダンゴウオやウミウシなど、佐渡らしい魅力的な生き物が多い季節なので、ドライスーツに慣れていると楽しめるシーズンが一気に広がります。

また、個人的には「カメラSP」もおすすめしたいです。佐渡の海は、カラフルな魚が次々に現れるというより、小さな生き物や季節の変化、生態シーンをじっくり観察して楽しむ海だと思っています。ゆっくり被写体を探しながら写真を撮ることで、「こんな生き物がいたんだ」「こんな表情をしているんだ」と、新しい発見がどんどん増えていきます。

透明度や派手さだけではなく、“探して見つける楽しさ”を感じながら潜ると、佐渡の海はもっと面白くなると思います。


フリーウェイ佐渡店

[ショップDATA]

佐渡市東大通1211-3 <Map>

TEL:0259-52-5781

営業時間:10:00~19:00

定休日:不定休

ウェブサイト:https://niigata-freeway.jimdoweb.com/%E4%BD%90%E6%B8%A1%E5%BA%97/

《フリーウェイ》は、体験ダイビング、ライセンススクール、ファンダイビングまで、お客様一人ひとりのペースに合わせながら、「海を楽しんでもらうこと」を大切にしているショップです。初めて海へ潜る方もいれば、写真をじっくり撮りたい方、生き物をゆっくり観察したい方など、海の楽しみ方は人それぞれです。だからこそ、決まった形に合わせるのではなく、「その人にとって楽しい時間になること」をいつも意識しています。

そして、「また来たいな」「佐渡の海に来てよかったな」と思っていただけることが、自分たちにとって一番嬉しいことです。《フリーウェイ》には、そんな気持ちを大切にしながら、お客様と海に向き合っているスタッフが集まっています。


Share This

関連記事