幼い頃から、父の影響で海やダイビングに触れてきた川西なぎささん。インストラクターの父が楽しそうに海へ向かう姿や、水中で出会う景色に惹かれながら育ちました。その後、ダイビングサークルでの活動を経て、現在は会社勤めをしながら、休日にはサークルのサポートとして学生ダイバーたちと関わりながら、インストラクターとしての一歩を踏み出しています。

“憧れだった仕事”を、自分の形で実現したそのストーリーを紹介します。


幼い頃から、海は“遊び場”だった

物心ついた頃から、毎年夏になると家族で大瀬崎に通っていました。父がダイビングをしている間、母と兄と一緒にシュノーケリングをして遊ぶのが、いつもの過ごし方でした。

器材を背負って海へ入っていく父や家族の姿は、とてもかっこよく見えて。そして、父が見せてくれる海の中の写真は、幻想的で、子どもながらに強く惹かれていました。もともと泳ぐことも海も好きだったこともあり、8歳頃には「興味がある」というよりも、“絶対にダイビングをやりたい”と思うようになっていました。

私にとって海は、大好きで楽しい遊び場。ダイビングは、そんな海の中で自由に遊べるようになる、特別なスポーツでした。


父が教えてくれた、“かっこいい”

父は普段はサラリーマンとして働きながら、時々、友人や知人に向けてダイビングのガイドや講習をしていました。“仕事”であるはずなのに、海へ向かう父はいつもとても楽しそうで、「どうしてそんなに楽しいんだろう」と不思議に思うと同時に、どこか羨ましさも感じていました。

10歳になり、ジュニア・オープン・ウォーターを取得するための講習を父にしもらった時、インストラクターとしての父に緊張感を感じたのと同時に、堂々と自身の知識・技術を示す父に絶対的な安心感を感じたのを今でも覚えています。

その後、父が亡くなってからはしばらくダイビングから離れていましたが、サークルで再び海に戻ったとき、父に教わった「見て」のサインやマスククリアの方法が自然と体に残っていることに気づきました。

父に講習をしてもらった当時は、その教え方のすごさを意識することはありませんでしたが、人の記憶に残り続けるように伝えることが、どれだけ大きな価値を持つのかを感じた瞬間でした。

父のように、安心して任せてもらえる存在でありたい。そして、関わった人の中に何かを残せるような人でありたい。そんなふうに思うようになりました。


「自分が教えたい」と思った瞬間

もともと、ダイブマスター(DM)トレーニングを受ける前から、インストラクターを目指したいという気持ちはありました。ただ、はっきりと決断したのは、DMトレーニングの最中でした。

所属していたサークルのDMトレーニングは、サークルで月に1回ほど開催される講習に実際に参加し、現場で学ぶスタイルでした。その中で、昨日までできなかったことができるようになっていく生徒の姿を間近で見たり、「すごい!楽しい!」という声を聞いたりする機会がありました。

そうした瞬間を重ねる中で、サポートする立場として関わるだけでなく、「自分の言葉で伝えたい」という気持ちが、少しずつ強くなっていきました。

そしてその想いが、インストラクターを目指すと決めたきっかけになりました。


伝えたことが、ちゃんと届いていたと感じたとき

講習では、限定水域からオープン・ウォーターまで1週間ほど間が空くことが多いのですが、「このスキル覚えてる?」と聞いたときに、生徒が自然と体を動かして再現してくれることがあります。その瞬間、しっかりと記憶に残る教え方ができていたのだと実感できて、とても嬉しくなります。

また、私がIEを受けたのが10月ということもあり、これまで担当してきた講習はウエットスーツでは寒い時期が中心でした。「寒い」という声が出ることもある中で、それでも「魚見れました!」「本当に大瀬崎の水中神社があった!」といった前向きな感想や、「次は〇〇を見てみたい」「〇〇で潜ってみたい」といった次の目標を話してくれることがあります。

そんな言葉を聞いたとき、コンディションが厳しい中でもダイビングの楽しさをしっかり届けられたのだと感じられて、やりがいを感じます。こうした生徒の反応一つひとつが、私にとっての大きな原動力になっています。

そしてもし、インストラクターとしての今の自分を父に伝えられるとしたら、「お父さんの姿を見て憧れていたインストラクターになれたよ。お父さんがくれた「『なぎさ』という名前の通りにお父さんが好きだった海に関わって生きてるよ。」と伝えたいです。


安全と楽しさ、そのどちらも届けられる存在へ

初めてダイビングに触れる人たちが、その後も安全に楽しみ続けられるように。楽しさだけでなく、必要な知識と技術をしっかりと身につけてもらえる講習ができるインストラクターになりたいです。

そして、講習のその先でも、「また行きたい」「また潜りたい」「誰かにこの楽しさを伝えたい」そう思ってもらえるようなダイビング体験を届けられる存在でありたいと思っています。

「難しそう」「ハードルが高そう」と感じる人もいるかもしれません。特に若い世代にとっては、費用面で一歩踏み出しにくいと感じることもあると思います。それでも、ダイビングでしか出会えない景色があります。自分の目で探し、自然の中で生きる魚たちに出会うこと。何千何万年という時を経て、海の力によって形を変えてできた水中洞窟やドロップオフや地形と出会えること。そして何より、その体験を仲間と共有し、同じ景色を語り合えることも、ダイビングならではの魅力です。

少しでも興味があるなら、ぜひ一歩踏み出してみてください。海の世界は、思っている以上に広くて、あたたかくて、誰にでも開かれています。

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